解説

保育所等の職員による虐待の通報義務(令和7年10月施行):誰が・どこへ通報するか

令和7年10月1日に施行された児童福祉法の改正で、保育所などの職員による虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人には、都道府県または市区町村への通報義務が生じました。対象の施設、通報先、園内で解決しても残る義務、通報した職員の保護、自治体の事実確認と公表を、こども家庭庁の資料と条文で整理します。

令和7年10月1日から、保育所等の職員による虐待にも通報義務が設けられた

施設の職員等による虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人は、速やかに都道府県または市区町村へ通報しなければなりません。

令和7年10月1日に施行された「児童福祉法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第29号)が、保育所などの職員による虐待について、児童養護施設などの職員による虐待と同じ仕組みを設けたためです。対象になる行為は、児童福祉法第33条の10第1項の4つの号(暴行、わいせつな行為、著しい減食や放置などの養育の怠り、著しい心理的外傷を与える言動)です。

こども家庭庁の概要資料は、改正の内容を次の5つに整理しています。

改正の内容(こども家庭庁の概要資料。確認日 2026-10-15)
項目内容
通報義務虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人は通報する
自治体の対応都道府県等が事実確認と、子どもの安全な生活環境を確保するための措置を行う
意見聴取自治体が行った措置について、児童福祉審議会等が意見を述べる
公表都道府県が、虐待の状況等を毎年度公表する
調査研究国が調査研究を行う

園の職員に虐待を禁じる条文そのものは、改正前から運営基準にあります。禁止される行為と秘密保持は保育所の職員の虐待等の禁止と秘密保持で整理しています。この記事は、見つけた後の通報と自治体の動きを扱います。

対象は保育所のほか、小規模保育や一時預かり、認可外保育施設なども含む

通報義務の対象は、もっぱら保護者と離れた環境で子どもに保育や居場所の提供などの支援を行う施設・事業です。

概要資料は、次のものを対象に追加したと書いています。

通報義務等の対象施設・事業のうち、保育に関わるもの(こども家庭庁の概要資料。確認日 2026-10-15)
区分対象
保育所・認定こども園・幼稚園保育所、幼保連携型認定こども園、幼稚園、特別支援学校幼稚部
地域型保育家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業、事業所内保育事業
そのほかの保育認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、乳児等通園支援事業
放課後・居場所など放課後児童健全育成事業、児童館、子育て短期支援事業など

概要資料は、このほかにも児童自立生活援助事業や母子生活支援施設などを対象に挙げています。全体は資料で確認してください。

幼稚園や幼保連携型認定こども園が児童福祉法第33条の12の通告の対象になる根拠は、今回確認した資料の範囲では確かめられていません。Q&Aの10番は「被措置児童等虐待」と「入園児虐待」を別の用語として挙げています。該当する場合の根拠は、こども家庭庁の資料で確認してください。

幼稚園型の認定こども園は幼稚園に対する指導監督権限を持つ行政機関、保育所型は保育所の認可権者、地方裁量型は認可外保育施設の指導監督権限を持つ行政機関が、それぞれ所管行政庁になると、Q&Aの3番が答えています。

通報先は都道府県か市区町村のどちらか。園内で解決しても、義務は残る

通報先は、所管行政庁に関わらず、都道府県または市区町村のいずれかです。

Q&Aの1番は、所管行政庁が異なる複数の事業を行う施設でも、まず速やかにどちらかへ通報することとしています。通報を受けた自治体が、自分は所管行政庁ではないと認める場合は、所管行政庁へ速やかに通知します。

児童福祉法第33条の12第1項は、虐待を受けたと思われる子どもを見つけた者は、速やかに都道府県知事または市町村長に通告しなければならないと定めています。この通告は、児童委員を介して行うこともできます(同条第2項)。

  1. 園内で話し合って解決しても、通報義務は残る

    職員が虐待を見つけて施設長に相談し、園内の話し合いで状況が改善した場合でも、見つけた人は自治体へ通報する義務があります(Q&A 7番)。

  2. 保護者も対象になる

    法律上、保護者や職員であるかにかかわらず、虐待と疑われる事案を見つけた人は通報することになっています(Q&A 8番)。

  3. 匿名でも通報できる

    匿名を希望する通報者には、匿名でもよいと伝えて安心してもらったうえで、施設名など事実確認に必要な情報を集めるよう、自治体に求めています(Q&A 4番)。

  4. 施行前の出来事でも、施行後の通報なら自治体は対応する

    令和7年10月1日より前に起きた疑いでも、施行後に通報を受けたなら、所管行政庁は事実確認などの措置を講じる義務があります。子どもがすでに退所や転所をしていても同じです(Q&A 11番)。

通報した職員は、解雇などの不利益を受けない

児童福祉法第33条の12は、通告をしたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを、施設職員等が受けないと定めています(第5項)。

