解説

委託費の積立資産の種類(4種類)と目的外使用の手続き

私立保育所の委託費で積み立てられる積立資産の種類を、要件の段階ごとに整理します。目的外に使うときの協議・承認の手続きと、前期末支払資金残高の取り崩しとの違いを、内閣府・厚生労働省の通知で説明します。

積立資産は、満たした要件の段階によって種類が変わる

私立保育所の委託費は、人件費・管理費・事業費の区分ごとに使うのが原則です。

ただし通知が定める要件を満たす保育所は、委託費を積立資産に積み立てて、次年度以降の経費に充てることができます。

積み立てられる資産の種類は、満たしている要件の段階で異なります。要件そのものは委託費の弾力運用の要件で整理しているので、この記事は積立資産の種類と、使うときの手続きに絞ります。

積立資産の種類(通知の「委託費の使途範囲」(3)(4)(6))
満たす要件の段階積み立てられる資産積立資産の内容(通知の記載)
区分間の流用が認められる要件(①〜⑦)を満たす人件費積立資産人件費の類に属する経費にかかる積立資産
同上修繕積立資産建物・建物付属設備・機械器具等備品の修繕に要する費用にかかる積立資産
同上備品等購入積立資産業務省力化機器をはじめ、施設運営・経営上効果のある物品を購入するための積立資産
上に加えて、別表1の事業等の実施と所定の要件を満たす保育所施設・設備整備積立資産同一の設置者が設置する保育所等の施設・設備整備のための積立支出に用いる
さらに、保育サービスの質の向上に関する3つの要件を満たす人件費積立資産、保育所施設・設備整備積立資産施設・設備整備積立資産は、建物・設備・機器器具等備品の整備・修繕、環境の改善等、業務省力化機器等の購入、増改築に伴う土地取得に要する費用にかかる積立資産

出典は「子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について」(令和8年3月31日最終改正)の1(3)(4)(6)です。通知には、人件費積立・修繕積立・備品等購入積立・施設設備整備積立以外の名前の積立資産は出てきません。

保育所施設・設備整備積立資産の科目の立て方

別表1の事業等のいずれかを実施する保育所が、処遇改善等加算の基礎分に相当する額の範囲内で同一の設置者の他の保育所等の施設・設備整備に備える場合、通知は経理の形を決めています。

拠点区分に「保育所施設・設備整備積立資産積立支出」の科目を設け、貸借対照表の固定資産の部に「保育所施設・設備整備積立資産」、純資産の部に「保育所施設・設備整備積立金」をそれぞれ設けて行うものとされています。

拠点区分の中にサービス区分を設定している場合は、「積立金・積立資産明細書」の摘要欄にサービス区分名を記載するとされています。

科目の細かい処理は会計基準にも関わるため、この記事では扱いません。

積立目的以外に使うときは、事前の協議または承認が要る

積立資産を、それぞれの積立目的以外に使うときは、積み立てるだけの場合と違い、手続きが要ります。

通知は要件の段階ごとに、手続きを次のように定めています。

積立資産の目的外使用の手続き
対象通知が定める手続き
人件費・修繕・備品等購入の各積立資産(1(3))事前に所轄庁へ協議し、審査のうえ適当と認められる場合に使用できる
保育所施設・設備整備積立資産を、同一設置者の他の保育所等の施設・設備に充てる場合(1(4))事前に所轄庁へ協議し、審査のうえ適当と認められる場合に使用できる
人件費積立資産、保育所施設・設備整備積立資産を目的以外に使う場合(1(6))所轄庁(設置主体が社会福祉法人または学校法人の場合は理事会)が、使用目的・取り崩す金額・時期等を十分に審査し、設置主体の経営上やむを得ないものとして承認した場合に使用できる

目的外使用を、施設の判断だけで進めない

積立資産の使途変更は、積立の時点で決めた目的に縛られます。通知は、事前の協議・審査、または承認を経た場合に使用できるとしています。

使途の変更を考えるときは、使用目的・取り崩す金額・時期を整理したうえで、所轄庁(社会福祉法人・学校法人は理事会も)へ事前に相談してください。

前期末支払資金残高の取り崩しとの違い

積立資産と前期末支払資金残高は、通知の別の項目で扱われます。

積立資産は「使途範囲」の項、前期末支払資金残高は「前期末支払資金残高の取扱い」の項で、それぞれ手続きが定められています。

  1. 積立資産の目的外使用

    積立目的と異なる使い方をする場合の手続きです。事前の協議、または理事会等による承認が要ります(上の表)。

  2. 前期末支払資金残高の取り崩し

    当期末支払資金残高のうち、翌年度に前期末支払資金残高として扱うものを使う場合の手続きです。原則は所轄庁との事前協議で、自然災害などやむを得ない事由の場合や、取り崩す額が一定の割合以下の場合は協議を省略できます。割合の数字と当期末残高の保有上限は、委託費の弾力運用の要件の記事で整理しています。

  3. 当期資金収支差額との関係

    通知は、当期末支払資金残高から前期末支払資金残高を差し引いた額が、当期資金収支差額合計になると定めています。また、各種積立資産への積立支出と当期資金収支差額合計が一定の割合を超えると、収支計算分析表の提出を求められる場合があります。

積立資産が支払資金に含まれるかどうかを直接述べた文は、通知の本文にありません。

通知は、保育所施設・設備整備積立資産を貸借対照表の固定資産の部に設けるとし、企業会計の基準による者の支払資金は流動資産と流動負債の差額としています。社会福祉法人会計など企業会計以外の支払資金の定義は、この通知では確認できません。

会計基準ごとの処理は、計算書等の作成を担う会計担当者・所轄庁に確認してください。

この記事で扱わないこと

この記事は積立資産の種類と手続きの枠組みを説明するもので、積立額の計算、要件を満たすかどうかの判断、自治体ごとの運用の違いは扱いません。

通知は都道府県知事宛てで、管内市町村への周知を求める形式です。実際の協議の窓口や様式は自治体によって異なります。

よくある質問

施設設備整備積立は、すべての保育所で積み立てられますか。

通知では、区分間の流用の要件(①〜⑦)に加え、別表1に掲げる事業等のいずれかを実施していることなどが前提です。満たしているかは所轄庁に確認してください。

積立目的を後から変えるには、どうしますか。

通知は、事前の協議と審査、または理事会等による承認を求めています。使用目的・取り崩す金額・時期を示して、所轄庁に相談してください。

この試算ツールで積立後の金額を計算できますか。

できません。この試算は公定価格(委託費)の算定に特化しており、積立や繰越の計算は対象外です。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、この試算に含まれていない項目が表示されます。

公定価格の試算を開く

この記事も試算も、通知の本文を確認した範囲だけを扱います。積立の可否や具体的な金額の判断は、所轄庁へお問い合わせください。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

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