ガイドラインは法的義務の条文ではなく、対応の考え方を示した資料
「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」は、アレルギー疾患のある子どもへの対応の基本原則と手順を示した、厚生労働省の資料です。
保育所保育指針(2018年4月適用)を踏まえて改訂され、基本編と実践編の二部構成になっています。
基本編は対応の基本、実施体制、食物アレルギーへの対応を扱い、実践編は生活管理指導表の記載に基づく疾患別の対応を解説しています。
ガイドラインは条文ではない
ガイドラインは対応の考え方を示す資料で、設備運営基準のように「しなければならない」と定める条文ではありません。ここでの整理は、ガイドラインの記載を説明するもので、自園の対応が適切かどうかの判定ではありません。
基本原則は4つ。生活管理指導表に基づく対応が必須とされている
ガイドラインは、保育所のアレルギー対応の基本原則を4つ挙げています。
保育は医師の診断及び指示に基づいて行う必要がある、という前提が置かれています。
| 原則 | ガイドラインの記載の要点 |
|---|---|
| 組織的に対応する | 全職員を含む関係者の共通理解の下で、アレルギー対応委員会等を設け、マニュアルを作り、役割分担と記録、緊急時・災害時の備えを整える |
| 医師の診断指示に基づき、保護者と連携する | 生活管理指導表に基づく対応が必須 |
| 地域の専門的な支援・関係機関と連携する | 自治体の支援の下で、アレルギー専門医や医療機関、消防機関等と連携する |
| 食物アレルギーは安全・安心を優先する | 完全除去対応(提供するか、しないか)とし、家庭で食べたことのない食物は基本的に保育所では提供しない |
生活管理指導表は、医師が記入する保護者・保育所の共通の連絡票
生活管理指導表は、保護者の依頼を受けて子どものかかりつけ医が記入する表です。
ガイドラインは、医師と保護者と保育所をつなぐ重要なコミュニケーションツールと位置づけています。
作成の対象は、保育所の生活でアレルギー疾患に関する特別な配慮や管理が必要になった子どもに限られます。
食物除去の申請には、医師の診断に基づく生活管理指導表が必須とされています。
更新の目安は、入所時または診断時と、年1回以上、必要に応じてです。
表には、記載内容を保育所の職員や消防機関・医療機関等と共有することに同意するかを保護者が答える欄があります。
保育所から保護者へ、表の食物アレルギー欄に関連する検査結果を求める必要はないと、ガイドラインは明記しています。
食物の除去は、原因食品の完全除去が基本。解除は書面で行う
食物除去は、成長に必要な栄養を損なう不必要な除去を避けるため、医師の診断及び指示に基づく生活管理指導表で、原因食品を完全に除去することが基本とされています。
食物アレルギーは成長とともに治ることが多いため、除去は定期的な見直しが必要とされています。
| 場面 | ガイドラインの記載 |
|---|---|
| 除去の範囲 | 原因食品の完全除去が基本。調味料や油脂にごく少量含まれるだけなら、除去の必要がないことが多い |
| 重い場合 | 少量の調味料も摂取できない厳しい除去が必要な子どもは、該当食材を使う料理で給食対応が困難になることがある |
| 除去の解除 | 医師の指示に基づき、保護者と保育所の間で書面の申請によって行う(参考様式に除去解除申請書がある) |
| 初めて食べる食品 | 家庭で安全に食べられることを確認してから、保育所で提供を始めることを基本とする |
| 診断前の発症 | 診断のない子どもが保育所で初めて発症することもあるため、その可能性を踏まえて体制を整える |
| 献立の工夫 | リスクの高い食物が少ない、または使わない共通の献立メニューを取り入れる |
食事の調理場所や献立に関する基準は『保育所の食事の提供(第11条):自園調理の原則・献立と栄養・食を営む力の育成の努力義務』で整理しています。
誤食は、配膳ミスなどの人的エラーが主な原因。確認の重ね方と対応の単純化が対策
ガイドラインは、誤食の主な発生要因を3つ挙げています。
1つ目は、配膳ミス(誤配)や原材料の見落とし、伝達漏れなどの人的エラーです。
2つ目は、人的エラーを誘発する、煩雑で細分化された食物除去の対応です。
3つ目は、子どもが幼少で自己管理ができないことです。
対策として、食事内容を記載した配膳カードを作り、調理、配膳、提供までの間に2重、3重のチェック体制をとること、食器の色を変えて注意を促すことが挙げられています。
除去の対応はできるだけ単純化し、完全除去か解除かを基本とすることが求められています。
誤食は食事の場面に限らず遊びの場面でも起こるため、職員全体で発生要因を共有することも書かれています。
誤配や誤食が起こらないよう、安全確保に必要な人員を配置して管理することも求められています。
