この記事が答えること:残業や休日・深夜の勤務に、いくら上乗せして払うか
労働基準法第37条は、使用者が労働時間を延長したり、休日に労働させたりしたときは、通常の賃金の計算額に一定の率を上乗せした割増賃金を払うことを定めています。
深夜(午後10時から午前5時まで)に働かせたときも、同じく割増賃金が必要です。
保育園でも、延長保育の後の片づけや行事の準備で法定労働時間を超えたり、夜の勤務が出たりすれば、割増賃金の支払いが必要です。
割増賃金を払わなかった場合、第119条第1号が、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金を定めています。
残業を認める手続きは36協定の締結と届出で整理しています。
この記事は、協定を結んだ後に出る賃金の計算の側を説明します。
この記事は、条文と厚生労働省の資料の整理です。自園の手当が基礎に入るか、固定残業代の定め方が有効かなどの個別の判断はできません。迷うときは、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
割増の率:時間外・休日・深夜で決まっている
厚生労働省の神奈川労働局のリーフレットは、割増の率を次のように整理しています。
時間外労働は、法定時間(1日8時間・週40時間)を超えたときで、2割5分以上です。
休日労働は、法定休日(週1日)に働かせたときで、3割5分以上です。
深夜労働は、午後10時から午前5時までの間に働かせたときで、2割5分以上です。
| 種類 | 支払う条件 | 割増率 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 法定時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 2割5分以上 |
| 時間外労働(1か月60時間を超えた部分) | 第37条第1項ただし書 | 5割以上(中小企業も2023年4月1日から) |
| 休日労働 | 法定休日(週1日)に労働させたとき | 3割5分以上 |
| 深夜労働 | 午後10時から午前5時までの間に労働させたとき | 2割5分以上 |
リーフレットは、時間外労働が深夜までかかった場合、時間外の割増賃金と深夜の割増賃金をそれぞれ払うと説明しています。
例として、1時間あたりの賃金が1,500円の人に13時から23時まで(うち休憩1時間)働かせた場合、22時から23時までは時間外かつ深夜になります。
この1時間は、1,500円に1.5(時間外の1.25と深夜の0.25)を掛けた2,250円です。
時間外と深夜が重なる時間は、2つの割増を足した率になります。
「所定の勤務時間を超えた分」と「法定の時間を超えた分」を混同しない
割増の2割5分は、法定時間(1日8時間・週40時間)を超えた部分が対象です。園の所定労働時間が7時間なら、7時間から8時間の間は法定時間内であり、この部分に2割5分の割増は条文上は求められません。ただし、就業規則で園が有利に定めていれば、その規定が優先されます。
就業規則や賃金規程で、所定を超えた分をどう扱うかを確かめ、法定を超えた分は2割5分以上で計算します。
1時間あたりの賃金の出し方:月給をその月の所定労働時間で割る
割増賃金は、1時間あたりの賃金額に、残業や休日・深夜の時間数と割増率を掛けて出します。
労働基準法施行規則第19条は、月によって定められた賃金は、月における所定労働時間数(月によって違うときは1年間の1か月平均)で割った金額とすると定めています。
日給の場合は1日の所定労働時間数、時給の場合はその金額そのものが基準です。
月給制の人は、月給を、月の所定労働時間で割った金額が1時間あたりの賃金です。
1か月の平均所定労働時間を出す
リーフレットの例は、(365日-年間休日の日数)×1日の所定労働時間÷12です。年間休日が125日で1日8時間なら、(365-125)×8÷12で160時間です。
月給を平均所定労働時間で割る
月給24万円なら、240,000円÷160時間で、1時間あたりの賃金は1,500円です。月給には、基本給のほか、後述の除外できる手当を除いた各種手当を含めます。
時間数と割増率を掛ける
時間外が10時間なら、1,500円×1.25×10時間で18,750円です。実際の率は、時間外・休日・深夜のどれに当たる時間かで変わります。
基礎に入れる賃金と、除ける7種類の手当
厚生労働省のQ&Aは、割増賃金の計算の基礎になる賃金を、原則として通常の労働時間または労働日の賃金、つまり所定内労働時間内に働いたときに支払われる賃金としています。
そのうえで、基礎から除くのは次の7種類だけです。
労働基準法第37条第5項と施行規則第21条が根拠です。
| 番号 | 除外できる賃金 |
|---|---|
| 1 | 家族手当 |
| 2 | 通勤手当 |
| 3 | 別居手当 |
| 4 | 子女教育手当 |
| 5 | 住宅手当 |
| 6 | 臨時に支払われた賃金 |
| 7 | 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 |
リーフレットは、これ以外の賃金は全て基礎に入れると説明しています。
職務手当や役職手当、資格手当などは、この7種類に当たらないため、基礎に入ります。
また、1から5の名前の手当でも、扶養家族の人数や実際の通勤費、家賃の金額に関係なく一律で払う場合は、基礎に入ると説明しています。
手当は名前ではなく、払い方で基礎に入るかが決まります。
手当の名前だけで基礎から外してはいけない
手当の名前だけを理由に割増賃金の基礎から外すと、不足が出るおそれがあります。7種類に当たらない手当は、基礎に入れる必要があります。
賃金規程の手当を1つずつ、7種類のどれに当たるか、払い方が実態に合うかを確かめます。迷う手当は、所轄の労働基準監督署に確認します。
固定残業代を使うときに守ること
リーフレットは、固定残業代を、一定時間分の時間外・休日・深夜の労働に対して定額で払う割増賃金と説明しています。
固定残業代を採用するには、就業規則などに何時間分の固定かを明記する必要があります。
実際に働いた時間より固定分が少ないときは、差額を追加で払わなければなりません。
リーフレットの例では、月20時間分の固定残業代を払う会社で、ある人が25時間の時間外労働をした場合、20時間分の固定残業代のほかに5時間分の割増賃金を加えて払います。
固定残業代を払っていても、時間の記録は必要です。
勤務の時間は、月ごとに数えて残しておきます。
よくある質問
- パートやアルバイトにも、割増賃金は必要ですか。
必要です。条文は、雇用の形態で区切っていません。パートやアルバイトでも、法定労働時間を超えたり、法定休日や深夜に働いたりすれば、割増賃金が必要です。
短時間勤務の職員は、所定労働時間が短いため、法定時間を超える場面は少ないですが、深夜に及ぶ勤務があれば深夜の割増が出ます。
- 管理職の園長にも、割増賃金は払いますか。
第41条は、監督または管理の地位にある者に、労働時間・休憩・休日の規定を適用しないとしています。
これに当たるかは、役職名ではなく実態で判断されます。実態が管理の地位に当たらない園長は、この除外を受けられない場合があります。
この記事は、管理監督者の深夜の割増賃金の扱いは説明していません。迷うときは労働基準監督署に確認してください。
- 休憩時間の扱いは、どこで確かめますか。
休憩時間の与え方と、時間外労働の上限の考え方は休憩時間と時間外労働の上限にあります。割増賃金を払うかは、その時間が労働時間に当たるかで変わるため、迷う場合は労働基準監督署に確認してください。
試算ツールで人件費の見込みを考える前に
試算ツールは、公定価格のモデル計算をします。職員の残業代や割増賃金の支払い額は計算しません。
公定価格の試算結果を見る試算結果は、売上や利益、給付の支給を保証するものではありません。次に知りたいこと:36協定と時間外労働の上限、変形労働時間制の要件、年次有給休暇の付与と年5日の取得。