解説

保育所の事故防止と事故発生時の対応(運営基準第32条・第18条)

特定教育・保育施設の運営基準の第32条は、事故の発生と再発を防ぐ3つの措置、事故が起きたときの市町村と家族等への速やかな連絡、状況と処置の記録、賠償すべき事故の速やかな損害賠償を定めています。第18条の体調急変時の対応とあわせて、条文の構造を整理します。

第32条は、平時の備え(第1項)と事故時の対応(第2〜4項)に分かれる

特定教育・保育施設の運営基準の第32条は、事故の発生とその再発を防ぐための3つの措置(第1項)と、事故が起きたときの連絡、記録、損害賠償(第2項〜第4項)を定めています。

どの項も「しなければならない」の書き方で、義務として置かれています。

第32条の構造(e-Gov で確認、確認日 2026-10-13)
項条文の内容場面
第1項第1号事故が発生した場合の対応と報告の方法等を記載した、事故発生の防止のための指針を整備する平時の備え
第1項第2号事故、又はそれに至る危険性がある事態が生じた場合に、その事実が報告され、分析を通じた改善策を従業者に周知徹底する体制を整備する平時の備え
第1項第3号事故発生の防止のための委員会と、従業者に対する研修を定期的に行う平時の備え
第2項事故が発生した場合は、速やかに市町村と子どもの家族等に連絡を行い、必要な措置を講じる事故発生時
第3項第2項の事故の状況と、事故に際して採った処置を記録する事故発生後
第4項賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行う事故発生後

第1項の3つの措置は、指針・報告と改善の体制・委員会と研修

第1項は、事故の発生又はその再発を防止するために、3つの措置を講じるよう求めています。

第1号は指針の整備、第2号は報告と改善策を周知する体制、第3号は委員会の開催と研修の実施です。

第2号は、事故が起きた場合だけでなく、事故に至る危険性がある事態が生じた場合も報告の対象にしています。

報告された事実を分析し、その結果の改善策を従業者に周知徹底する体制までを、1つの措置としています。

第3号は、委員会と研修を定期的に行うことを求めていますが、「定期的」が何か月に1回を指すかは条文に書かれていません。

頻度や委員会の構成は、条例と所管の自治体の案内で確認します。

指針を整備しただけで、第1項を満たしたと考えない

第1項は、指針の整備(第1号)、報告と改善策の周知の体制(第2号)、委員会と研修の実施(第3号)の3つを、すべて講じるよう求めています。指針だけがあっても、報告の体制や定期的な研修がなければ、残りの号は満たされていません。

号ごとに、自園の文書(指針)、報告の様式と流れ、委員会の開催記録、研修の記録を並べて、3つとも実在するかを確かめます。

第2項〜第4項は、事故が起きたときの連絡・記録・損害賠償

第2項は、特定教育・保育の提供により事故が発生した場合に、速やかに市町村と、その子どもの家族等へ連絡を行い、必要な措置を講じることを求めています。

連絡の相手は2者で、市町村と家族等です。

条文は「速やかに」と書いており、何時間以内かといった数値の期限は書いていません。

第3項は、第2項の事故の状況と、事故に際して採った処置を記録するよう定めています。

第4項は、賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行うよう求めています。

賠償すべき事故にあたるかどうかは、個々の事故の内容によるため、条文だけでは決まりません。

第3項の記録は、運営基準の第34条第2項が定める5年間の保存の対象にも挙がっています。帳簿との違いと保存の整理は『保育所に備える帳簿(職員・財産・収支・処遇の状況:第14条)と、運営基準の記録の整備・5年保存との違い』で行っています。

第18条は、体調の急変など必要なときの、保護者・医療機関への連絡

第18条は、特定教育・保育の提供を行っているときに、子どもの体調に急変が生じた場合その他必要な場合は、職員が速やかに、保護者又は医療機関への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならないと定めています。

