解説

保育所の付加的保育と付加的サービスの違い・上乗せ徴収の要件(令和8年3月31日の通知)

体操や英語などの外部講師のプログラムを保育所で行うとき、保育所が契約する付加的保育と、保護者が事業者と直接契約する付加的サービスで、市町村との協議、配置基準、費用の徴収、保護者の同意がどう違うかを、令和8年3月31日の通知の別紙2で説明します。

付加的保育は保育所が契約し、付加的サービスは保護者が事業者と直接契約する

こども家庭庁の通知『保育所における付加的保育及び付加的サービスの実施における具体的な留意事項等について』(令和8年3月31日、こ成保第290号・こ成基第39号)の別紙2は、外部事業者が関わるプログラムを2つの形に分けています。

契約の相手が保育所なら付加的保育、保護者と事業者の直接契約なら付加的サービスです。この区分で、市町村との協議、配置基準、費用の考え方が変わります。

別紙2の定義と、形ごとの扱いの違い
見るところ付加的保育付加的サービス
定義外部事業者の関与の下で通常の保育に加えて行う、こどもの健全な心身の発達に資する特別な保育活動。保育所と保護者が契約し、上乗せ徴収で実施する保護者とサービス提供事業者が直接契約を結んで提供する、通常の保育とは別枠の追加的なサービス
市町村との協議上乗せ徴収をするときは、市町村との協議を経る市町村との協議による承認は不要
配置基準保育所が提供する保育の一部なので、参加児童も含めて配置基準を満たす保育所の配置基準は直接適用されない。降園前に行う場合も、保育所全体として必要な体制は保つ
参加の機会対象となる児童に等しく参加の機会が保障されることが求められる利用するかどうかに選択の自由がある

別紙2の定義では、自治体の補助や保育所の負担で保護者から追加の徴収をしない場合でも、外部事業者の関与の下で実施するものは付加的保育に当たります。幼保連携型認定こども園、小規模保育事業所、家庭的保育事業所、事業所内保育事業所は、これに準じた取扱いです。ただし上乗せ徴収に当たっての市町村との事前協議は、特段の必要がないとされています。

付加的保育の費用は、公定価格で賄えない部分に限って上乗せ徴収できる

別紙2は、付加的保育の内容が体操、体育、スポーツ、ダンス、音楽、絵画、造形、英語、文字、数などであるかどうかにかかわらず、こどもの健全な心身の発達に資する内容なら、その費用を、運営基準が定める「特定教育・保育の質の向上を図る上で特に必要であると認められる対価」にできるとしています。

公定価格で賄えない費用を賄うために徴収するものであれば、市町村との協議を経て、保育所を運営する事業者の判断で実施できます。

通知は、上乗せ徴収の対象が、自治体向けFAQで例示されている「公定価格上の基準を超えた教員の配置」や「平均的な水準を超えた施設整備」のような保育の環境に関するものに限られないことも明記しています。上乗せ徴収そのものの考え方は、実費徴収・上乗せ徴収は、公定価格の試算に含まれるかで説明しています。

上乗せ徴収を市町村との協議なしに始めない

付加的保育で保護者から費用を徴収するときは、市町村との協議を経ることが前提です。協議の中身は、市町村が別紙2の(1)から(10)の項目を確認して実施の可否を検討するとされています。

プログラムの内容、配置、安全計画、料金、保護者への説明資料を先にそろえ、所在の市町村の保育担当課へ協議の進め方を確認してください。

内容は保育所保育指針の基本原則を逸脱しない範囲に限られる

付加的保育の内容は、保育所保育指針が示す基本原則を逸脱しない範囲で、こどもの健全な心身の発達に資するものなら許容されます。

個別の到達や達成を指導目標にする読み書き指導や英語教室などのお稽古ごとに類する活動は、許容されない事例として挙げられています。

  1. 許容されない事例として挙げられている活動

    個別的な到達・達成を指導目標とする読み書き指導や英語教室などのお稽古ごとに類する活動、技能習得自体を目的とした運動指導、特別な訓練を前提とした表現活動など、個別・集団の形態によらず特定の身体技能の修得を求める活動です。

  2. 基本原則の考え方

    幼児期の特性を踏まえ、環境を通して行うことを基本とし、遊びを中心とした生活を通して発達に必要な体験をし、幼児期にふさわしい生活が展開されるようにすることです。

  3. 付加的サービスは扱いが少し違う

    付加的サービスでは、お稽古ごとに類する活動などを一律に排除するものではないとされています。ただし、過度な身体的負荷を伴う運動、長時間の机上学習や反復学習、長時間のスクリーン視聴などは行わないこととされています。

付加的保育で確かめる実施体制:配置、安全、計画、時間

付加的保育は保育所が提供する保育の一部です。

参加児童も含めて配置基準を満たし、保育士の目の届く場所で実施することが求められます。外部講師の指導を、保育士の目の届かない場所で行うことは適当でないと例示されています。

  1. 配置基準と実施場所を確かめる

    保育士の人数が、付加的保育に参加する児童を含めて基準を満たすことと、保育士の目の届く場所で行うことを確認します。

  2. 安全計画に書く

    事故発生時の責任は原則として保育所にあります。付加的保育に対応した安全計画を作り、緊急対応の役割分担を外部事業者とあらかじめ相談して記載しておく例が挙げられています。

