解説

保育所等の経営実態調査の収支差率は何を測り、公定価格とどう関わるか

令和6年度の幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査で、収支差率と人件費比率がどの算式で出されるか、調査の目的と調査事項、数字を読むときの注意を、こども家庭庁の公表資料に沿って整理します。

経営実態調査は、公定価格の「その後」の経営を確かめる統計調査

令和6年度の経営実態調査は、公定価格で累次の改善に取り組んできた後の、直近の経営実態を把握するために実施されました。

資料には、前回の令和元年度調査から5年が経過していることが目的として書かれています。

調査の対象は、保育所、幼稚園、認定こども園、地域型保育事業所(小規模保育、家庭的保育、事業所内保育、居宅訪問型保育)です。層化無作為抽出法で選ばれ、地域区分と定員区分が考慮されています。

調べられた4つの事項と、収支の対象年度

  1. 概要

    経営主体、利用定員、入所児童数などです。令和6年3月時点の状況です。

  2. 職員の配置

    職種別の配置状況です。令和6年3月末日時点で調べています。

  3. 職員の給与

    職種別の勤続年数や支給額などです。令和6年3月分を調べています。

  4. 収支の状況

    公定価格に対応する年間の収支差です。対象は令和5年度です。

「令和6年度調査」の収支は令和6年度の決算ではない

調査の名前は令和6年度ですが、収支差率の元になる収支は令和5年度の決算です。令和5年度の決算より後に行われた単価の改定や処遇改善は、この数字に入っていません。この記事が使った資料は、集計結果の速報です。

数字を引用するときは「令和6年度調査(令和5年度決算)」と、対象の決算年度まで書く。

収支差率と人件費比率の算式

資料には、社会福祉法人会計の場合の算式が書かれています。

収支差率は、収益から費用を引き、収益で割って出します。収益は保育事業収益、児童福祉事業収益、借入金利息補助金収入、受取利息配当金収入の合計です。費用は人件費、事業費、事務費、その他の費用、支払利息、法人本部帰属経費の合計です。

人件費比率は、人件費を同じ収益で割って出します。

学校法人会計の場合は基本金組入後の収支差で示され、括弧内に基本金組入前の収支差が併記されています。会計の種類が違う施設を並べて見るときは、この違いを確かめる必要があります。

この数字を読むときの3つの注意

平均値は、自園の収支や公定価格の水準を決めるものではない

収支差率は、回答した私立施設・事業所の集計結果です。自園の収支が平均より高い、低いというだけで、個別の施設の公定価格や加算の適用が変わるわけではありません。

自園の公定価格は、告示と通知の単価・要件で試算し、収支差率は経営の位置づけを見る参考にとどめる。

施設類型によって、数字の意味が違う

資料は、家庭的保育事業は個人立の事業所が多く、事業の収支差(利益)が個人の給与になるため、収支差率が高く出ているものと考えられる、と注記しています。

類型の違う施設の収支差率を並べて優劣を判断せず、同じ類型・同じ会計の区分で比べる。

調査の項目は、前回と同じではない

調査案の資料では、例えば、比較する条件をそろえる観点から、法人本部に帰属する経費に加えて法人本部に帰属する収益の項目が追加されています。一方、処遇改善等加算の取得状況は他の調査で把握できるため削除されています。

前回調査との差を述べるときは、算式と調査項目が同じかどうかを資料で確かめてから書く。

今後の経営情報は、報告制度を通じて見える化される

資料は、経営情報等について、令和7年度以降は子ども・子育て支援情報公表システム「ここdeサーチ」で把握できるよう、費用の使途の見える化を法定化したと説明しています。

経営情報を把握できるようにするため、費用の使途の見える化が法定化されています。

報告の対象、報告先、期限、未報告減算との関係を整理しています。

経営情報の報告は、誰が・いつ・どこへ行うかを見る

この記事で扱わないこと

調査結果の個別の数値(収支差率・人件費比率・給与額)は扱いません。調査の結果が将来の公定価格の改定にどう反映されるかの予測も、この記事では扱いません。数値は、こども家庭庁の公表資料の原本で確かめてください。

よくある質問

経営実態調査の結果で、自園の公定価格は変わりますか。

この調査は、直近の経営実態を把握するための統計調査です。自園の公定価格は、告示と通知で定められた単価や加算の要件で決まります。この記事が確認した資料では、調査の平均値が個別の施設の単価を直接決める仕組みは示されていません。

自園が調査の対象に選ばれたら、回答は必要ですか。

調査案の資料には、統計法に基づく一般統計調査と記載されています。回答の扱いは調査票の案内に従ってください。この記事は個別の回答方法を扱いません。

収支差率は、利益率と同じ意味ですか。

資料の算式では、収益から費用を引いた差を収益で割った割合です。なお、学校法人会計では基本金組入後の収支差で示されるため、会計の種類が違う施設の数字を、他の利益率と同じ意味で読むことはできません。

自園の条件で試算する

自園の所在地・利用定員・年齢別園児数から、基本分単価を試算できます。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事も試算も、確認した資料の範囲だけを扱います。個別の施設の収支や会計処理は、所轄の自治体や会計の専門家へご確認ください。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」4件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

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