解説

保育士の一斉退職防止に向けた職場環境の改善(令和6年4月17日の事務連絡の内容)

保育士の一斉退職の報道を受け、こども家庭庁が令和6年4月17日に出した事務連絡は、職場環境の改善として巡回支援事業等の活用と、保育内容の自己評価の活用を挙げています。事務連絡の原文に沿って、2つの柱、対象となる施設、自治体と園それぞれに求められていることを整理します。公定価格には触れていない事務連絡です。

国が挙げている職場環境の改善は2つ(巡回支援事業等の活用と自己評価の活用)

令和6年4月17日、こども家庭庁成育局保育政策課は、都道府県・指定都市・中核市の保育所・認定こども園等の主管部(局)へ事務連絡を出しました。

事務連絡が挙げている取組は、保育所等における巡回支援事業等の活用と、保育内容の自己評価の活用の2つです。

昨年来、保育士の一斉退職に関する報道が繰り返されていることを背景に、一斉退職の防止に向けて職場環境の改善が重要だと考えている、と書かれています。

この事務連絡は、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言と書かれています。宛先は自治体で、自治体から域内の市町村や保育所等へ周知するよう求めています。保育所等とは、保育所、小規模保育事業所、事業所内保育事業所、認定こども園をいうと定義されています。

巡回支援事業等の活用(自治体が使う事業)

事務連絡は、保育士の離職防止と勤務環境の改善のため、施設の外から保育現場の不安に寄り添う支援を広げることが重要としています。

挙げられている事業は、「保育士や保育事業者等への巡回支援事業」と「保育士・保育の現場の魅力発信事業」の2つです。

各都道府県・市町村に、各事業の積極的な活用の検討を求めています。

事務連絡が挙げている2つの事業
事業事務連絡に書かれた活用の例
保育士や保育事業者等への巡回支援事業保育士や保育事業者を巡回して支援し、保育所等の勤務環境の改善に関する助言または指導を行う。組織的な保育士の不安感等の軽減に向けた体制づくり等に役立てる
保育士・保育の現場の魅力発信事業各自治体に心理職や社会保険労務士等を配置し、人間関係、労働条件、組織運営等に関する相談支援を行う相談窓口を設置する。保育士が各自治体に相談しやすい体制を整える

事務連絡は、これらの事業を使うかどうかの検討を自治体に求めるものです。自園が支援を受けられるかどうか、相談窓口があるかどうかは、所在地の都道府県・市町村の保育主管課に確認してください。

保育内容の自己評価の活用(園が行う取組)

事務連絡は、日々の保育を定期的に振り返り、保育士・保育教諭どうしで率直に話せる場を設けることを、重要な取組としています。

理由として挙げられているのは、保育の改善・充実のほか、風通しのよい職場環境づくりと職員間の相互理解を深めることです。

その相互理解の機会として、保育所等では保育内容の自己評価を積極的に活用するよう求めています。

自己評価は、「保育所における自己評価ガイドライン(2020年改訂版)」を踏まえて行うことが望ましいとされています。

現状や課題を多角的・客観的に把握するため、第三者評価や公開保育・研修の機会等を活用した「開かれた取組」を通じて、自己評価を充実させていくことが考えられる、と書かれています。

保育所の自己評価の義務と外部評価の位置づけは、保育所の業務の質の評価(自己評価の義務と外部評価・結果の公表の努力義務)で整理しています。

自治体と園で、求められていることの違い

自治体には事業と研修の活用の検討、保育所等には自己評価の積極的な活用が求められています。

宛先ごとの違いを表にしました。

事務連絡で求められていること(宛先ごと)
宛先求められていること
都道府県・市町村巡回支援事業等の積極的な活用の検討。保育所等が自己評価の取組を積極的に実施できるよう、研修等の機会を活用した取組の検討
保育所等保育内容の自己評価の積極的な活用。自己評価ガイドライン(2020年改訂版)を踏まえた実施が望ましい

事務連絡が挙げているのは国の考え方で、園の義務を新たに定めたものではない

事務連絡は、技術的助言として取組の方向を示しています。自己評価そのものの義務は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の別の規定にあります。詳しくは保育所の業務の質の評価を参照してください。

自園に求められる自己評価の範囲や頻度は、所在地の条例と市町村の指導で確認する。支援事業を使いたいときは、市町村の保育主管課に実施の有無を問い合わせる。

よくある質問

この事務連絡で、保育士の一斉退職を防ぐための義務が園に加わりましたか。

事務連絡に新しい義務の記載はありません。自治体には事業の活用の検討、保育所等には自己評価の積極的な活用を、技術的助言として求めています。

巡回支援事業や相談窓口は、どこで受けられますか。

事務連絡は、都道府県・市町村に各事業の活用の検討を求めています。実施の有無や申込みの方法は自治体ごとに異なるため、所在地の保育主管課に確認してください。

この取組は公定価格の試算に関係しますか。

事務連絡は公定価格には触れていません。この試算ツールは公定価格(委託費)の算定のみを行い、事務連絡の取組は試算に含めていません。公定価格と別建ての国の補助事業の一般的な一覧は、公定価格と別建ての国の補助事業一覧にあります(この2事業は載せていません)。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事は、令和6年4月17日の事務連絡の本文に書かれた範囲だけを扱います。参考資料(事業の概要、モデルケース)の中身は転記していません。その後の改正の有無は確認していません。

次に知りたいこと:保育所の業務の質の評価(自己評価の義務と外部評価・結果の公表の努力義務)、第三者評価受審加算の試算(3月分・利用子ども数)、公定価格と別建ての国の補助事業一覧

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由:

  • 保育所等の障害のあるこどもの受入れと不当な差別的取扱い(令和6年12月5日の事務連絡)

    令和6年12月5日のこども家庭庁の事務連絡は、保育所等での障害のあるこどもの受入れについて、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしないよう求めています。不当な差別的取扱いの例、正当な理由を判断する観点、保護者への説明、別紙に挙げられた国の支援策を、事務連絡の原文に沿って整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力

  • 保育所の食事の提供ガイドラインの統合先(令和7年9月のガイド)

    保育所の食事の提供について国が示す手引きは、令和7年9月に「児童福祉施設等における食事の提供ガイド」へまとめ直されました。平成22年のガイドと平成24年の保育所向けガイドラインを統合したものです。ガイドと概要資料の原文に沿って、統合の中身、第1部・第2部の構成、自園調理と外部搬入の章、対象となる事業を整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力

  • 省力化投資促進プラン―保育―(令和7年6月13日)の6業務・省力化レベル・目標

    こども家庭庁が令和7年6月13日にまとめた「省力化投資促進プラン―保育―」は、保育所のICT導入などの省力化を進めるための計画です。プランの概要と本文に沿って、取り上げられた6つの業務、省力化レベルの考え方、ICT導入の支援策、令和8年度と令和11年度の目標を整理し、保育ICT推進加算との関係も確認します。

    関連する理由: 共通する試算入力

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