解説

保育所の不審者侵入への備え:安全計画・マニュアル・訓練

保育所の不審者対策は、児童福祉施設の基準の安全計画(第6条の3)と、令和4年12月15日の事務連絡、平成13年の通知の点検項目で整理できます。緊急時マニュアルの役割分担、不審者の侵入を想定した訓練、門・出入口・受付の点検、警察との連携を、原文に沿って確認します。

不審者対策の根拠は、安全計画の規定と国の事務連絡・通知の点検項目

保育所は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第6条の3により、安全計画を策定して実施する義務があります。不審者の侵入は、その計画の中で備える場面のひとつとして国の事務連絡に挙げられています。

省令の条文そのものには「不審者」の語はなく、設備の安全点検、施設外を含む安全に関する指導、職員の研修と訓練を計画に盛り込むことを定めています。

不審者の侵入を具体的に挙げているのは、厚生労働省子ども家庭局保育課の令和4年12月15日付の事務連絡「保育所等における安全計画の策定に関する留意事項等について」です。これとは別に、平成13年6月15日の雇児総発第402号通知が、児童福祉施設の安全確保の点検項目を示しています。通知は地方自治法に基づく技術的な助言です。

ここでの整理は国の文書の案内で、自園の防犯体制の適合判定ではありません

通知の点検項目は、実情に応じて追加・修正してよい標準的なガイドラインです。自園に求められる水準や自治体独自の指導は、所管の市区町村の保育担当課に確認してください。

安全計画を策定していない場合の公定価格の減算は『安全計画の未策定減算』で整理しています。この記事は、計画の中身のうち不審者の侵入に備える部分を扱います。

安全計画の条文:点検・指導・研修と訓練・保護者への周知・見直し

第6条の3は、計画に盛り込む内容と、実施の義務を4つの項に分けて定めています。

第1項は、設備の安全点検、施設外での活動を含む安全に関する指導、職員の研修及び訓練などについての計画を策定し、計画に従って必要な措置を講じることを求めています。

第2項は職員への計画の周知と、研修及び訓練の定期的な実施、第3項は保育所と児童発達支援センターについて、保護者への計画に基づく取組の内容等の周知、第4項は定期的な見直しと必要に応じた変更です。

安全計画の規定(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第6条の3、確認日 2026-10-15)
項定めの内容
第1項設備の安全点検、施設外の活動を含む安全に関する指導、職員の研修及び訓練などの計画を策定し、計画に従い必要な措置を講じる
第2項職員に計画を周知し、研修及び訓練を定期的に実施する
第3項保育所は、保護者に対し、計画に基づく取組の内容等を周知する
第4項定期的に計画を見直し、必要に応じて変更する

事務連絡は、第3項の周知について、家庭での安全教育を促すために、入園時等の機会に説明を行うなどの方法を挙げています。

事務連絡が求める3点:役割分担のマニュアル・侵入を想定した訓練・全職員の受講

事務連絡は、緊急的な対応が必要な場面として災害、不審者の侵入、火事(119番通報)を挙げ、役割分担の整理と掲示、保護者等への連絡手段の構築、地域や関係機関との協力体制の構築を求めています。

これらはマニュアルにより可視化し、常勤保育士だけでなく非常勤職員にも共有するものとされています。

訓練では、不審者の侵入を想定した実践的な訓練と、119番の通報訓練を行うことが挙げられ、研修や訓練は常勤保育士だけでなく非常勤職員も含め、保育所の全職員が受講することとされています。

令和4年12月15日の事務連絡にある、不審者の侵入に関わる記載(確認日 2026-10-15)
項目記載の内容
緊急時のマニュアル災害、不審者の侵入、火事(119番通報)を想定した役割分担の整理と掲示、保護者等への連絡手段、地域・関係機関との協力体制
共有の範囲マニュアルで可視化し、常勤保育士だけでなく非常勤職員にも共有する
訓練不審者の侵入を想定した実践的な訓練と、119番の通報訓練
受講する人研修や訓練は、非常勤職員も含め、保育所の全職員が受講する
未整備の場合緊急時の役割分担や保護者への連絡手段を定めるマニュアルが不十分なら、速やかに策定・見直しを行う

