解説

実費徴収・上乗せ徴収は、公定価格の試算に含まれるか

実費徴収と上乗せ徴収は、公定価格(委託費)とは別に保護者から直接受け取る費用です。運営基準が定める2つの違いと、説明・同意・領収証の手続き、試算での扱いを説明します。

実費徴収・上乗せ徴収の位置づけ(公定価格の外側にある費用)

認可保育所は、公定価格(委託費)とは別に、保護者から直接お金を受け取ることがあります。

この受け取りは実費徴収と上乗せ徴収の2種類に分かれ、いずれも運営基準が定める要件を満たした場合に限って認められます。

運営基準は、特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号)を指します。実費徴収・上乗せ徴収の定めは、この府令の第13条にあります。

実費徴収の対象(施設の利用で通常必要になる費用)

実費徴収の範囲は、運営基準第13条第4項が定めています。

日用品や文房具の購入費、行事参加費、食事の提供に要する費用、通園に伴う費用、その他施設の利用で通常必要となる費用のうち、保護者に負担させることが適当と認められるものが対象です。

上乗せ徴収の対象と金額の上限

上乗せ徴収の対象と上限は、運営基準第13条第3項が定めています。

上乗せ徴収は、教育・保育の質の向上を図る上で特に必要と認められる対価に限られます。金額は、特定教育・保育に要する費用の見込額と公定価格の基準額との差額の範囲内に収めなければなりません。

実費徴収には、上乗せ徴収のような差額の範囲内という上限規定はありません。「通常必要とされる」「負担させることが適当と認められる」費用に限られる、という条件で範囲が絞られています。

保護者の同意の取り方(上乗せ徴収は文書、実費徴収は文書によらない同意でも可)

上乗せ徴収は、金銭の使途・額・理由を書面で示し、保護者から文書による同意を得ることが義務づけられています。

実費徴収も、あらかじめ使途・額・理由を書面で明らかにして説明し、保護者の同意を得る必要があります。ただし、実費徴収の同意だけは文書によらなくても構わないと、第13条第6項のただし書きが定めています。説明だけで同意が要らなくなるわけではありません。

支払を受けた費用については、実費徴収・上乗せ徴収のいずれも領収証を交付する義務があります(第13条第5項)。

実費徴収と上乗せ徴収の違い
比較項目実費徴収上乗せ徴収
対象費用日用品・文房具・行事参加費・食事の提供費用(第13条第4項第3号が除くものを除く)・通園費用など、施設の利用で通常必要になる費用教育・保育の質の向上を図る上で特に必要と認められる対価
金額の上限数値上限の定めはなく、「通常必要」「負担させることが適当」の範囲で絞られる特定教育・保育に要する費用の見込額と公定価格の基準額との差額の範囲内
同意の方法使途・額・理由を書面で示して説明し、同意を得る(同意は文書によらなくてよい)使途・額・理由を書面で示して説明し、文書による同意が必要

上乗せ徴収を導入するときの手順

運営基準第13条の定めを、導入の流れに沿って並べると次の5段階になります(順序は条文が定めるものではなく、この記事での整理です)。

上乗せ徴収は、金額の上限と、あらかじめ書面で示して文書の同意を得る手続きの両方を満たす必要があります。

  1. 特定教育・保育に要する費用の見込額を算定する

    上乗せ徴収の対象は、教育・保育の質の向上を図る上で特に必要と認められる対価です。上限を決める出発点として、特定教育・保育に要する費用として見込まれる額を整理します(第13条第3項)。

  2. 公定価格の基準額との差額を計算する

    見込額と公定価格の基準額との差額が、設定できる金額の上限になります。額はこの差額の範囲内で決めます(第13条第3項)。

  3. 使途・額・理由を、あらかじめ書面で示して説明する

    保護者に、金銭の使途、額、支払を求める理由を書面で明らかにして説明します。支払を受けてからではなく、あらかじめ行う必要があります(第13条第6項)。

  4. 保護者から文書による同意を得る

    上乗せ徴収では、同意は文書によることが必要です。実費徴収には文書によらなくてよいとするただし書きがありますが、上乗せ徴収にはその例外はありません(第13条第6項)。

  5. 支払を受けたら領収証を交付する

    支払を受けた金銭について、領収証を保護者へ交付します(第13条第5項)。

この手順は運営基準の条文の構造を並べたものです。届出の要否、説明書面の様式、指導監査での確認方法は自治体の実務によって異なりえるため、導入前に所在地の市町村へ確認してください。

試算での扱い

この試算ツールは公定価格(委託費)の算定のみを行い、実費徴収・上乗せ徴収の金額は試算に含みません。

両者は保護者が施設へ直接支払う費用であり、委託費の計算式には登場しません。

「全国共通の要件」と「自治体の確認実務」を混同すると詰まる

実費徴収・上乗せ徴収の可否や手続きの要件は運営基準という全国共通の内閣府令で決まっています。ただし、指導監査でどこまで確認されるか、説明・同意の記録をどう残すかという運用の具体は、所在地の自治体の実務によって異なりえます。試算の対象外として自治体へ確認する事項もあわせて確認してください。

上乗せ徴収を新たに導入する、または既存の実費徴収の項目を見直すときは、所在地の市町村(指導監査担当課)へ運用上の確認方法を問い合わせる。

よくある質問

実費徴収と上乗せ徴収は、金額の上限が法令で決まっていますか。

上乗せ徴収は、特定教育・保育に要する費用の見込額と公定価格の基準額との差額の範囲内という上限が明記されています。実費徴収には同様の数値上限はなく、「通常必要とされる」「負担させることが適当と認められる」費用に限られます。

試算ツールで実費徴収・上乗せ徴収の金額を入力できますか。

できません。この試算は公定価格(委託費)の算定に特化しており、実費徴収・上乗せ徴収は試算の対象外です。

上乗せ徴収を始めるとき、市町村への届出は必要ですか。

運営基準が求めるのは、書面での明示と説明、保護者の同意(上乗せ徴収は文書による同意)、領収証の交付です。届出の要否や確認の運用は自治体の指導監査によって異なるため、所在地の市町村へ直接確認してください。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事も試算も、運営基準の本文を確認した範囲だけを扱います。実費徴収・上乗せ徴収の具体的な設定は、所在地の市町村へお問い合わせください。

次に知りたいこと:副食費・主食費は公定価格の試算に入らない理由、公定価格の計算の流れ(基本分・加算・調整の順序)、市区町村の独自補助と公定価格の切り分け方、実費徴収に係る補足給付事業(市町村の事業)。

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この記事が参照した一次資料

ほかの解説

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