解説

保育所の防火管理者の選任(収容人員30人以上)と消防計画・訓練

保育所は消防法施行令の別表第一(六)項ハに当たり、収容人員が30人以上なら防火管理者を定めて消防機関に届け出ます。収容人員の数え方、甲種・乙種の資格、消防計画、年2回以上の消火・避難訓練を、現行の条文に沿って整理します。

保育所は別表第一(六)項ハ。収容人員が30人以上なら防火管理者を定める

保育所は、消防法施行令の別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物で、収容人員が30人以上のとき、管理について権原を有する者が防火管理者を定めなければなりません。

別表第一(六)項ハ(3)には、助産施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童養護施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター、一時預かり事業や家庭的保育事業を行う施設が並んでいます。

定める義務の根拠は消防法第8条第1項で、施行令第1条の2第3項第1号ロが(六)項ハを収容人員30人以上と定めています。(六)項ロ(入所施設の一部)の10人以上とは別の基準です。

ここでの整理は条文の案内で、自園の建物の区分や届出の要否の判定ではありません

複合用途の建物や、他の施設と同じ建物に入っている園は、別の項の判断が入ります。自園の区分と届出は、所轄の消防本部・消防署に確認してください。

非常口や消火用具の設備、毎月の避難・消火訓練は、児童福祉施設の基準に基づく別の義務です。『保育所の非常災害対策と毎月1回の避難・消火訓練』で整理しています。この記事は消防法の側の義務です。

収容人員は、従業者と園児など要保護者の人数を合算して数える

保育所の収容人員は、従業者の数と、乳児・幼児などの要保護者の数を合算して算定します。

施行規則第1条の3は、(六)項ロ及びハについて「従業者の数と、老人、乳児、幼児、身体障害者、知的障害者その他の要保護者の数とを合算して算定する」と定めています。

園の定員ではなく、実際にいる人の数で数える形です。どの時点の人数を使うか、非常勤職員や一時預かりの子どもの数え方は、この条文には書かれていないため、消防機関に確認します。

収容人員と防火管理者の関係(消防法施行令・施行規則、確認日 2026-10-14)
確認すること条文の内容
対象になる項別表第一(六)項ハ(保育所はハ(3))
防火管理者を定める人数収容人員が30人以上(施行令第1条の2第3項第1号ロ)
収容人員の数え方従業者の数と、乳児・幼児などの要保護者の数の合算(施行規則第1条の3)
定める人防火対象物の管理について権原を有する者(消防法第8条第1項)

防火管理者の資格は、延べ面積300㎡で甲種と乙種が分かれる

防火管理者になれるのは、所定の講習を修了した者などで、防火管理上必要な業務を適切に遂行できる管理的または監督的な地位にある人です。

施行令第3条は、防火対象物を甲種と乙種に分けています。延べ面積が、(六)項ハを含む一定の項で300㎡未満のものが乙種防火対象物で、それ以外は甲種防火対象物です。

防火管理者の資格の区分(施行令第3条、確認日 2026-10-14)
防火対象物なれる人
甲種(保育所では延べ面積300㎡以上)甲種防火管理講習の修了者、防災に関する学科を修めた大学等の卒業者で1年以上の実務経験のある者、市町村の消防職員で管理的または監督的な職に1年以上あった者、これらに準ずる者
乙種(保育所では延べ面積300㎡未満)乙種防火管理講習の修了者、または甲種の資格のある者

講習は、都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長、または総務大臣の登録を受けた法人が行います。

選任の届出には、防火管理者の資格を証する書面を添えます(施行規則第3条の2第2項)。

自園の延べ面積が300㎡の前後にあるときは、建築確認の書類などで延べ面積を確かめたうえで、必要な講習の種別を消防機関に確認してください。

防火管理者の仕事は、消防計画の作成と、それに基づく訓練・点検・火気の監督

防火管理者は、消防計画を作成して消防長または消防署長に届け出て、その計画に基づく業務を行います。

施行令第3条の2が挙げる業務は、消火・通報・避難の訓練、消防用設備等の点検と整備、火気の使用や取扱いの監督、避難や防火上必要な構造・設備の維持管理、収容人員の管理などです。

施行規則第3条第1項は、消防計画に定める事項として、火災予防上の自主検査、消防用設備等の点検・整備、避難施設の維持管理、収容人員の適正化、防火管理上必要な教育、訓練の定期的な実施、災害時の消火・通報連絡・避難誘導、消防機関との連絡などを挙げています。計画の作成は、管理について権原を有する者の指示を受けて行います。

