職員間のハラスメントは、4種類それぞれに園の措置義務が法律にある
事業主は、職場で起きる次の4種類の言動によって職員の就業環境が害されないよう、相談に応じ適切に対応する体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じる義務があります。
4種類とも、条文の組み立ては同じで、事業主に措置を求め、相談した職員への不利益取扱いを禁じています。
| 種類 | 根拠条文 | 条文が扱う言動 |
|---|---|---|
| パワーハラスメント | 労働施策総合推進法第31条第1項 | 職場で行われる優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの |
| セクシュアルハラスメント | 男女雇用機会均等法第11条第1項 | 職場で行われる性的な言動への対応による労働条件の不利益、または性的な言動による就業環境の悪化 |
| 妊娠・出産等に関するハラスメント | 男女雇用機会均等法第15条第1項 | 職場で行われる、女性労働者の妊娠・出産・産前産後休業の請求や取得、その他厚生労働省令で定める事由に関する言動 |
| 育児休業等に関するハラスメント | 育児・介護休業法第25条第1項 | 育児休業、介護休業など、子の養育や家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度・措置の利用に関する言動 |
この記事は、民間の保育園などの職員が対象です。保護者など園の外の人からの言動による問題は、別の定めがあります。公立保育所の職員は、所属の自治体に確認します。
パワーハラスメントの条文は、3つの要素で言動を限っている
労働施策総合推進法第31条第1項が対象にするのは、職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、職員の就業環境が害されることです。
業務上必要かつ相当な範囲の指導は、この条文の対象になりません。
どの言動が当たるかは、個別の事情で判断されます。この記事では、園内の個別の言動が当たるかは判定しません。
迷う相談も、受けつける
厚生労働省の指針は、ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、そのおそれがある場合や、該当するか微妙な場合でも、広く相談に対応するよう求めています。
指針は、窓口の担当者が相談者の心身の状況や受け止めに配慮しながら対応するよう求めています。事実の確認は、次の「事後の対応」の段階で行います。
指針が求める4つの措置:周知・相談体制・事後対応・不利益取扱い等
厚生労働省のパワーハラスメント防止の指針は、事業主が講じる措置を4つにまとめています。
ここでは、パワーハラスメントの指針の記載を整理します。セクシュアルハラスメント、妊娠・出産等、育児休業等については、それぞれ別の指針があるため、園の対応を決める前に各指針を確認します。
措置は、予防から再発防止まで一連のものとして講じます。
| まとまり | 指針の内容 |
|---|---|
| 1 方針の明確化と周知・啓発 | ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確にして職員へ周知する。行った者には厳正に対処する旨の方針と対処の内容を、就業規則などの服務規律の文書に定めて管理監督者を含む職員へ周知する |
| 2 相談に応じる体制の整備 | 相談窓口をあらかじめ定めて職員へ周知する。担当者が相談の内容や状況に応じて適切に対応できるようにする |
| 3 事後の迅速かつ適切な対応 | 事実関係を迅速かつ正確に確認する。確認できたときは、被害を受けた職員への配慮と、行った者への措置を行う。確認できなかった場合も含め、方針を改めて周知するなど再発防止の措置を講じる |
| 4 併せて講じる措置 | 相談者・行った者などのプライバシーを守るために必要な措置を講じて周知する。相談したこと等を理由に解雇その他不利益な取扱いをしない旨を定めて周知する |
指針の具体例(窓口の置き方、聞き取りの方法など)は、「認められる例」として挙げられています。園の規模に合う方法は、労働局や社会保険労務士に確認します。
相談した職員や、調査に協力した職員への不利益取扱いは、条文が禁じている
労働施策総合推進法第31条第2項、男女雇用機会均等法第11条第2項・第15条第2項、育児・介護休業法第25条第2項は、職員が相談を行ったこと、または事業主による相談への対応に協力して事実を述べたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定めています。
相談した職員だけでなく、聞き取りに協力して事実を述べた職員も、この定めの対象です。
また、労働施策総合推進法第32条第2項は、事業主が、職員の関心と理解を深め、職員が他の職員への言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするよう努めると定めています。
同条第3項は、事業主(法人の場合は役員)が自らも、言動に必要な注意を払うよう努めることを定めています。
男女雇用機会均等法第12条にも、セクシュアルハラスメントについて同様の定めがあります。
園で確認しておく順序
ハラスメントを行ってはならない方針を、文書にして周知する
園長や理事長の名前で方針を文書にし、職員が見られる場所へ掲示するか配布します。4種類のどれも対象にするかを、方針の文面で確かめます。
行った者への対処を、就業規則などの文書に書く
懲戒の定めがある場合は、ハラスメントに係る言動が対象になることを明確にします。就業規則の作成は保育園の就業規則の作成と届出で整理しています。
相談窓口を決めて、職員に知らせる
担当者の名前、相談の方法、外部の機関に委ねる場合はその名称を、職員へ周知します。パートや短時間の職員にも届く形かを確かめます。
申出があったときの流れと、記録の置き場所を決めておく
事実の確認、被害を受けた職員への配慮、行った者への措置、再発防止の順を決めます。相談者や行った者のプライバシーを守るため、記録を見られる人を限ります。
次に知りたいこと:保護者からのハラスメント、育児休業、就業規則
職員間のハラスメントを押さえたら、保護者など外部からの言動、育児休業の制度、就業規則の定めの順に確認します。
保護者など顧客等からの言動は保育園のカスタマーハラスメント対策の義務化、育児休業の申出と拒める範囲は保育園の職員の育児休業、産前産後の休業は保育園の職員の産前産後休業と育児時間で整理しています。
よくある質問
- 職員が数名の小さな園でも、相談窓口は必要ですか。
条文は、事業主に相談に応じ適切に対応するための体制の整備その他の措置を求めており、園の規模による除外を設けていません。窓口の形は、担当者を決める、外部の機関に委ねるなどの例が指針にあります。
- 園長からの強い指導は、すべてパワーハラスメントになりますか。
なりません。条文の対象は、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動です。個別の言動が当たるかは、事情によって判断が分かれるため、この記事では判定しません。
- 相談したのに事実が確認できなかったときは、何もしなくてよいですか。
指針は、ハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合も、方針を改めて周知するなどの再発防止の措置を講じるよう求めています。
- この記事で、自園の対応が適法か判定できますか。
できません。この記事は、法令と指針の定めを整理したものです。個別の園の対応や個別の事案は、労働局や社会保険労務士に確認します。
公定価格を試算する
所在地、利用定員、年齢別の園児数を入力します。職員間のハラスメント防止の措置は、試算結果に含まれません。
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