解説

多子軽減で保育料が下がっても委託費の算定額は不変

きょうだい同時利用の多子軽減で保護者の保育料(利用者負担額)が下がっても、私立保育所が市町村から受け取る委託費の算定額が変わらない理由を、子ども・子育て支援法の条文とこども家庭庁の資料に沿って整理します。

多子軽減の対象(保護者の利用者負担額で、施設の受取額ではない)

多子軽減は、きょうだいが同時に施設を利用するときに、保護者が負担する利用者負担額(保育料)を軽くする仕組みです。こども家庭庁の資料は、小学校就学前の範囲で、2号・3号認定の子どもについて、同時に利用する最年長の子から順に、第2子は半額、第3子以降は無償とすると説明しています。

同じ資料には、年収約360万円未満相当の世帯について、多子のカウントにおける年齢制限や同時入所の要件を撤廃する旨も書かれています。3〜5歳の利用料は無償化されているため、軽減額が実際に生じる場面は、主に0〜2歳の住民税課税世帯です。

ここまでの説明は、こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化 利用者負担」の資料に基づきます(作成日と確認日は出典台帳に記載しています)。利用者負担額は、世帯の所得の状況その他の事情を勘案し、国が定める水準を限度として市町村が定めます。実際の軽減の適用範囲や金額は、所轄の市町村へ確認してください。

私立保育所の委託費の基準額(利用者負担額を差し引かない)

子ども・子育て支援法附則第6条第1項は、都道府県及び市町村以外の者が設置する保育所(特定保育所)について、当分の間、市町村が保育費用を委託費として特定保育所へ支払うと定めています。

その額は、施設型給付費の額を定める第27条第3項第1号の基準で算定した費用の額に相当する額です。同項に、利用者負担額を差し引く定めはありません。同項は、この場合には第27条を適用しないとも定めています。

支払いの仕組みの違いと、多子軽減で保護者の負担が下がったときの扱い
比較項目私立保育所(委託費)施設型給付費の対象施設(認定こども園など)
根拠子ども・子育て支援法附則第6条第1項子ども・子育て支援法第27条
市町村が算定する額第27条第3項第1号の基準で算定した額に相当する額(利用者負担額は差し引かない)第1号の基準で算定した額から、第2号の利用者負担額を控除した額
保護者の負担保育費用の支払をした市町村長が、保護者等から徴収する(附則第6条第4項)保護者が施設へ利用者負担額を支払う
多子軽減で保護者の負担が下がると委託費の算定額は変わらない利用者負担額が減った分だけ施設型給付費が増え、施設が受け取る合計は基準で算定した額のまま

条文上は、基準で算定した額が現に保育に要した費用の額を超えるときは、その現に要した費用の額とされます。施設型給付費の側は、保護者が利用者負担額を支払うことが前提です。

保護者負担の徴収(市町村が行い、委託費の額とは別建て)

同じ附則第6条の第4項は、保護者又は扶養義務者から費用を徴収する主体を、保育費用の支払をした市町村長としています。徴収する額は、家計に与える影響を考慮し、保育認定子どもの年齢等に応じて定める額です。

委託費の額を定める第1項と、保護者から徴収する額を定める第4項は、別の項として置かれています。確認した範囲では、保護者の負担額に合わせて施設への委託費を減らす定めは見当たりません。

副食費の免除は、保育料の多子軽減とは別の枠組み

こども家庭庁の資料は、3〜5歳児(2号認定)の副食費の免除対象を年収約360万円未満相当の世帯及び第3子以降とし、図では「公定価格」内の扱いと示しています。

対象児童数は市町村の通知で確認し、副食費徴収免除加算の手順で試算へ入れる。

保護者が保育料を滞納した場合の徴収と滞納処分の規定は、保育料の滞納・未納と私立保育所の委託費で説明しています。

試算での考え方

このサイトの試算は、施設が受け取る公定価格に基づく額を扱うもので、きょうだいの人数や保護者の利用者負担額を入力する欄はありません。自園の実際の受取額や、保護者の負担額の扱いは、市町村の通知や案内で確認してください。

よくある質問

きょうだいで通う世帯が増えると、園が受け取る委託費は減りますか。

条文の構造上、多子軽減で保護者の負担が下がっても、私立保育所への委託費は利用者負担額を差し引かない額で定められています。実際の支払額の算定は、所轄の市町村の通知で確認してください。

認定こども園などの施設型給付費でも同じですか。

施設型給付費は、基準で算定した額から利用者負担額を控除した額で、市町村が保護者に代わって施設へ支払う法定代理受領が前提です。多子軽減で利用者負担額が下がると、その分だけ施設型給付費が増え、保護者が利用者負担額を支払うかぎり、施設が受け取る合計は基準で算定した額のままです。実際に要した費用がその額を下回る場合は、その費用の額が上限になります。

多子軽減の対象になるかどうかは、この試算で分かりますか。

分かりません。世帯ごとの利用者負担額は市町村が定めるため、このツールでは扱っていません。無償化との関係は無償化と公定価格の関係で説明しています。

自園の条件で試算する

所在地・利用定員・年齢別の園児数を入れると、基本分単価と実装済みの加算・減算から月額を計算します。

公定価格の試算を開く

この試算に、多子軽減や保護者の利用者負担額の計算は含まれません。委託費の法的な根拠は委託費の条文上の根拠、公定価格の決まり方は『公定価格は何で決まるか』、保護者から別に受け取る費用は実費徴収・上乗せ徴収で説明しています。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・計算方法:保育所の決まり方と保育料との関係(基本分単価の内訳)

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 幼児教育・保育の無償化と公定価格算定の関係

    保育所の委託費は公定価格の基準で算定した額を市町村が私立保育所へ支払うもので、無償化は保護者の利用者負担を変える制度です。3〜5歳児クラス等の利用料を無償化する制度が、私立保育所が市町村から受け取る公定価格に基づく委託費の算定にどう関わるのかを、こども家庭庁の説明資料に沿って整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 保育料の滞納・未納と私立保育所の委託費(附則第6条)

    私立保育所の保育料は、委託費を支払った市町村の長が保護者から徴収します。子ども・子育て支援法附則第6条第1項・第4項〜第6項の条文から、保育料の滞納・未納が委託費の額とどう関係するかと、滞納処分の規定を整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 保育の給付認定の有効期間と変更・取消しの流れ

    保育所を利用する子どもの給付認定は、法律の定める有効期間内に限って効力があります。子ども・子育て支援法の第21条から第24条と施行規則の第8条から第10条を、原文で整理します。満3歳で認定が切り替わる仕組みと、園が確認する書類の持ち方もまとめます。

    関連する理由: 共通する一次資料

「定員・在籍・利用開始の時期が変わるとき」の解説一覧へ