  3. 保育の指導計画に位置づける

    付加的保育を行うねらい、予想されるこどもの活動、保育士等の援助や配慮、家庭との連携を考えて、保育所の実情に合わせた指導計画に入れます。

  4. 頻度と時間に配慮する

    児童に過度な負担とならない頻度にし、保育時間内に実施することを原則とします。保護者への説明や事業者との調整で職員が過度の負担とならないよう配慮することも求められています。

参加しない児童がいる場合は、疎外感や劣等感を抱かないよう配慮し、参加する児童と参加しない児童の両方に、園の全体的な計画に基づく保育を行います。安全計画の全体像は不審者対策と安全計画の記事にあります。

上乗せ徴収は、募集時・入園時・開始前の3段階で保護者に説明する

別紙2は、保護者への説明と同意を3つの段階に分けています。

募集時には情報公表で、入園時には重要事項説明書で、徴収の開始前には書面での説明と同意で、それぞれ上乗せ徴収を明らかにします。

別紙2の「保護者への説明及び同意取得」の3段階
段階求められること根拠として示されたもの
園児募集時「ここdeサーチ」などで、保育所ごとの上乗せ徴収の有無・理由・金額を含めた入力内容を確認し更新する。園のホームページでの案内も検討する子ども・子育て支援法の情報公表
入園時上乗せ徴収に関する事項を重要事項説明書に記載して交付し、同意を得る特定教育・保育施設等の運営に関する基準 第5条
上乗せ徴収の開始前徴収する金銭の使途と額、支払を求める理由を明らかにして説明し、書面による同意を得る同基準 第13条
  1. 説明と同意に入れる内容

    付加的保育の内容、保育全体に位置づける意義、実施場所、実施時間、事故時の責任の所在、費用とその内訳、利用は任意であることです。いずれも書面を使って説明し、同意を得ます。

  2. 利用を必須と誤解させない

    上乗せ徴収をする場合、保護者が利用するかどうかを選べる余地があることが前提です。利用が必須であるかのような誤解を与えないよう求められています。

  3. 料金は保護者の負担に配慮する

    保護者の経済状況を理由に児童が参加できないことは望ましくないとされ、費用徴収の有無や料金設定は、保護者の経済的負担を十分に考慮して検討します。

付加的サービスは協議不要だが、保育所として体制を確かめる

保護者と事業者の直接契約による付加的サービスは、法令上禁止されていません。

内容が保育所保育指針を踏まえたこどもの健全な心身の発達に資するものなら、保育所を運営する事業者の判断で実施でき、市町村との協議による承認は不要です。

  1. 事業者の選び方

    保育所として在園児の安全を確保する必要があるため、安全確保に必要な体制を確保できない事業者との契約は適切でないとされています。契約前に実施体制を十分に確認します。

  2. 保育士の立ち会い

    付加的サービスの実施に保育士が立ち会うなどの対応を行うことが望ましいとされています。

  3. 補助金で整備した施設を使うとき

    補助金などで整備した施設を、本来の事業に支障を及ぼさない範囲で一時的に使う場合は、財産処分に当たらず承認手続は不要と、別紙2に注記されています。手続の全体像は補助を受けて整備した保育所の財産処分の承認にあります。

よくある質問

外部講師の英語教室は、付加的保育として認められますか。

個別の到達や達成を指導目標とする英語教室などのお稽古ごとに類する活動は、付加的保育で許容されない事例として挙げられています。内容が保育所保育指針の基本原則を逸脱しないかは、市町村との協議で確認します。

保護者が事業者と直接契約するなら、市町村への相談は要りませんか。

通知は、直接契約の付加的サービスについて、市町村との協議による承認は不要としています。ただし、市町村の運用や指導監査での確認事項は自治体で異なる場合があるため、始める前に保育担当課へ確認しておくと安全です。

付加的保育の費用を取ると、公定価格の試算は変わりますか。

上乗せ徴収は、公定価格で賄えない費用を賄うために保護者から徴収するものとして説明されています。このサイトの試算には含まれません。

自園の条件で試算する

定員と年齢別の園児数を入力すると、公定価格の基本分単価を試算します。付加的保育の上乗せ徴収は公定価格とは別の費用のため、試算の結果には含まれません。

公定価格の試算を開く

次に知りたいこと:実費徴収・上乗せ徴収は、公定価格の試算に含まれるか、実費徴収と補足給付、指導監査で確認される事項の一覧。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

    ほかの解説

    • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

      保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

      関連する理由:

    • 保育所の指導監査で確認される事項と関連記事の対応表

      こども家庭庁の標準監査調書(保育所)は、運営管理・保育内容・会計の3つの大分類で監査項目を整理しています。職員配置・安全計画・会計を中心に、監査調書の項目と本サイトの関連記事を対応させ、自己点検票の公定価格確認項目(保育所35項目)も載せました。

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    • 実費徴収・上乗せ徴収は、公定価格の試算に含まれるか

      実費徴収と上乗せ徴収は、公定価格(委託費)とは別に保護者から直接受け取る費用です。運営基準が定める2つの違いと、説明・同意・領収証の手続き、試算での扱いを説明します。

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    • 小規模保育事業C型の食事の提供方法・管理者・土曜日閉所の調整(別紙7の3項目)

      小規模保育事業C型の公定価格にある「食事の提供方法」「管理者を配置していない場合」「土曜日に閉所する場合」の3つの調整を、留意事項通知の別紙7から整理します。適用の要件、認定の主体、調整額の対象になる単価と、A型・B型との違いを確認できます。

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    「減算・報告・申請の期限を確認したいとき」の解説一覧へ