解説

保育園の職員数別の安全衛生体制:衛生推進者・衛生管理者・産業医・ストレスチェック

保育園で、職員数が10人以上・50人以上になると置く人や設ける会議が変わります。労働安全衛生法と施行令・規則の条文から、衛生推進者、衛生管理者、産業医、衛生委員会、ストレスチェックを整理します。

必要な体制は、事業場ごとの常時使用する労働者の数で決まる

労働安全衛生法は、衛生管理者や産業医などを置く義務を、政令や省令で定める規模の「事業場」ごとに定めています。

保育園の場合、職員数が10人以上と50人以上が、体制の切り替わる2つの境目です。

条文の言葉は「常時使用する労働者」で、園児の数は含みません。

職員数ごとに必要な体制(労働安全衛生法・同施行令・同規則、確認日 2026-10-17)
常時使用する労働者の数選任・設置するもの根拠
10人以上50人未満衛生推進者法第12条の2、規則第12条の2
50人以上衛生管理者法第12条、施行令第4条
50人以上産業医法第13条、施行令第5条
50人以上衛生委員会法第18条、施行令第9条
50人以上ストレスチェックの実施(年1回)法第66条の10、規則第52条の9、厚生労働省ストレスチェック制度のページ
50人未満ストレスチェックは当分の間努力義務。令和10年4月1日から義務厚生労働省ストレスチェック制度のページ

「事業場」の範囲と、パートや有期の職員を「常時使用する労働者」に数えるかは、使用の実態で判断されます。複数の園を運営する法人は、法人全体ではなく園ごとに数えるのかを含め、所轄の労働基準監督署に確認します。

10人以上50人未満の園は、衛生推進者を選任する

規則は、衛生推進者を選任する事業場を、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場と定めています。

選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い、その事業場に専属の者を選びます。

専属の例外は、労働衛生コンサルタントなど厚生労働大臣が定める者から選ぶときです。

衛生推進者になれるのは、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者などです。

10人未満の事業場に衛生推進者の選任を求める定めは、この条にはありません。

職員が10人に届いた日から14日が数えられるため、採用の増える時期の前に講習の受講先を調べておきます。

10人の境目は、パートや臨時の職員の入れ替わりで動く

常勤の職員が9人でも、パートを含めて「常時使用」が10人以上と判断される園では、衛生推進者の選任が必要になります。数え方を誤ると、選任の期限の14日を過ぎます。

毎年4月と、職員が増えた月に、雇用形態別の人数を表にして、10人と50人に届いていないかを確認します。数え方が不明なときは、労働基準監督署に確認します。

50人以上の園は、衛生管理者・産業医・衛生委員会が必要になる

施行令は、衛生管理者、産業医、衛生委員会のいずれも、常時50人以上の労働者を使用する事業場を対象にしています。

50人に届いた園は、衛生推進者に代えて、この3つを置く園になります。

衛生管理者と産業医の選任は、どちらも選任すべき事由が発生した日から14日以内です。

50人以上の園で置く3つの内容(規則第7条・第13条・第23条、確認日 2026-10-17)
置くもの選び方・開き方届出・記録
衛生管理者14日以内に、専属の者を選ぶ。業種の区分は「その他の業種」で、第一種または第二種の衛生管理者免許を持つ者などから選ぶ選任したら遅滞なく、所轄の労働基準監督署長に報告
産業医14日以内に、医師のうちから選任する。医学の知識の要件(法第13条第2項)を備えた者に限り、選べない者の範囲も規則第13条が定める産業医が辞任・解任されたときは、遅滞なく衛生委員会に報告し、労働基準監督署長にも報告
衛生委員会毎月1回以上開く議事の概要を職員に周知し、委員会の意見と講じた措置などの重要な議事を3年間保存

