解説

委託費の経理の問答集(法人種別ごとの会計処理・積立の限度・賃借料・租税公課)

私立保育所の委託費の経理について、国の問答集が答えている点を整理します。法人種別ごとの会計処理、3つの積立資産に限度額があるか、賃借料に敷金・礼金が入るか、租税公課とは何かを、通知の原文に沿って説明します。

問答集が答えている点は、会計処理・積立・経費の範囲・法人本部との資金のやりとり

私立保育所の委託費の経理は、国の通知「委託費の経理等について」が基本のルールです。

この通知の読み方で迷いやすい点には、国が問答の形で答えを示しています。

問答は平成27年9月3日付の通知(内閣府と厚生労働省の連名)にまとめられています。

この記事は、そのうち法人種別ごとの会計処理、積立資産の限度額、賃借料、租税公課、法人本部との資金のやりとりを取り上げます。

通知そのものの要件は委託費の弾力運用の要件で整理しています。

この記事で扱う問答
知りたいこと問答の番号答えの要点
どの会計基準で処理するか問1法人の種類に応じた会計処理。社会福祉法人は新会計基準
積立資産に限度額はあるか問2人件費・修繕・備品等購入の3つは、単年度も累計も制限なし
賃借料に敷金などは入るか問5・問6敷金・礼金・更新料等も含まれ得る
租税公課とは何か問9個人立は所得税、営利法人立は法人税等が考えられる
子育て支援事業の範囲問10事業内容に即して判断する
法人本部へ回せる経費問13〜15人件費・事務費に相当する、保育所の運営に関する経費に限る

出典は、平成27年9月3日付の府子本第256号・雇児保発0903第2号の通知(問答)で、大津市が公開している写しの本文で確認しました。

通知の本体にあたる「委託費の経理等について」は、令和8年3月31日に最終改正されています。最新の運用は、国の現行の通知と所轄庁で確認してください。

法人種別ごとの会計処理(問1)

委託費の経理は、保育所を経営する法人の種類に応じた会計処理で行います。

問答が示す法人の種類ごとの処理は、次のとおりです。

法人種別と会計処理(問1の答え)
経営主体問答が示す会計処理
社会福祉法人平成27年4月1日から、社会福祉法人会計基準(新会計基準)で処理する
個人立など、公的な会計基準がない施設新会計基準で処理するのが基本

株式会社など、社会福祉法人以外の法人については、問答は「法人種別に応じた会計処理」とだけ述べています。

具体的にどの基準を使うかは、問答では示されていません。

経理担当者と所轄庁に確認してください。

3つの積立資産に、積立額の限度はない(問2)

人件費積立資産、修繕積立資産、備品等購入積立資産の3つは、1年に積み立てる額にも、累計額にも制限がありません。

問答は理由を、一律の制限を行政が設けるのではなく、運営する主体の内部で合理的に判断するべきだという考え方だからと説明しています。

積立資産それぞれの内容は、委託費の積立資産の種類と目的外使用の手続きで整理しています。

  1. 行政は通常、積立額に口を出さない

    積立額が多いか少ないかについて、行政が運営主体に指摘することは、通常は予定されていないと問答は述べています。

  2. 著しく外れる例外では、注意喚起がある

    額が合理的な範囲を著しく超えている例外的な場合は、まず運営主体の内部で適正化するよう、行政が注意を促すことは妨げられません。

限度がないことは、自由に積み立てられるという意味ではない

問答が述べているのは、通知として数字の上限を決めていないことです。積立が合理的な範囲かどうかは、運営主体自身が説明できる必要があります。

積立額の方針は、理事会など法人の内部で根拠を残しておいてください。自治体ごとの指導の運用は、所轄庁に確認してください。

賃借料に敷金・礼金は含まれる(問5・問6)

通知は、委託費を土地や建物の賃借料に充てられるとしています。

この「賃借料」には、敷金、礼金、更新料等も含まれ得ると、問5は答えています。

問答は賃借料を、賃借に伴って必然的に生ずる対価と説明しています。

問6は、これまで理事長から無償で借りていた土地について、新たに賃貸借契約を結んで賃借料を払ってよいかを尋ねています。

答えは、貸し主の変更など特段の事情がなければ、そのまま無償貸与にしておくことが望ましい、というものです。

租税公課とは何を指すか(問9)