また、刑法の秘密漏示罪などの守秘義務の規定は、通告(虚偽のものと過失によるものを除く)をすることを妨げるものと解釈してはならないとされています(第4項)。

通告を受けた自治体の職員や、通告を仲介した児童委員は、通告した人を特定させる事項を漏らしてはなりません(第33条の13)。

秘密保持の規定があるから、通報できないという読み方はできない

運営基準の秘密保持は、子どもや家族の秘密を漏らさないことを職員に求めています。ただし第33条の12第4項は、守秘義務の規定が通告の妨げにならないと定めています。

通報に当たって何をどこまで伝えるかは、通報先の自治体の窓口に相談してください。この記事は個別の事案に当たるかどうかを判断しません。

通報を受けた自治体は、事実確認をし、必要なら園に指導・助言する

通報を受けた自治体は、所管行政庁への通知、事実確認、園への指導・助言、審議会等への報告の順に動きます。

  1. 所管行政庁へ知らせる

    通報を受けた自治体が所管行政庁でない場合は、必要があると認めるときに所管行政庁へ速やかに通知します(第33条の14第1項)。市町村が設置して県に届出をする保育所は、所管行政庁が県になります(Q&A 2番)。

  2. 事実を確認する

    所管行政庁は、虐待の防止や子どもの保護のために必要があると認めるときは、子どもの状況などの事実を確認する措置を講じます(同条第2項)。

  3. 園に指導・助言をする

    事実確認の措置を講じた後、必要があると認めるときは、事業を行う者や施設の設置者に、指導や助言など、子どもの安全な生活環境を確保するための措置を講じます(同条第3項)。

  4. 審議会等に報告する

    措置の内容や子どもの状況を、児童福祉審議会等に報告します(第33条の15)。虐待かどうかにかかわらず、事実確認を行った場合は報告が必要です(Q&A 12番)。

子どもへの聞き取りについて、Q&Aの5番は、児童相談所や都道府県等に相談して専門的な知識を持つ人材の派遣を受けるのが望ましいとしています。それが難しい場合も、調査で子どもが二次被害を受けないよう、状況や心情に配慮した対応が必要だとしています。

都道府県は、毎年度、虐待の状況を公表する

児童福祉法第33条の16は、市町村長が都道府県知事へ毎年度報告し、都道府県知事が管内の状況を毎年度公表すると定めています。

Q&Aの24番は、施行日の令和7年10月1日から令和8年3月31日までの分を取りまとめた結果を公表する必要があるとしています。

指定都市や中核市などに都道府県知事の権限が移っている場合、措置は当該の市が所管行政庁として講じますが、公表は都道府県が市の状況を含めて一括して行います(Q&A 6番)。

ガイドラインは、令和8年に改訂されています。園が虐待の未然防止の体制を整える際の具体的な内容は、こども家庭庁と文部科学省の「保育所や幼稚園等における虐待の防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」の最新版で確認してください。

よくある質問

虐待を見つけたら、まず園長に相談すればよいですか。

相談だけでは、通報義務を果たしたことになりません。園内の話し合いで状況が改善した場合でも、見つけた人には自治体への通報義務が残ります(Q&A 7番)。

通報は、都道府県と市区町村のどちらにすればよいですか。

どちらでも構いません。施設の所管行政庁と異なる自治体に通報した場合は、受けた自治体が所管行政庁に通知します(Q&A 1番)。

保護者にも通報義務はありますか。

法律上、保護者か職員かにかかわらず、虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人が対象です(Q&A 8番)。

通報した職員が、園から不利益な取扱いを受けることはありますか。

児童福祉法第33条の12第5項は、施設職員等が通告をしたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いを受けないと定めています。

この試算ツールで、虐待の通報や園の体制を確認できますか。

できません。この試算は公定価格(委託費)の算定に特化しており、虐待の判定や通報の要否は対象外です。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていないことも表示されます。

公定価格の試算を開く

保護者からの苦情の窓口と記録は保育所の苦情対応で、指導監査での確認項目は指導監査の確認表で、事故が起きたときの注意点は重大事故の場面別の注意点で整理しています。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由:

  • 保育所の職員の虐待等の禁止と秘密保持(情報提供には保護者の同意)

    保育所の職員は、子どもの心身に有害な影響を与える行為や、業務上知った秘密の漏えいをしてはなりません。運営基準の第25条・第27条と児童福祉施設の基準の第9条の2・第14条の2から、禁止行為、退職者への措置、小学校などへ情報を渡すときの文書による同意、研修を整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 保育所の保護者からの苦情への対応(窓口・記録の5年保存・市町村への報告)

    保育所は、保護者などからの苦情を受け付ける窓口を設け、内容を記録します。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第14条の3と、特定教育・保育施設の運営基準の第30条・第34条から、窓口、記録、記録の5年保存、市町村から指導を受けたときの改善と報告、第三者の関与が必要な施設との違いを整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 事業所内保育事業の基準(利用定員20人以上は保育所型、19人以下は小規模型)

    事業所内保育事業は、利用定員が20人以上なら保育所型、19人以下なら小規模型として基準が分かれます。家庭的保育事業等の基準の第42条から第48条で、設備の面積、保育士の数、連携施設の特例を整理し、保育所や小規模保育との違いと条例の確認先を示します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

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