解説

保育所等の障害のあるこどもの受入れと不当な差別的取扱い(令和6年12月5日の事務連絡)

令和6年12月5日のこども家庭庁の事務連絡は、保育所等での障害のあるこどもの受入れについて、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしないよう求めています。不当な差別的取扱いの例、正当な理由を判断する観点、保護者への説明、別紙に挙げられた国の支援策を、事務連絡の原文に沿って整理します。

障害を理由に保育時間や受入年齢へ一律の差を設けることは適当でない

令和6年12月5日、こども家庭庁成育局保育政策課は、都道府県・指定都市・中核市の保育主管部(局)へ事務連絡を出しました。

事務連絡は、単に障害を理由として一律に保育時間や受入年齢の取扱いに差異を設けるといった対応は適当ではない、としています。

背景として、保育所等における障害のあるこどもの受入れ数が約9万人で、10年前と比べて約2倍になっていることを挙げています。

事務連絡は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号、以下「障害者差別解消法」)に基づく対応を徹底するよう求めるものです。宛先は自治体で、都道府県から管内市町村・保育所等へ周知するよう求めています。自園の取扱いの適否は、事案ごとの判断になるため、所在地の市区町村に確認してください。

不当な差別的取扱いに当たるとして挙げられている例

事務連絡は、不当な差別的取扱いの例として、受入れに関する2つを挙げています。

いずれも、正当な理由なく、障害を理由として行うことが問題とされています。

事務連絡が挙げている例
例内容
保育の提供の拒否・制限正当な理由なく、障害を理由として、保育の提供を拒否する、または提供に当たって場所・時間帯などを制限すること
保育標準時間の差正当な理由なく、障害を理由として、保育標準時間の取扱いに差異を設けること

自治体に対しては、こうした不当な差別的取扱いをしている条例・規則等の規定がないかの確認を含め、同法に基づく対応を徹底するよう求めています。

自治体に求められている確認の対象には、条例・規則等の規定が含まれています。

「正当な理由」があるかは、個別の事案ごとに判断する

事務連絡は、正当な理由の判断について、個別の事案ごとに、具体的な場面や状況に応じて総合的・客観的に判断するよう求めています。

判断の観点として例に挙げられているのは、安全の確保、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止などです。

制限や差を設けることに正当な理由があると判断した場合は、障害のあるこどもや保護者に、丁寧かつ具体的にその理由を説明し、理解を得るように努めるよう求めています。

事務連絡の参考2(こども家庭庁所管事業分野の対応指針の抜粋)には、より詳しい考え方が載っています。

正当な理由に相当するのは、取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われ、その目的に照らしてやむを得ないといえる場合とされています。判断では、障害者、事業者、第三者の権利利益(安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)の観点に鑑みるとされています。

不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、問題となる事業に本質的に関係する諸事情が同じ障害のない者より、障害者を不利に扱うこととされています。

障害者を優遇する取扱い(積極的改善措置)や、合理的配慮の提供による異なる取扱いは、不当な差別的取扱いには当たらないとも書かれています。

「正当な理由」を広げて読むと、法の趣旨を損なうおそれがある

対応指針の抜粋は、正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに判断する必要がある、と書いています。

制限や差を設ける場合は、そのこどもの状況に即して、上の観点のどれに当たるかを書き出して検討し、保護者へ具体的に説明する。判断に迷うときは、所在地の市区町村の保育主管課に相談する。

別紙に挙げられた国の支援策(名前と対象)

事務連絡の別紙は、保育所等における障害のあるこどもに対する国の支援策を8つ挙げています。

この記事の整理では、8つのうち公定価格の加算に当たるのは、療育支援加算、障害児保育加算、処遇改善等加算Ⅱの3つです。ただし障害児保育加算は地域型保育事業所が対象で、保育所は対象外と書かれています。

補助単価は令和6年度の額で書かれているため、この記事には転記しません。

別紙の国の支援策(令和6年12月時点の記載)
支援策事務連絡に書かれた内容
障害児保育に係る地方交付税措置障害児保育に要する経費は地方交付税で措置。市区町村には、概ね障害児2名に対し保育士1名の配置を標準とするようお願いしている
療育支援加算主任保育士専任加算の対象で、障害児を受け入れている施設が、地域住民等の子どもの療育支援に取り組む場合に、主任保育士を補助する者を配置する経費を負担
障害児保育加算障害児を受け入れる特定地域型保育事業所(居宅訪問型を除く)で、障害児2人につき保育士1人を配置する経費を負担。特定教育・保育施設は加算対象外
保育士等キャリアアップ研修研修分野に障害児保育を盛り込み、実施に必要な経費の一部を補助
職務分野別リーダー等の処遇改善(処遇改善等加算Ⅱ)障害児保育を含め、研修を修了して職務分野別リーダーまたは専門リーダーとなった職員の人件費の加算
保育環境改善等事業(障害児受入促進事業)障害児を受け入れるために必要な改修等の経費の一部を補助
保育所等訪問支援保育所等を利用中の障害児に、児童発達支援センター等が訪問支援を行う費用を負担(個別給付)
地域障害児支援体制強化事業(巡回支援専門員整備)専門員が保育所等を巡回し、障害が気になる段階から支援を行う経費の一部を補助

障害児保育加算の対象は、事務連絡では特定地域型保育事業所で、特定教育・保育施設は対象外です。保育所と地域型保育の財源の違いは、障害児を受け入れたときの加配の財源(保育所と地域型保育の違い)で整理しています。

よくある質問

障害のあるこどもの保育時間を短くすることは、すべて認められないのですか。

事務連絡が適当ではないとしているのは、単に障害を理由として一律に差を設けることです。個別の事案で、安全の確保などの観点から正当な理由があると判断した場合は、理由を丁寧かつ具体的に説明して理解を得るように努めるよう求めています。個々の事案の適否は、所在地の市区町村に確認してください。

この事務連絡は、園に新しい義務を課すものですか。

事務連絡の本文は、障害者差別解消法に基づく対応を徹底するよう自治体に求める周知文書です。法律の内容は、参考1に第7条(行政機関等)と第8条(事業者)の抜粋が載っており、第8条には合理的配慮の規定(第2項)も含まれています。自園にどの条文が当たるかは、所在地の市区町村に確認してください。

障害児の受入れは、公定価格の試算に関係しますか。

別紙には療育支援加算など公定価格の加算に当たる支援策が挙げられていますが、障害を理由とする取扱いの差が適当かどうかの判断は、試算に含まれません。この試算ツールは、認定済みの加算を入力して公定価格(委託費)を試算します。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事は、令和6年12月5日の事務連絡の本文と参考・別紙の範囲だけを扱い、補助単価や負担率は転記していません。その後の改正の有無は確認していません。個別の事案の判断は、所轄の市区町村に確認してください。

次に知りたいこと:保育所の差別的取扱いの禁止(国籍・信条・社会的身分・費用負担の有無)、療育支援加算とは?対象・要件・区分A〜D・認定の確認(令和8年度)、障害児を受け入れたときの加配の財源(保育所と地域型保育の違い)

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

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