通知の別表には、租税公課という経費の名前が出てきます。

問9は、保育所の運営にかかる税として、個人立の保育所では所得税、営利法人立の保育所では法人税等が考えられると答えています。

租税公課の例(問9)
経営主体問答が挙げる租税公課
個人立の保育所所得税
営利法人立の保育所法人税等

問答が挙げているのは「考えられるもの」の例です。個々の税が委託費の使途に含まれるかの判断は、会計・税務の専門家と所轄庁に確認してください。この記事は税務の判断を示すものではありません。

子育て支援事業の範囲と、第三者評価の公表(問10・問11)

通知は、同じ設置者が行う子育て支援事業の経費にも、一定の条件で委託費を充てられるとしています。

問10は、この子育て支援事業を、子ども・子育て支援法第59条の地域子ども・子育て支援事業と説明しています。

保育所と一体で運営する児童館などで行う事業も、これに当たるとしています。

  1. 国の補助の有無は問わない

    国の補助を受けていなくても、同じ内容の事業なら子育て支援事業に当たります。

  2. 事業名ではなく、事業の内容で決まる

    名前が違っても内容が同じなら、子育て支援事業に当たります。内容に即して判断してください。

要件の一つにある第三者評価について、問11は次のように答えています。

原則として、国の指針に基づく第三者評価を受け、結果を公表します。

公表は利用者だけでなく、一般の人にも向けて、ホームページや広報誌などで行います。

法人本部へ回せる経費と、資金が足りないときの貸付(問13〜15)

前期末支払資金残高(前の年度から繰り越した手元の資金)を、保育所を設置する法人の本部の運営費に使う場合について、問答は範囲を示しています。

問13は、その対象を本部の人件費と事務費に相当する経費で、保育所の運営に関するものに限ると答えています。

  1. 役員が施設長を兼ねる場合の役員報酬は対象外

    法人の役員等が保育所の施設長などを兼ねている場合、その役員報酬は対象経費として認められません。

  2. 役員報酬は勤務の実態と規定が前提

    役員報酬は、勤務の実態に合わせて支給し、役員報酬の規定を整えたうえで支給していることが求められます。

法人内で資金を貸し付けることも、法人の経営上やむを得ない場合に限って認められています。

問14は、やむを得ない場合の例として、次の3つを挙げています。

  1. 他の施設の補助金の入金が遅れた

    法人内の別の施設で、措置費や委託費を含む補助金の入金が遅れて、資金が足りなくなった場合です。

  2. 都道府県の補助金が遅れた

    法人内の施設で、都道府県の補助金が予定より遅れて、資金が足りなくなった場合です。

  3. 収益事業の一時的な資金不足

    法人内の収益事業で、一時的に資金が足りなくなった場合です。

どの場合も、本当にやむを得ないと認められ、その年度のうちに返すことが確実な場合に限ります。

本部への貸付の対象は、本部の人件費と事務費に相当する経費のうち、社会福祉事業、公益事業、収益事業に関するものです(問15)。

この記事で扱わないこと

この記事は問答集の答えの紹介で、自園の経理が適正かどうかの判断はしません。

問答は平成27年の通知のため、その後の改正で変わった点があるかもしれません。

この記事で取り上げなかった問は、通知の原文で確認してください。

よくある質問

株式会社が運営する保育所は、どの会計基準で処理しますか。

問答は「法人種別に応じた会計処理」と述べるだけで、基準の名前を示していません。具体的な基準は、経理担当者と所轄庁に確認してください。

積立資産に上限がないなら、いくらでも積み立ててよいのですか。

通知としては数字の上限を設けていませんが、合理的な範囲を著しく超える例外的な場合は、行政が注意を促すことが妨げられません。積立の方針は内部で説明できるようにしてください。

賃借料に敷金や礼金を充ててもよいのですか。

問5は、敷金、礼金、更新料等も賃借料に含まれ得ると答えています。個別の契約が当てはまるかは、所轄庁に確認してください。

この試算ツールで委託費の経理を確認できますか。

できません。この試算は公定価格(委託費)の算定に特化しており、委託費の経理や会計処理は対象外です。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、この試算に含まれていない項目が表示されます。

公定価格の試算を開く

この記事も試算も、通知の本文を確認した範囲だけを扱います。経理処理や使途の可否の判断は、所轄庁と会計の専門家へお問い合わせください。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

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