2階以上に保育室等を置く要件は、設備運営基準の第32条第8号にある
乳児室・ほふく室・保育室・遊戯室を2階以上に設ける建物の要件は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第32条第8号が定めています。
条文はこの4つの部屋をまとめて「保育室等」と呼びます。
2階に設ける建物と、3階以上に設ける建物とで、満たす要件の数が違います。
| 要件 | 内容の要点 | 2階に設ける | 3階以上に設ける |
|---|---|---|---|
| イ | 建物の構造 | 耐火建築物または準耐火建築物(建築基準法第2条第9号の3ロに該当するものを除く) | 耐火建築物 |
| ロ | 階段などの施設・設備 | 必要 | 必要 |
| ハ | 避難上有効な位置と歩行距離30メートル以下 | 条文上の要件に含まれない | 必要 |
| ニ | 調理室の区画 | 条文上の要件に含まれない | 必要(例外あり) |
| ホ | 壁・天井の室内側の仕上げを不燃材料にする | 条文上の要件に含まれない | 必要 |
| ヘ | 乳幼児の転落事故を防止する設備 | 必要 | 必要 |
| ト | 非常警報器具または設備、消防機関への火災通報設備 | 条文上の要件に含まれない | 必要 |
| チ | 可燃性のカーテン・敷物・建具等の防炎処理 | 条文上の要件に含まれない | 必要 |
条文は、2階に設ける建物には「イ、ロ及びヘ」の要件を、3階以上に設ける建物には「次に掲げる要件」を求めています。この表は、その書き分けを写したものです。建築基準法や消防法の別の義務は、この表に含まれていません。
階段などの施設・設備(ロ)は、階と常用・避難用の区分で決まる
ロは、保育室等のある階ごとに、常用の階段と避難用の階段などを一つ以上設けることを求めています。
条文は、階を二階・三階・四階以上に分け、それぞれを常用と避難用に分けた表で示しています。
階段の構造は、建築基準法施行令第123条の各号に定める構造が引かれています。
| 階 | 常用 | 避難用 |
|---|---|---|
| 二階 | 屋内階段/屋外階段 | 令第123条の屋内階段、待避上有効なバルコニー、準耐火構造の屋外傾斜路またはこれに準ずる設備、屋外階段 |
| 三階 | 令第123条の屋内階段/屋外階段 | 令第123条の屋内階段、耐火構造の屋外傾斜路またはこれに準ずる設備、屋外階段 |
| 四階以上 | 令第123条の屋内階段/令第123条第2項の構造の屋外階段 | 令第123条の屋内階段、耐火構造の屋外傾斜路、令第123条第2項の構造の屋外階段 |
階が上がるほど、選べる設備が絞られます。
例えば二階の避難用には「待避上有効なバルコニー」が挙がっていますが、三階の避難用には挙がっていません。
避難用の屋内階段には、屋内と階段室をバルコニーまたは付室でつなぐことなどの但し書きがあります。階段の構造の細目は、条文と建築基準法施行令で確認します。
3階以上だけに求められる要件は、歩行距離・調理室・仕上げ・通報設備・防炎
ハからチまでは、条文の書き方では3階以上に設ける建物の要件です。
ハは、ロの施設・設備が避難上有効な位置にあり、保育室等の各部分からその一つまでの歩行距離が30メートル以下になることを求めます。
ニ 調理室の区画
調理室以外の部分と調理室を、耐火構造の床・壁か特定防火設備で区画します。ただし、スプリンクラー設備などの自動式のものがある調理室、または調理用器具に応じた自動消火装置があり、外部への延焼を防ぐ措置を講じた調理室は、この区画の対象から除かれています。
ホ 壁と天井の仕上げ
壁と天井の室内に面する部分の仕上げを、不燃材料でします。
ト 警報と通報の設備
非常警報器具または非常警報設備と、消防機関へ火災を通報する設備を設けます。
チ 防炎処理
保育所のカーテン、敷物、建具等のうち可燃性のものに、防炎処理をします。
ニの例外を、調理室の仕様の判断に使わない