消防計画を変更するときも、同じ届出が必要です。

園の運営規程や安全計画の書類に、消防計画の写しを一緒にとじておくと、改訂時の見落としを防げます。

消火訓練と避難訓練は年2回以上。実施の前に消防機関へ通報する

(六)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行わなければなりません。

施行規則第3条第10項がこの回数を定め、第11項が、訓練を行うときはあらかじめその旨を消防機関に通報することを求めています。

児童福祉施設の基準が定める毎月1回の避難・消火訓練は、これとは別の根拠です。毎月の訓練のうち年2回以上を、消防機関に通報したうえで行う、という整え方が考えられます。ただし、どの月の訓練を消防法上の訓練として数えるかは条文に書かれていないため、消防機関に確認してください。

通報の方法や様式は、この記事の資料では確認できていません

事前通報の窓口や様式は、消防本部ごとに運用が異なることがあります。所轄の消防署に確認してください。

自園で確かめる順序:収容人員・資格・計画・訓練

  1. 収容人員を数える

    従業者と園児の人数を合わせ、30人以上かを確認します。複合用途の建物では、区分を消防機関に確認します。

  2. 防火管理者と資格を確かめる

    選任済みの人の講習修了証と、延べ面積に合う甲種・乙種の区分を照らします。管理的または監督的な地位にあるかも見ます。

  3. 選任の届出と消防計画の届出の控えを探す

    選任の届出、消防計画の届出、計画を変更したときの再届出の控えが、園にそろっているかを確認します。

  4. 年2回以上の訓練の日程と通報を決める

    毎月の訓練の年間計画のうち、消防機関に通報して行う回を決め、記録の様式をそろえます。

よくある質問

園長が防火管理者になれますか。

資格を満たし、管理的または監督的な地位にあれば、なれます。施行令第3条は、講習の修了などの資格に加えて、防火管理上必要な業務を適切に遂行できる管理的または監督的な地位にある者であることを求めています。誰を選ぶかは、権原を有する者が決めます。

定員が小さい園でも防火管理者は必要ですか。

必要かどうかは、定員ではなく収容人員で決まります。保育所は収容人員30人以上が基準で、従業者と園児などの合算で数えます。小規模な園の区分は、この記事の資料では確認できていないため、所轄の消防署に確認してください。

毎月の避難訓練をしていれば、消防法の訓練は済んでいますか。

済んでいるとは言い切れません。消防法の側では、年2回以上の消火訓練と避難訓練、その事前の通報が定められています。毎月の訓練のうちどれを充てられるかは、消防機関に確認してください。

防火管理者が退職したときはどうしますか。

消防法第8条第2項は、防火管理者を解任したときも遅滞なく届け出るとしています。後任の選任の届出も必要です。資格を持つ人がいないときは、講習の受講を急ぐことになります。

次に知りたいこと:非常災害対策、建築要件、公定価格の試算

2階以上に保育室を置く園の建築・避難の要件は『保育所の2階・3階以上の建築要件』、事故の防止は『保育所の重大事故が起きやすい場面別の注意事項』で整理しています。

確認した利用定員と、所在地、年齢別の園児数を入力します。防火管理者の講習費用や訓練の費用は、試算結果に含まれません。

利用定員を入れて公定価格を試算する

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」2件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由:

  • 保育所の消防用設備の設置基準(消火器・自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー)

    保育所は消防法施行令の別表第一(六)項ハ(3)に当たります。消火器具は延べ面積150㎡以上、自動火災報知設備は延べ面積300㎡以上、誘導灯は建物全体が対象になるなど、設備ごとの設置の条件を条文の番号つきで整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 保育所の保育の内容(第35条)と保護者との連絡(第36条)の違い

    保育の内容と保護者との連絡について、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第35条(保育の内容は指針に従う)と第36条(保護者と密接に連絡をとり理解と協力を得る努力義務)を、条文の書きぶり、従うべき基準にあたるかどうか、保育所保育指針の第1章・第4章との対応で整理します。義務の項目と努力義務の項目を分けて、自園の確認に使えます。

    関連する理由: 共通する試算入力

  • 保育園の業務管理体制の整備と届出(法令遵守責任者・施設数別の基準・届出先)

    施設型給付を受ける保育園の設置者が、子ども・子育て支援法第55条で求められる業務管理体制の整備と届出を整理します。確認を受けている施設の数による整備の基準、届書に書く事項、届出先の3区分、届出後の報告や立入検査、勧告までを確認できます。

    関連する理由: 共通する試算入力

「減算・報告・申請の期限を確認したいとき」の解説一覧へ