解説

療育支援加算の取組が一部できないときの要件の判断

療育支援加算のⅰ〜ⅴの取組が一部できなかったとき、年度途中から算定を始めたときの扱いを、公定価格FAQ(第32版)のNo.303〜314で説明します。実施時期の目安、市町村の総合的な判断、併行通園や連携先がない場合の考え方がわかります。

一部できなくても、全体で判断される。ただし全部やる前提で進める

公定価格FAQ(第32版)のNo.303は、療育支援加算のⅰ〜ⅴの取組を、すべての障害児に対して、いずれも実施する必要があるのかを問うています。

答えは、障害児全員を対象に取り組んだものの結果として一部の取組ができなかった場合でも、全体としてインクルージョンの推進が図られていると判断できる場合は、要件を満たすものとして扱うというものです。

ただし、これは最初から一部の取組をやらなくてよいという意味ではありません。FAQは、まず全ての取組を実施する前提で進めるよう求めています。

取組ができなかった事情に改善を求めるべき理由がある場合、市町村は必要な指導を行い、今後の取組の適正化を促すこととされています。

取組の内容や、専門職の月の時間数は、別の記事で説明しています。取組の一覧と区分の判定は療育支援加算の認定と区分の確認、専門職の時間の数え方は療育支援加算の専門職の時間の数え方を参照してください。この記事は、取組が計画どおりに進まないときの扱いだけを扱います。

FAQが事情を認めているのはⅴ。ⅰとⅳは災害等しか想定されていない

No.303は、ⅴの取組についても触れています。ⅴは児童発達支援センター等が実施する会議や研修への参加を求めていますが、センター等の都合で実施できない場合も考えられます。

こうしたやむを得ない事情があるときは、要件を満たすものとして扱って差し支えないとされています。

ⅰとⅳは、災害等の事情以外にやむを得ない事情を想定していない

No.303は、ⅰ及びⅳの取組について、災害等の事情以外にやむを得ない事情は想定していないと明記しています。人手が足りない、忙しいといった理由で、この2つを後回しにしてよいとは読めません。

ⅰとⅳは、年度の最初(年度途中から算定を始める場合は算定開始の月)に着手する取組として、計画の最初に置く。

取組ごとの実施時期の目安(月ごとの実施は求められていない)

No.304は、ⅰ〜ⅴの取組に月ごとに実施するなどの定めがあるかを問うています。答えは、ⅰ〜ⅴの取組は年度を通じて総合的に実施されていることを求めているもの、というものです。

そのうえで、取組ごとに満たすべき点が次のように示されています。

No.304が示す取組ごとの実施時期の目安
取組FAQが求めていること回数の定め
ⅰ(障害児の把握)チームで取り組む前提のプロセスなので、4月(年度途中から算定する場合は算定開始の月)から早々に実施する。その後は更新が必要になったときに適宜更新すれば足りる更新は必要が生じたとき
ⅱ・ⅲⅱの個別の指導計画・個別の支援計画の作成・見直しと、そのための会議等の開催を、学期ごとないし上半期・下半期ごとに適切に行う。前提となる保護者や障害児通所支援事業所等との連携は、日頃から障害児の様子などの状況を共有する計画の見直しは学期ごと・半期ごと。前提となる連携等について、一律に複数回の会議開催は求めない
ⅳ(家族への支援)①の体制の整備と③の保護者への周知は、4月(算定開始の月)から早々に実施する。②の子育ての悩みの解消や負担の軽減、発達状況や特性の理解につながる取組は、家族の状況を踏まえ、何をどう実施するかを施設内で検討したうえで必要な回数を行う一律の回数は求めない
ⅴ(地域の関係機関との連携)児童発達支援センター等の中核的な機関や地域のほかの保育所等と、会議や研修への参加を通じて密にコミュニケーションを取る一律の回数は求めない

表のⅱ・ⅲの行は、FAQが「ⅱ・ⅲについて」としてまとめて書いている内容です。FAQの文面は、ⅱの計画の作成・見直しと会議の時期を述べるもので、ⅲの内容を個別には説明していません。

時期が決まっているのは、ⅰとⅳの①③の早期実施と、ⅱの学期ごと・半期ごとの見直しです。それ以外は回数ではなく中身を検討したうえで実施する形です。

内容が不十分だったとき、年度途中から算定を始めたとき

No.305は、取組をしているものの内容が不十分と考えられた場合の扱いです。FAQは、市町村は頻度や内容だけでなく、施設が取組に向けてどのような検討をしていたかも含めて総合的に判断するよう求めています。

内容が不十分な取組があっても、即座に加算の要件に該当しないと判断するものではないとされています。

施設側にも求められることがあります。特定の回数をこなせば足りるわけではないため、取組の具体的な内容や頻度について、必要に応じて市町村等に説明できるようにしておくことです。

「検討している」は、あとから説明できる形にしておく

FAQは、検討過程を含めて市町村が総合的に判断するとしています。会議の記録や計画の下書きなど、検討したことが分かるものが無いと、説明を求められたときに示せません。

取組を予定どおり実施できなかったときは、その月に何を検討し、いつ実施する予定かを記録に残す。

No.306は、年度途中に算定を始めた場合に、ⅰ〜ⅴをすべて実施するのが難しいときの考え方です。一部ができない場合や不十分な場合の考え方は、No.303とNo.305のとおりとされています。

例として、1月に算定を始めた場合、個別の支援計画・指導計画の策定や見直しが年度内に行われないことも考えられます。その場合でも、翌年度の4月以降に向けた必要な検討がされている、その他の取組を十分に進めているといった状況であれば、要件を満たすことにして差し支えない、とされています。