緊急時は、緊急性の高い症状が1つでもあればエピペンの使用や119番通報を行う
緊急性の高い症状が1つでも見られたら、エピペンの使用や救急車の要請など、速やかな対応が求められます。
ガイドラインは、緊急性の高い症状を消化器、呼吸器、全身に分けて表で示しています。
例は、繰り返し吐き続ける、声がかすれる、息がしにくい、ぐったりしている、意識がもうろうとしている、などです。
アナフィラキシーの重い反応が起きたときは、救急搬送が基本です。
子どもの生命が危険な状態で、自分で注射できない場合は、居合わせた保育所の職員が、ガイドラインの内容(事前の備えを含む)に即して、子どもに代わってエピペンを使用してもよいとされています。
使用した後は、速やかに救急搬送して医療機関を受診する必要があります。
ガイドラインは、この行為は緊急やむを得ない措置で、医師法第17条違反にならないと述べています。
エピペンの対象と保管
エピペンは体重15kg未満の子どもには処方されないと、ガイドラインに注記があります。預かる場合は、緊急時の対応を保護者と協議したうえで「緊急時個別対応票」を作成し、子どもの手の届かない、すぐ取り出せる場所に保管します。個々の子どもへの医療的な判断は、かかりつけ医の指示によります。
施設長のリーダーシップで、対応委員会・マニュアル・記録・訓練を整える
ガイドラインは、施設長のリーダーシップの下で各職員の役割を明確にし、組織的に対応する体制をつくることを求めています。
具体例として、対応委員会等の開催とマニュアルの策定が挙げられています。
日々の確認と記録、火災や自然災害の発生を想定した準備も重要とされています。
緊急時の備えとして、発見者による観察、エピペンの準備、連絡、記録などの役割分担を明確にし、園内研修や定期的な訓練を行うことが挙げられています。
事故の防止の指針・報告・研修は『保育所の事故の防止(指針・報告体制・委員会と研修)と発生時の連絡・記録・損害賠償(運営基準第32条)、体調急変時の緊急対応(第18条)』、栄養士が給食のアレルギー対応への助言をする加算は『栄養管理加算は認定済みの活用形態を月次試算へ反映する』で扱っています。
自園の対応を点検する手順
点検は、書類、除去の内容、配膳、緊急時の順に進めると抜けが減ります。
生活管理指導表の提出と更新を一覧にする
食物除去をしている子どもごとに、入所時または診断時の提出日と、直近の更新日を並べ、年1回以上の更新が回っているかを確かめます。
除去の内容が完全除去か解除かに単純化されているか確認する
細分化された除去が残っていないか、解除の申請が書面で残っているかを見ます。
配膳から提供までの確認の重ね方を書き出す
配膳カード、複数人の確認、食器の色分けなど、自園で行っている手順を職員で確かめます。
緊急時の役割分担と、エピペン・緊急時個別対応票の保管場所を確認する
全職員が保管場所を知っているか、訓練の実施記録があるかを確かめます。
所在地の自治体のマニュアルや案内と照らす
自治体が独自のアレルギー対応マニュアルや研修を示していることがあるため、所管に確認します。
よくある質問
- 生活管理指導表は、アレルギーのある子ども全員に必要ですか。
対象は、特別な配慮や管理が必要になった子どもに限られます。ガイドラインは、保育所の生活でアレルギー疾患に関する特別な配慮や管理が必要になった子どもに限って作成されるものと述べています。食物除去の申請には、医師の診断に基づく生活管理指導表が必須です。
- 保護者に血液検査などの結果を求めてもよいですか。
ガイドラインは、生活管理指導表の食物アレルギー欄に医師が記載した内容について、保育所から保護者に関連する検査結果を求める必要はないと明記しています。
- 職員がエピペンを使うと、医師法違反になりますか。
ガイドラインは、緊急やむを得ない措置として行われる職員の使用は医師法第17条違反とはならないと述べています。ただし、使用後は速やかな救急搬送と受診が必要です。個別の判断は医師や所管に確認してください。
- この記事で、自園のアレルギー対応が適切かどうか分かりますか。
分かりません。この記事はガイドラインの記載の整理で、個別の対応の適否や、指導監査の結果の見込みを示すものではありません。所管の自治体と、かかりつけ医・嘱託医に確認してください。
確認したうえで、公定価格を試算する
確認した利用定員と、所在地、年齢別の園児数を入力します。アレルギー対応の体制は、試算結果に含まれません。
利用定員を入れて公定価格を試算するほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧
この記事が参照した一次資料
- 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)
厚生労働省 2019(平成31)年4月/対象外対象外/確認日 2026-10-14