規則第7条の業種の区分は、第一種の免許などに限る業種を列挙しており、保育所の事業はその列挙に含まれません。

そのため、保育所だけを運営する事業場の衛生管理者は、第二種衛生管理者免許を持つ者からも選べます。

医療業を併設するなど事業の内容が異なる場合の区分は、労働基準監督署に確認します。

ストレスチェックは、令和10年4月から50人未満の園も義務になる

法第66条の10は、事業者に、労働者の心理的な負担の程度を把握する検査(ストレスチェック)を行うよう求めています。

規則第52条の9により、検査は常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に行います。

検査の項目は、職場での心理的な負担の原因、心身の自覚症状、他の労働者による支援の3つです。

厚生労働省は、労働者50人未満の事業場は当分の間努力義務とされていたと示しています。

2025年5月に公布された改正法により、50人未満の事業場も、令和10年4月1日から義務になります。

10人以上50人未満の園は、衛生推進者の選任とあわせて、令和10年4月までに実施体制を決める必要があります。

検査の結果は、本人の同意なしに園へ渡されない

検査を行った医師等は、あらかじめ受けた職員の同意を得ないで、結果を事業者に提供してはならないと法が定めています。園長や事務が結果を直接見られる前提で外部の検査を依頼しても、同意のない結果は園へ渡されません。

外部の医師や保健師に検査を委ねる場合は、結果が本人へ先に通知され、園には同意のあった分だけが渡る流れかを確認します。高ストレスの職員が面接指導を申し出たら、園は医師による面接指導を行う義務があります。検査を受ける職員の範囲は、事業場の人数の数え方とは別に決まるため、実施を委ねる医師等か労働基準監督署に確認します。

職員数に応じて、園で決めておく順序

  1. 雇用形態別の人数を数える

    常勤、パート、有期の職員を分けて数え、10人と50人に届いているかを確認します。数え方で迷うときは、労働基準監督署に確認します。

  2. 届いた境目の体制を、14日以内に整える

    10人以上なら衛生推進者、50人以上なら衛生管理者と産業医です。選任の期限は、どれも事由が発生した日から14日以内です。

  3. 50人以上なら、衛生委員会を毎月開く日を決める

    毎月1回以上の開催が必要です。開催の都度、議事の概要を職員に周知し、記録を3年間保存します。

  4. ストレスチェックの実施者と時期を決める

    年1回の実施が必要です。外部の事業者に委ねるときは、結果の扱いが法の定め(本人の同意なしに園へ渡さない)に沿っているかを契約の前に確認します。

次に知りたいこと:職員の労働時間、年休、子どもの健康診断

職員の健康管理の体制を押さえたら、労働時間と休みの定め、子どもの健康診断の順に確認します。

休憩と時間外労働の上限は、保育士の休憩時間の与え方と時間外労働の上限で整理しています。年次有給休暇の付与日数と年5日の取得義務は、保育園の職員の年次有給休暇の付与日数と年5日の取得義務で整理しています。

子どもの入所時・定期・臨時の健康診断と、嘱託医を置く条件は、保育所の子どもの健康診断と嘱託医で整理しています。この記事の産業医は職員の健康管理の医師で、子どもを診る嘱託医とは別です。

よくある質問

園児の数も、職員数の10人や50人に数えますか。

数えません。条文の対象は「常時使用する労働者」で、園児は労働者ではありません。数える対象は、園で働く職員です。

職員が9人の園は、何もしなくてよいですか。

規則が衛生推進者の選任を求めるのは、常時10人以上50人未満の事業場です。10人未満の園にこの選任の定めはありませんが、厚生労働省は令和10年4月1日から50人未満の事業場もストレスチェックを義務とすると示しており、9人の園もこの範囲に当たります。

産業医は、近所の医院の嘱託医に頼めますか。

産業医は医師のうちから選任し、事業場の運営に利害関係のある者の扱いなど、選べない者の範囲を規則第13条が定めています。嘱託医が産業医を兼ねられるかは、この記事では判断できないため、労働基準監督署か医師会に確認します。

この記事で、自園に何が必要かを判定できますか。

できません。この記事は、条文が定める規模の目安を整理したものです。自園の事業場の範囲と人数の数え方は、所轄の労働基準監督署に確認します。

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    この記事の「つまずきやすい確認事項」2件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

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