解説

保育士が配置基準を割り込んだときの行政上の扱い(改善勧告・命令・事業停止と、加算が外れる扱いの違い)

保育士の数が最低基準(配置基準)に届かなくなった保育所に対し、児童福祉法第46条が定める報告徴収・立入検査、改善勧告、改善命令、事業停止命令と、第58条の認可取消しを整理します。公定価格の配置改善加算が外れる扱いとは根拠が別であることも説明します。

配置基準は「最低基準」で、守る義務は設置者にある

保育所の保育士の数は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(最低基準)の第33条第2項が定めています。

乳児おおむね3人につき1人以上、1歳児おおむね6人につき1人以上、3歳児おおむね15人につき1人以上、4歳以上児おおむね25人につき1人以上で、保育所1つにつき2人を下ることはできません。

児童福祉法第45条第5項は、児童福祉施設の設置者にこの基準を守る義務を課しています。

配置基準の具体的な人数は、児童福祉法第45条第1項に基づき都道府県等が条例で定めます。上の人数は国の基準(第33条第2項)で、実際の条例の数字は所在地の都道府県・指定都市・中核市等で確認してください。

基準に届かないときに施設へ起こり得る行政対応(児童福祉法第46条)

保育士の退職や採用難で人数が基準に届かなくなった場合、施設側に生じ得る行政上の対応は、児童福祉法第46条が段階を分けて定めています。

いきなり処分になるのではなく、報告・検査、勧告、命令、事業停止の順に重くなる作りです。

児童福祉法第46条が定める対応の段階
段階行える者内容と条件
報告徴収・立入検査(第1項)都道府県知事基準を維持するため、設置者・施設の長に必要な報告を求め、職員に質問させ、施設に立ち入って設備・帳簿書類等を検査させる
改善勧告(第3項前段)都道府県知事設備または運営が基準に達しないとき、設置者に必要な改善を勧告する
改善命令(第3項後段)都道府県知事設置者が勧告に従わず、かつ児童福祉に有害と認められるとき、必要な改善を命ずる
事業停止命令(第4項)都道府県知事基準に達せず、かつ児童福祉に著しく有害と認められるとき、都道府県児童福祉審議会の意見を聴いて事業の停止を命ずる

「一時的に基準を下回ったら即、事業停止」ではない

事業停止命令には「児童福祉に著しく有害」という条件と、児童福祉審議会の意見聴取が必要です。改善勧告・命令も、条文上は基準に達していない状態を改善させるための手段です。

欠員が出た時点で、所在地の自治体の担当窓口へ速やかに状況を伝え、採用や配置の見通しを含めて相談する。

民間の設置者が都道府県知事の認可を受けて設置した保育所については、児童福祉法第58条第1項が、この法律や命令、処分に違反したときに知事が認可を取り消せると定めています。

第46条の勧告・命令に従わない場合などが、この違反に当たるかは個別の事案ごとに判断されるため、この記事では断定しません。

公定価格の加算が外れる扱いとは、根拠も効果も別

配置改善加算は、要件を満たせなくなった月の翌月から外れます。

これは公定価格(給付費・委託費の算定額)の話で、加算を付けるかどうかを市町村が判断する仕組みです。

一方、第46条は施設の運営そのものを基準に合わせさせる指導監督で、根拠の法律も、判断する行政機関も異なります。

公定価格の加算と、児童福祉法第46条の対応の違い
比べる点配置改善加算が外れる扱い児童福祉法第46条の対応
何に関わるか公定価格に加算が付くかどうか施設の設備・運営が基準に達しているか
主な根拠公定価格に関する内閣府の通知児童福祉法第45条・第46条
主に判断する行政市町村都道府県知事(認可の主体)
生じる結果要件を満たせなくなった月の翌月から加算が外れる報告・検査、勧告、命令、事業停止など

基準に届かない場合に、加算以外の基本分の公定価格が自動的に減額される全国共通の規定は、今回確認した範囲では見つかっていません。実際の委託費・給付費の扱いは、所在地の市町村へ確認してください。

認定こども園・新制度の幼稚園は、市町村の勧告・確認取消しの仕組みもある

施設型給付の対象になる特定教育・保育施設(認定こども園など)には、子ども・子育て支援法にも別の仕組みがあります。

市町村長は、運営基準に従った運営をしていないと認めるとき、期限を定めて勧告でき、従わなければ公表や命令ができます(第39条)。運営基準違反などの場合は、給付の対象となる確認の取消しや効力停止もあり得ます(第40条)。

認可保育所(私立)は、第40条の「確認」の対象ではない

認可保育所は、施設型給付ではなく、市町村から委託費を受ける仕組みで運営されます(児童福祉法第24条、子ども・子育て支援法附則第6条)。そのため、この節の勧告・確認取消しは、認可保育所には適用されません。

自園が保育所か、認定こども園か、地域型保育かで、当てはまる根拠条文が違う点を先に確認する。

よくある質問

配置基準を1日でも下回ったら、行政処分になりますか。

条文上、改善勧告は「基準に達しないとき」、命令は勧告に従わず児童福祉に有害なとき、事業停止は児童福祉に著しく有害なときと、段階と条件が分かれています。どの段階の対応になるかは、自治体が個別に判断します。

配置基準を割り込むと、公定価格の基本分も減りますか。

今回確認した範囲では、基準に届かない場合に基本分が自動的に減額される全国共通の規定は見つかっていません。配置改善加算が外れる扱いは別途あります。実際の扱いは市町村へ確認してください。

配置基準を判断するのは誰ですか。

認可の主体である都道府県知事が、第46条の報告徴収・立入検査や勧告などを行います。加算の要否は、市町村が判断します。

自園の条件で試算する

配置改善加算を含む試算で、加算が付く場合と付かない場合の差を確認できます。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事は法律の条文が定める対応の枠組みを説明するもので、個別の施設への対応の見通しや法的な判断を示すものではありません。実際の状況は、所在地の都道府県・市町村の担当窓口へ確認してください。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

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