解説

私立保育所の公定価格「委託費」の法的根拠と施設型給付費との違い

私立保育所が受け取る公定価格は「委託費」、認定こども園・地域型保育事業は「施設型給付費・地域型保育給付費の法定代理受領」と呼び方が分かれます。この違いがどの条文に基づくかを、児童福祉法と子ども・子育て支援法の原文に沿って整理します。

同じ公定価格なのに、呼び方が分かれる理由

私立保育所が受け取る公定価格は「委託費」、認定こども園・地域型保育事業は「施設型給付費」「地域型保育給付費」と呼ばれ、法律上の名称が異なります。

どちらも同じ算定基準を使いながら、支払いの法的な根拠となる条文が異なることが、呼び方の違いの理由です。

算定基準そのもの(地域区分・定員区分・年齢区分等)は保育所の公定価格の計算方法と基本分単価の内訳で説明しています。この記事は、支払いの名称・根拠条文の違いに絞って整理します。

私立保育所は、児童福祉法の保育実施義務が出発点

児童福祉法第24条第1項は、市町村に対し、認定こども園化していない保育所において保育を実施する義務を定めています。

私立保育所は、認定こども園に移行していない限りこの対象に含まれます。

第2項以降は、認定こども園・家庭的保育事業等の利用調整と、通常の給付で保育を受けることが著しく困難な場合の市町村による入所措置を定めており、第1項の保育実施義務とは対象・場面が異なります。

入所措置(第5項・第6項)の費用は、児童福祉法第51条第4号・第5号に基づき、市町村が支弁します(実務上「措置費」と呼ばれます)。この記事で説明する委託費(子ども・子育て支援法附則第6条第1項)や施設型給付費(同法第27条)とは、別の法律・別の条文に基づく別建ての費用です。算定基準額自体の計算方法が委託費・施設型給付費と同一かどうかは、この記事の範囲では確認していません。

支払いを「委託費」と呼ぶ根拠は、附則第6条

児童福祉法第24条第1項そのものには、「委託費」という支払い方法の記載はありません。

支払いの名称と算定方法を定めるのは、子ども・子育て支援法附則第6条第1項です。

私立保育所(特定保育所)への支払いの根拠
条文定めている内容
児童福祉法第24条第1項認定こども園化していない保育所(私立保育所を含む)における保育実施を市町村の義務とする
子ども・子育て支援法附則第6条第1項私立保育所(特定保育所)が行った保育について、公定価格の算定基準による額を「委託費」として市町村が支払う

委託費として受け取った後、人件費・管理費・事業費の区分をどう使えるか(弾力運用の要件)は委託費の弾力運用で説明しています。

認定こども園・地域型保育事業は、施設型給付費の法定代理受領

  1. 施設型給付費は、本来は保護者への個人給付

    子ども・子育て支援法第27条5項は、施設型給付費として保護者へ支給すべき額の限度で、市町村が保護者に代わって施設へ直接支払うことができると定めています。

  2. 法定代理受領は、保護者への支給とみなされる

    同条6項は、この代理受領があったときに、保護者へ施設型給付費の支給があったものとみなすと定めます。

延長保育事業など、公定価格(施設型給付費・委託費)とは別の財源で運営される事業との違いは『延長保育事業は公定価格とは別制度』で説明しています。

離島などで行われる「特例保育」の給付は、委託費とは別の条文で定められています。詳しくは『特例保育と特例地域型保育給付費』で説明しています。

2つの支払い方式を並べて確認する

私立保育所(委託費)と認定こども園等(施設型給付費等)の違い
項目私立保育所(委託費)認定こども園・地域型保育事業(施設型給付費等)
根拠条文児童福祉法第24条第1項+子ども・子育て支援法附則第6条第1項子ども・子育て支援法第27条5項・6項(地域型保育は第29条5項等)
支払いの法的性格市町村の保育実施義務の履行としての委託費支払い保護者への個人給付を施設が法定代理受領
算定基準支援法第27条3項1号の基準(公定価格)同左

この対応表は法律上の根拠条文の違いを整理したもので、算定される金額の計算方法そのものの異同はこの記事の範囲では扱いません。保護者の利用者負担額が下がる多子軽減が、委託費の算定額に影響するかどうかは多子軽減と委託費の関係で説明しています。

試算での位置づけ

名前が違っても、試算の入力項目は変わらない

この試算ツールは私立保育所を前提に、委託費・施設型給付費のいずれの算定にも共通する公定価格の基準額を計算します。

会計処理や書類で法的根拠を明記する必要がある場合は、この記事の対応表を参照する。

よくある質問

認可保育所ならどこも「委託費」ですか。

市町村が設置する公立保育所は、児童福祉法第24条第1項に基づき市町村自身が保育を実施するため、委託費という支払いの形はとりません。委託費の対象は、都道府県・市町村以外の者が設置する私立保育所(附則第6条の「特定保育所」)です。

認定こども園に移行すると、私立保育所でも施設型給付費になりますか。

児童福祉法第24条第1項は、認定こども園法上の認定・公示を受けた施設を保育所の実施義務の対象から除外しています。認定こども園に移行した施設は、支援法第27条の施設型給付費ルートに移ります。

委託費と施設型給付費で、公定価格の金額計算は変わりますか。

この記事が確認した範囲では、いずれも子ども・子育て支援法第27条3項1号の基準(内閣総理大臣が定める基準)を算定の基礎にしています。個別の金額計算の異同はこの記事の範囲では扱いません。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、算定基準額を試算できます。私立保育所ならこの額が委託費として、認定こども園等なら施設型給付費として支払われます。

公定価格の試算結果を見る

この試算ツールは金額の算定のみを行い、委託費・施設型給付費のどちらの手続きで支払われるかの判定はしません。実際の支払い方式は所在地の市町村・都道府県に確認してください。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・計算方法:保育所の決まり方と保育料との関係(基本分単価の内訳)

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

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  • 公定価格の財源は誰が負担するか(国・都道府県・市町村の負担割合)

    私立保育所の委託費や認定こども園の施設型給付費の財源を、国・都道府県・市町村がどう分けて負担するかを、子ども・子育て支援法とその施行令の条文で整理します。負担割合は市町村への交付の話で、施設の受取額とは別です。

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  • 幼児教育・保育の無償化と公定価格算定の関係

    保育所の委託費は公定価格の基準で算定した額を市町村が私立保育所へ支払うもので、無償化は保護者の利用者負担を変える制度です。3〜5歳児クラス等の利用料を無償化する制度が、私立保育所が市町村から受け取る公定価格に基づく委託費の算定にどう関わるのかを、こども家庭庁の説明資料に沿って整理します。

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  • 保育所が利用定員を超えて受け入れてよい場合(運営基準第22条)

    確認を受けた保育所は、市町村の確認で定めた利用定員を超えて保育を提供してはならないとされます。例外となる5つの場合(年度中の需要の増大・便宜の提供・児童福祉法の措置2つ・災害や虐待などのやむを得ない事情)を、条文の所在つきで整理します。

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