解説

保育園の職員の賃金の支払(全額払・毎月1回以上・休業手当・賃金台帳)

民間の保育園が職員へ給与を支払うときの決まりを、労働基準法第24条・第26条・第107条〜第109条から整理します。給与から控除できる場合、休業手当の下限、賃金台帳と労働者名簿の作成・保存を確認できます。

賃金は、通貨で、直接、全額を、毎月1回以上、一定の期日に支払う

労働基準法第24条第1項は、賃金を通貨で、直接労働者に、その全額を支払うよう定めています。

同条第2項は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うよう定めています。

原則は、通貨・直接・全額・毎月1回以上・一定期日の5点です。

賃金の支払の定め(労働基準法第24条、確認日 2026-10-17)
項目条文の内容
通貨払通貨で支払う。法令・労働協約の別段の定め、または省令が定める確実な方法による場合は例外
直接払労働者本人に直接支払う
全額払賃金の全額を支払う。法令の別段の定め、または書面の労使協定がある場合は一部を控除できる
毎月1回以上・一定期日毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う。臨時に支払われる賃金や賞与など省令が定めるものは除く

この記事は、労働基準法が適用される民間の保育園などの職員が対象です。公立保育所の職員の給与は、地方公務員法などの別の法令で定まるため、所属の自治体に確認します。

給与から引けるのは、法令の定めか、書面の労使協定がある項目

第24条第1項ただし書は、賃金の一部を控除して支払える場合を、法令に別段の定めがあるとき、または書面の労使協定があるときに限っています。

事業場の過半数の労働者で組織する労働組合、組合がなければ過半数を代表する者との書面の協定が、控除の条件です。

控除の項目は、園の都合で決められない

法令の定めがない項目の控除は、書面の労使協定が前提です。協定がないまま、制服代や行事の費用などを給与から差し引くと、全額払の定めに触れるおそれがあります。条文は控除できる項目を挙げていないため、個別の項目が当たるかはこの記事では判断できません。

給与から差し引いている項目を一覧にし、法令の根拠か、書面の労使協定のどちらで支えているかを項目ごとに確認します。判断に迷う項目は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談します。

園の都合で職員を休ませたときは、平均賃金の6割以上の手当が必要

労働基準法第26条は、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合に、休業期間中、使用者が労働者へ平均賃金の100分の60以上の手当を支払うよう定めています。

下限は6割で、園が上乗せすることは妨げられません。

どのような休業が使用者の責めに帰すべき事由に当たるかは、条文だけでは決まりません。園児数の減少による職員の休業日の設定などが当たるかは、個別の事情で判断されるため、この記事では判定しません。平均賃金の計算は第12条にあり、この記事では扱いません。

賃金台帳と労働者名簿は、事業場ごとに作り、当分の間は3年間保存する

第108条は、使用者が事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項や賃金の額などを、賃金の支払のたびに遅滞なく記入するよう定めています。

第107条は、労働者名簿を事業場ごとに調製し、氏名や生年月日、履歴などを記入して、変更があれば遅滞なく訂正するよう定めています。

園が備える書類(労働基準法第107条〜第109条、確認日 2026-10-17)
書類条文の内容保存
賃金台帳事業場ごとに調製。賃金計算の基礎となる事項と賃金の額などを、支払のたびに遅滞なく記入(第108条)当分の間は3年間(第109条の本文は5年間。附則第143条第1項)
労働者名簿事業場ごとに調製。日々雇い入れられる者を除く各労働者の氏名・生年月日・履歴などを記入(第107条)当分の間は3年間(第109条の本文は5年間。附則第143条第1項)
雇入れ・解雇・賃金など労働関係の重要な書類第109条に挙がる書類当分の間は3年間(第109条の本文は5年間。附則第143条第1項)

第109条の本文は5年間ですが、附則第143条第1項が、当分の間は「五年間」を「三年間」と読み替えると定めています。

条文の単位は事業場です。複数の園を運営する法人で、どの単位が事業場に当たるかは、労働基準監督署に確認します。

園で確認しておく順序

  1. 給与の支払日と支払方法を、就業規則と実際で照らす

    毎月1回以上、一定の支払日があるか、本人に直接支払う形になっているかを見ます。支払日が月によってずれていないかも確かめます。就業規則の作成は保育園の就業規則の作成と届出で整理しています。

  2. 給与から控除している項目に、根拠があるかを確認する

    法令の定めか、書面の労使協定のどちらで支えているかを項目ごとに書き出します。協定の有無と有効期間も見ます。

  3. 休業にした日の扱いを、園の規程で決めておく

    園の都合で職員を休ませた日がある場合は、休業手当の支払の有無と金額を、記録とともに確認します。

  4. 賃金台帳と労働者名簿が、園ごとにそろっているかを確認する

    賃金の支払のたびに記入されているか、変更が訂正されているかを見ます。割増賃金の計算に使う項目は保育園の割増賃金で整理しています。

次に知りたいこと:割増賃金、就業規則、変形労働時間制

賃金の支払を押さえたら、残業代の計算、就業規則の定め、勤務時間の組み方の順に確認します。

時間外・休日・深夜の割増の率は保育園の割増賃金、勤務時間を月や年の単位で組む仕組みは保育園の変形労働時間制で整理しています。

よくある質問

給与日が休日のとき、翌営業日に払ってもよいですか。

第24条第2項は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うよう求めています。支払日が休日にあたるときの扱いは、条文からは決まらないため、労働基準監督署に確認します。

職員の同意があれば、給与から何でも差し引けますか。

条文は、法令の定めか書面の労使協定を条件にしています。個別の同意だけで足りるかは、条文だけでは決まらないため、労働基準監督署や社会保険労務士に確認します。

休業手当は、必ず平均賃金の6割ですか。

第26条が定めるのは、平均賃金の100分の60以上という下限です。使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合が対象です。

この記事で、自園の給与の支払が適法か判定できますか。

できません。この記事は、法令の定めを整理したものです。個別の園の給与の支払は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認します。

公定価格を試算する

所在地、利用定員、年齢別の園児数を入力します。職員の給与の支払方法は、試算結果に含まれません。

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