専門職の有無で目標は変わらない。多くができない場合は通知の規定で対応

No.307は、主任保育士等を補助する者と専門職のどちらを配置等するかで単価は異なるものの、取り組む内容にほぼ違いがないことを確認する問いです。

答えは、お見込みのとおりです。専門職を活用する場合は、障害児保育に関する研修計画を作成し、障害児保育に関する園内研修を年1回以上開催することが必要になります。その他の取組の内容に差はありません。

FAQは、専門職の活用の有無で取組の内容や実施できる業務量に違いはあり得るとしつつ、利用する障害児に対する取組を、施設・事業所がチームとして進めることが肝要なので取組要件には差を設けなかったと説明しています。

また、すべての取組が十分にできている場合しか算定を認めない取扱いにはしていない、とも述べています。

No.308は、加算の認定を申請しているのに、やむを得ない事情もなく、取組の多くに適切に取り組んでいることも確認できないケースを扱っています。認定の取消しや返還措置が必要になるのかという問いに、FAQは「お見込みのとおり」と答え、そうしたケースについては、留意事項通知の第5の規定に基づき対応するとしています。

通知の第5の内容や、取消しや返還の具体的な手順は、FAQには書かれていません。

一覧表・計画・家族相談体制・併行通園・連携先がない場合の扱い

No.309〜314の問いと答えの要点
FAQ問い答えの要点
No.309取組ⅰの一覧表に載せる障害児をどう判断するか保育所の場合は、各市町村が行う障害児保育に係る加配の対象になる利用子ども(地域型保育事業の場合は障害児保育加算の対象になる利用子ども)や、障害児通所支援等を利用していることを把握している利用子どもを一覧表に載せる。日々の保育の中での気づきや、ⅳの相談があったときに新たに加える方法も考えられ、施設が適宜判断する
No.310ⅱの個別の支援計画・指導計画とは何か。所定の様式はあるか「障害のある幼児と共に育つ生活の理解と指導」(令和5年3月文部科学省、厚生労働省、内閣府作成)の個別の教育支援計画・個別の指導計画を指す。様式の定めはなく、施設で独自に作成してよい。市町村が様式を示している場合はそれに従う
No.311ⅳの家族からの相談を受け付ける体制とは何か保護者が発達の遅れ等からくる子育ての難しさなどを相談したいときの相談先と、相談を受け付ける流れを定めておくこと。専門職だけでなく、クラス担任の保育士等と一緒に対応するなど、施設全体で家庭の困りごとへの対応力が高まる工夫をする
No.312併行通園している障害児が障害児通所支援事業所等を利用していない場合は対象にならないか他の要件を満たす場合は、通知の「イ 障害児通所支援事業所等との連携強化を図る」が実施されていなくても、加算の要件を満たす
No.313連携先の児童発達支援センター等が地域にない場合はどうするか連携が想定されているのは地域の障害児支援の中核的な機関で、児童発達支援センター等のほか、特別支援学校小学部や幼児教育支援センターなども該当することが想定される。そうした機関もない場合は、市町村の障害福祉課等がその機能を担っていることも考えられる
No.314小規模保育事業所等で、障害児保育加算を受けている必要はあるか必要ない

No.313が示すのは、連携先に当たる機関の例です。具体的な連携先を決めるものではありません。実際の連携先は、所在地の市町村に確認してください。

確認の順序と、この記事が判断しない範囲

ⅰとⅳの早期実施、ⅱの定期見直し、検討の記録、連携先の確認の順に整えます。

  1. 算定開始の月に、ⅰとⅳの①③を実施する

    対象の障害児の一覧、家族の相談先と受付の流れ、保護者への周知を、最初の月に済ませます。

  2. ⅱの計画の見直し時期を決める

    学期ごと、または上半期・下半期ごとに、計画の作成・見直しと会議を行う予定を組みます。

  3. ⅳの②とⅴの実施内容を施設内で検討する

    回数ではなく、何をどう実施するかを検討し、その過程を記録に残します。

  4. 連携先と、できなかったときの事情を市町村に確認する

    連携先に当たる機関の有無を、所在地の市町村に確認します。

この記事は、公定価格FAQ(第32版、令和8年7月24日時点)のNo.303〜314にある内容の整理です。個別の施設について、要件を満たすかどうかを判定するものではありません。

取組が不十分かどうか、事情が改善を求めるべきものかどうかは、市町村が判断します。自園の状況は、所在地の市町村に確認してください。

よくある質問

一部できない場合、年度途中の開始、併行通園の3点が、よく聞かれます。

取組が一部できなかったら、加算の要件を満たさなくなりますか。

No.303では、障害児全員を対象に取り組んだものの結果として一部ができなかった場合でも、全体としてインクルージョンの推進が図られていると判断できるときは、要件を満たすものとして扱うとされています。ただし、全ての取組を実施する前提で進めることが求められ、ⅰとⅳは災害等の事情以外にやむを得ない事情は想定されていません。

年度の途中から算定を始めた場合も、取組を全部実施する必要がありますか。

No.306では、一部ができない場合や不十分な場合の考え方はNo.303とNo.305のとおりとされています。1月に算定を始めて年度内に計画の策定や見直しが行われなくても、翌年度4月以降に向けた必要な検討がされていれば、要件を満たすことにして差し支えないという例が示されています。

併行通園している障害児が、障害児通所支援事業所等を利用していない場合は、加算の対象外ですか。

No.312では、他の要件を満たす場合は、障害児通所支援事業所等との連携強化が実施されていなくても、加算の要件を満たすとされています。

自園の条件で試算する

療育支援加算の認定済みの区分を選んで、加算額を確認できます。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

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ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」2件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

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