保育士は、業務で知った人の秘密を、正当な理由なく漏らしてはならない
保育士の守秘義務は、児童福祉法第18条の22が定めています。
条文は「保育士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保育士でなくなつた後においても、同様とする。」です(e-Gov 確認日 2026-10-27)。
対象は園児やその家族に限られず、「人の秘密」と書かれています。同僚や、園の運営に関わる人の秘密も、業務で知り得たものであれば文言上は含まれます。
| 項目 | 条文の内容 |
|---|---|
| 義務を負う人 | 保育士(保育士登録を受けた人) |
| 守る対象 | その業務に関して知り得た人の秘密 |
| 例外 | 正当な理由がある場合 |
| 期間 | 保育士でなくなった後も同様 |
園の職員全体に課される秘密保持は、運営基準の側にも定めがあります。施設としての措置は保育所の職員の虐待等の禁止と秘密保持で整理しています。
運営基準の秘密保持と、保育士個人の守秘義務は別の条文
児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第14条の2は、施設の職員に同じ趣旨の義務を課しています。
職員は正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らしてはならないとされ(第1項)、施設は、職員であった者が秘密を漏らすことがないよう必要な措置を講じなければなりません(第2項)。
| 比べる点 | 児童福祉法 第18条の22 | 施設基準 第14条の2 |
|---|---|---|
| 義務を負う人 | 保育士 | 児童福祉施設の職員 |
| 守る対象 | 業務に関して知り得た人の秘密 | 業務上知り得た利用者またはその家族の秘密 |
| 退職後 | 保育士でなくなった後も同様 | 施設が、職員であった者が漏らさないよう必要な措置を講じる |
| 違反したとき | 罰則・登録の取消しなどの定めがある | 施設基準としての遵守義務(罰則の定めは、この条文にはない) |
保育士資格を持たない職員(事務職員や調理員など)には、第18条の22は直接及びません。施設基準の第14条の2が適用されます。
違反した場合は、罰則と、登録の取消し・名称の使用停止の両方があり得る
罰則は第61条の2が定め、行政処分は第18条の19第2項が定めています。
第61条の2第1項は、第18条の22に違反した者を「一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」に処するとしています。第2項は、この罪は告訴がなければ公訴を提起できないとしています(親告罪)。
第18条の19第2項は、保育士が第18条の21(信用失墜行為の禁止)または第18条の22に違反したとき、都道府県知事は、保育士登録を取り消し、または期間を定めて保育士の名称の使用の停止を命ずることができるとしています。
| 種類 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 刑事罰 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 第61条の2第1項 |
| 告訴の要否 | 告訴がなければ公訴を提起できない | 第61条の2第2項 |
| 行政処分 | 登録の取消し、または期間を定めた名称の使用停止を命ずることができる | 第18条の19第2項 |
「秘密」に当たるかどうかは、条文だけでは決まらない
条文は「秘密」の範囲を細かく定めていません。個別の情報が秘密に当たるか、正当な理由があるかは、事実関係によって判断が分かれます。
判断に迷うときは、園の管理者や所轄の自治体の窓口、必要に応じて弁護士に確認します。この記事は個別の事案への助言ではありません。
虐待などの通告は、守秘義務を理由に妨げられない
要保護児童を発見した人の通告は、守秘義務に関する法律の規定によって妨げられないと、児童福祉法が定めています。
第25条第1項は、要保護児童を発見した者に、市町村、福祉事務所、児童相談所などへの通告を義務づけています。同条第2項は、刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、この通告を妨げるものと解釈してはならないとしています(e-Gov 確認日 2026-10-27)。
通告は「正当な理由」の判断で迷わせないための規定
第25条第2項は、守秘義務を理由に通告をためらわないよう、通告が妨げられないことを明らかにしたものです。
通告の先は決まっている
通告先は条文が挙げる機関です(罪を犯した満14歳以上の児童は家庭裁判所)。園の職員による虐待については、令和7年10月施行の通報義務が別にあります。詳しくは保育所等の職員による虐待の通報義務で確認してください。
それ以外の情報の提供は別に考える
通告以外の場面(関係機関への情報の提供、保護者の同意の要否など)は、通告とは別の判断になります。市町村の指導の資料や、園の取り決めで確認します。
地域限定保育士にも、同じ守秘義務が及ぶ
地域限定保育士にも、第18条の21と第18条の22が準用されます(第18条の35第2項)。
登録の区分が地域限定であっても、守秘義務の内容は同じです。保育士登録の取消し・欠格事由を含む全体は、保育士登録の欠格事由・取消し・名称独占の罰則で整理しています。
よくある質問
- 保育士を辞めた後は、守秘義務はなくなりますか。
なくなりません。第18条の22は「保育士でなくなつた後においても、同様とする」と定めています。
- 違反すると、必ず罰金などになりますか。
条文は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定め、告訴がなければ公訴を提起できないとしています。実際にどうなるかは個別の事案によります。
- 保育士資格のない職員に守秘義務はありませんか。
第18条の22は保育士を対象にしています。資格のない職員には、施設基準の第14条の2が、施設の職員として秘密を漏らさない義務を課しています。
- この試算ツールで、守秘義務への対応を確認できますか。
できません。この試算は公定価格(委託費)の算定に特化しており、個々の職員の義務や個別の事案の判断は対象外です。
自園の条件で試算する
ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧
この記事が参照した一次資料
- 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
昭和23年厚生省令第63号/複数年度対象外/確認日 2026-09-28
- 児童福祉法(昭和22年法律第164号)
法令ID 322AC0000000164/対象外対象外/確認日 2026-10-15