事務連絡の記載は例示で、地域や各園の特性に応じた独自の安全対策を妨げるものではないと、同じ文書に明記されています。

平成13年の通知の点検項目:日常の安全管理と、不審者が立ち入ったときの対応

平成13年の通知は、通所型の児童福祉施設向けの点検項目を、日常の安全管理と緊急時の安全確保に分けて示しています。

日常の項目には、来訪者用の入口・受付を明示して外部からの人の出入りを確認しているか、門・囲障・外灯・窓・出入口・避難口・鍵の状況を点検しているか、自動警報装置や防犯監視システムを設置している場合は作動状況の点検と警備会社等との連携体制を確認しているか、防災・防犯のための避難訓練等を実施しているか、が含まれます。

通所時については、児童の送迎は原則として保護者が行うべきことを徹底しているか、保護者以外の人が迎えに来る場合は原則としてその都度職員が保護者に確認しているか、も挙げられています。

緊急時の項目は、施設内に不審者が立ち入った場合の体制として、次の4点を挙げています。

直ちに職員が協力体制を取り、人身事故が起きないよう対応すること。

不審者に施設外への立ち退きを要求すること。

直ちに施設長を始め職員に情報を伝達し、児童への注意喚起、安全の確保、避難誘導を行うこと。

警察や市区町村の所管課、保護者等に直ちに通報すること。

施設の周辺で不審者の情報が入った場合は、職員間で状況認識を一致させて職員体制を確立し、児童・保護者に情報を提供して注意を喚起し、警察にパトロールを要請するなどの連携を図る体制を整えているか、が点検項目です。

この通知は、地域に開かれた施設づくりが危険に関する情報の収集や緊急時の支援にもつながるとして、むやみに施設開放に消極的にならないよう留意することも求めています。出入口の管理と施設開放は、両立させる考え方です。

自園で確かめる順序:計画・マニュアル・訓練・設備・連絡先

確かめる順序は、計画、マニュアル、訓練、設備の点検、連絡先の整備の順です。

これはこの記事での整理で、国の文書が順序を定めているわけではありません。

  1. 安全計画に不審者の侵入を想定した訓練が入っているかを見る

    年間の訓練予定に、侵入を想定した訓練と119番の通報訓練があるかを確認します。ないときは次回の見直しで追加する日程を決めます。

  2. 緊急時マニュアルの役割分担を、非常勤職員も読める形にする

    不審者の侵入時の連絡の順序、児童への注意喚起と避難誘導の担当、通報先、保護者への連絡手段を一枚にまとめ、職員室や保育室に掲示します。

  3. 門・出入口・受付・鍵・警報装置を点検し、記録する

    通知の点検項目に沿って、来訪者の入口が明示されているか、鍵や囲障に不具合がないか、警報装置が作動するかを確認し、日付と結果を残します。

  4. 警察署・市区町村の所管課・近隣の園への連絡先を整える

    不審者情報を受け取る窓口と、自園から通報する先を職員全員が分かる場所に書いておきます。送迎時の保護者以外の人の確認方法も、職員間でそろえます。

よくある質問

不審者対応は、省令で義務づけられていますか。

省令の条文に「不審者」の語はありません。第6条の3は、安全点検、安全に関する指導、職員の研修と訓練などの計画の策定と実施を義務づけています。不審者の侵入を想定したマニュアルと訓練は、令和4年12月15日の事務連絡がその計画の中で行うものとして示しています。

非常勤の職員にも訓練を受けてもらう必要がありますか。

事務連絡は、研修や訓練は常勤保育士だけでなく非常勤職員も含め、保育所の全職員が受講することとしています。勤務日の違う職員がいる園では、例えば同じ内容を複数回に分けるなど、全員が受けられる日程を検討します。

防犯カメラや警備会社の契約は必要ですか。

平成13年の通知は、設置している場合の点検を挙げるもので、設置自体を求める記載は確認できていません。自動警報装置や防犯監視システムを設置している場合に、作動状況の点検と警備会社等との連携体制を確認する、という書き方です。必要な設備は、自園の立地と自治体の指導に応じて、所管課に確認してください。

防犯の費用は公定価格で見込まれますか。

この記事で扱った文書には、防犯設備の費用を公定価格で見込む記載はありません。公定価格の加算や補助の対象になるかは、試算ツールの結果と、自治体の補助制度を別に確認してください。

次に知りたいこと:非常災害の訓練、重大事故、送迎バスの安全

毎月の避難・消火訓練の根拠は『保育所の非常災害対策と毎月1回の避難・消火訓練』、事故が起きやすい場面は『保育所の重大事故が起きやすい場面別の注意事項』、送迎用バスは『送迎用自動車の所在確認とブザー』で整理しています。

所在地、利用定員、年齢別の園児数を入力します。防犯設備や訓練の費用は、試算結果に含まれません。

利用定員を入れて公定価格を試算する

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