主語は施設ではなく職員で、対象はその場で保育にあたっている職員です。

第32条第2項は「事故が発生した場合」の市町村と家族等への連絡、第18条は「体調の急変その他必要な場合」の保護者又は医療機関への連絡です。

連絡先と場面が違うため、同じ連絡の手順で足りると考えず、場面ごとに分けて整理します。

体調の急変が、事故として市町村への連絡の対象になるかは、内容によって分かれるため、条文だけでは決まりません。

第32条は、市町村が条例を定めるときに「従うべき基準」として挙げられている

運営基準の第1条第2号は、市町村が条例を定めるに当たって従うべき基準として、第32条を挙げています。

同じ号には、第5条、第6条(第5項を除く)、第7条、第13条、第15条、第24条から第27条、第35条、第36条なども並んでいます。

従うべき基準は、市町村が条例の内容を国の基準と異ならせる余地が小さい部分です。

条例の文言が国の省令と同じかどうかは、所在地の条例そのもので確かめる必要があります。

指針の名称、委員会の運営、様式などは、所在地の条例と市町村の案内で確認します。

自園の事故への備えを第32条・第18条で点検する順序

点検は、平時の3つの措置、事故発生時の連絡、記録の保存、体調急変時の連絡の順に進めると抜けが減ります。

  1. 事故発生の防止のための指針があるかを確認する

    第1項第1号の指針に、事故が発生した場合の対応と報告の方法が書かれているかを見ます。

  2. 事故とヒヤリハットの報告の流れを確認する

    第2号に基づき、事故に至る危険性がある事態も報告されているか、報告のあとに分析と改善策の周知が行われているかを、実際の記録で確かめます。

  3. 委員会と研修の実施の記録を確認する

    第3号に基づき、委員会と研修が定期的に行われた記録を並べます。「定期的」の頻度は、条例と所管の案内で確かめます。

  4. 事故が起きたときの連絡先と手順を確認する

    第2項の市町村と家族等への連絡の窓口、担当者、様式を書き出します。第18条の保護者・医療機関への連絡とは別の列に書きます。

  5. 事故の状況と処置の記録、保存の方法を確認する

    第3項の記録の様式と、第34条第2項の5年間の保存の対象になっていることを、自園の保管の仕組みと照らして確認します。

よくある質問

事故が起きたら、何時間以内に市町村へ連絡しなければなりませんか。

条文には数値の期限が書かれていません。第32条第2項は「速やかに市町村、子どもの家族等に連絡を行う」とだけ定めています。報告の様式や期限の運用は、所在地の市町村に確認してください。

ヒヤリハットも、第32条の報告の対象ですか。

第1項第2号は、事故が発生した場合だけでなく、事故に至る危険性がある事態が生じた場合にも、その事実が報告される体制を整備するよう求めています。具体的にどの事態を対象にするかは、自園の指針で決め、所管の案内で確認してください。

第32条の事故の記録は、何年保存しますか。

運営基準の第34条第2項が、第32条第3項の事故の状況と処置の記録を、完結の日から5年間保存する記録の1つに挙げています。

この記事で、自園の対応が基準に適合しているか分かりますか。

分かりません。この記事は条文の構造の説明で、適合の判定や、個別の事故への法的な判断を示すものではありません。所管の市町村に確認してください。

確認したうえで、公定価格を試算する

確認した利用定員と、所在地、年齢別の園児数を入力します。事故への備えが基準に適合しているかは、試算結果に含まれません。

利用定員を入れて公定価格を試算する

次に知りたいこと:保育所の防火管理者の選任(収容人員30人以上)と消防計画・訓練、不適切な保育とは:国のガイドラインは「虐待」の4類型に整理し直した、保育は園の職員で行う原則と、勤務体制・研修の確保(運営基準第21条の3つの項)。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

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    関連する理由:

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    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

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    満三歳以上限定小規模保育事業(保育認定2号)の公定価格にある「食事の提供方法」「管理者を配置していない場合」「土曜日に閉所する場合」の調整を、留意事項通知の別紙8から整理します。基本分単価の決め方、定員を超えて受け入れられる範囲も確認できます。

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