条文の例外は、スプリンクラー設備その他これに類する自動式のもの、または調理用器具の種類に応じた自動消火装置などを挙げています。どの設備がこれに当たるかは、建築と消防の個別の判断です。この記事は、設備がこの要件に適合するかを判定しません。
調理室の設備を決める前に、設計者と所管の自治体の建築・消防の窓口に、条例と運用の内容を確認します。
実際に適用されるのは条例。第8号は「従うべき基準」の列挙に挙がっていない
設備運営基準の第1条は、条例を定めるときに従うべき基準を列挙し、それ以外を参酌すべき基準としています。
第1条第2号が挙げる第32条の部分は、乳児室・ほふく室(第1号の一部)、第2号、第3号、保育室と遊戯室に係る第5号・第6号の部分です。
第8号は、この列挙に出てきません。そのため第1条第4号の参酌すべき基準にあたると読めます。
参酌すべき基準は、自治体が地域の事情を踏まえて条例の内容を変えられる部分です。
2階以上の要件は、国の省令と同じとは限りません。
施設の所在地の都道府県、指定都市、中核市の条例を、条番号と施行日まで確認します。
計画段階で確かめる順序
計画の確認は、置く階の整理、省令と条例の突き合わせ、別の法令の確認の3つに分けると抜けが減ります。
保育室等を置く階を整理する
乳児室、ほふく室、保育室、遊戯室のうち、2階以上に置く部屋を階ごとに控えます。条文が階の要件を課す対象は、この4つの部屋です。
階ごとに、省令の要件と条例の要件を並べる
2階か3階以上かで、イからチのうち満たす範囲が変わります。省令の表と、所在地の条例を並べて、違いのある項目を洗い出します。
建築と消防の別の義務を、設計者と窓口に確認する
この省令の要件を満たすことと、建築基準法や消防法の義務を満たすことは別です。設計者と所管の窓口に、必要な協議の順序を確かめます。
確認した内容を、認可の相談資料に添える
認可の相談では、階ごとの部屋の配置と、確認した条例の条番号を示します。
保育室等の面積の基準は『保育所の面積基準(乳児室・ほふく室・保育室)と利用定員を決める順序』で整理しています。
よくある質問
- 2階に保育室を置く場合、必要な要件は何ですか。
第32条第8号は、2階に設ける建物にイ・ロ・ヘの要件を求めています。建物が耐火建築物または準耐火建築物であること、階段などの施設・設備があること、転落事故を防止する設備があることです。適用される基準は条例で確認してください。
- 3階以上の場合、準耐火建築物は認められますか。
条文のイは、保育室等を3階以上に設ける建物について、耐火建築物であることを求めています。2階では、準耐火建築物も挙げられています。
- 避難用の階段の距離は、何メートル以内ですか。
条文のハは、保育室等の各部分から、ロに掲げる施設・設備の一つまでの歩行距離が30メートル以下になることを求めています。条文の書き方では、3階以上に設ける建物の要件です。
- この要件を満たせば、認可が受けられますか。
受けられるとは言えません。設備の要件は認可の審査の一部で、人員や運営の基準、自治体の条例も関わります。この記事は、適合や認可の可否を判定しません。
- 2階以上の保育室は、公定価格に影響しますか。
階数を入力する欄はありません。公定価格の試算は、所在地、利用定員、年齢別の園児数などから計算するモデルで、設備の適合は扱いません。
建物の要件を確かめたうえで、公定価格を試算する
確認した利用定員と、所在地、年齢別の園児数を入力します。建物の要件の適合や認可の可否は、試算結果に含まれません。
利用定員を入れて公定価格を試算する次に知りたいこと:屋外遊戯場に代わる場所と公園、条例が国の省令と異なる実例(秋田県・埼玉県・千葉県)。
ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧
この記事が参照した一次資料
- 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
昭和23年厚生省令第63号/複数年度対象外/確認日 2026-09-28