解説

重大事故の事後的な検証の進め方(令和8年3月30日の通知:検証委員会・報告書の公表・指導監査)

保育所などで死亡事故や意識不明事故が起きたあと、市町村や都道府県が行う「事後的な検証」を、令和8年3月30日の通知に沿って整理します。検証の対象と実施主体、検証委員会、集める情報9項目、報告書の公表、事故後の指導監査との関係を確認します。

事後的な検証は、令和8年3月30日の通知で整理され、4月1日から運用されている

題名は「教育・保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的な検証について」で、こども家庭庁成育局と文部科学省の連名の通知です(こ成安第46号・7教参学第53号、令和8年3月30日)。

令和8年4月1日から運用され、令和7年3月21日付の旧通知(こ成安第45号・6教参学第52号)は廃止されました。

地方自治法第245条の4第1項の技術的助言として出されたもので、都道府県や市町村に宛てた通知です。

今回の改正の理由は、令和6年法律第47号の施行により、令和8年度から乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)が子ども・子育て支援法に基づく新たな給付になることです。

特定乳児等通園支援事業所での死亡事故等も、引き続き検証の対象にすることが、通知の趣旨に書かれています。

事故が起きた直後の報告や対応は『保育所の事故防止と事故発生時の対応(運営基準第32条・第18条)』と『保育所の重大事故の報告先と期限』で扱っています。この記事は、報告のあとに自治体が行う検証の流れを扱います。

検証の対象は死亡事故と意識不明事故。実施するのは市町村か都道府県

通知の第1が示す対象は、特定教育・保育施設、特定地域型保育事業、特定乳児等通園支援事業、地域子ども・子育て支援事業、認可外保育施設、認可外の居宅訪問型保育事業です。

検証の目的は、事実関係を把握し、再発防止策を検討することです。関係者の処罰を目的とするものではないと、通知は明確にしています。

通知の第1が示す、検証の実施主体と対象範囲
項目通知の内容
市町村が実施特定教育・保育施設、特定地域型保育事業、特定乳児等通園支援事業、地域子ども・子育て支援事業の事故。都道府県が支援する
都道府県が実施認可外保育施設、認可外の居宅訪問型保育事業の事故(指定都市・中核市を含む)。市町村は協力する
死亡事故対象。乳幼児突然死症候群(SIDS)や死因不明とされた事例も、事故発生時の状況等を検証する
意識不明事故どんな刺激にも反応しない状態に陥ったもの。原因が病気と判明したものは除く
それ以外の重大事故都道府県または市町村が検証を必要と判断した事故
ヒヤリ・ハット事例など自治体が検証しない事故や、ヒヤリ・ハット事例等は、各施設・事業者等が自ら検証する

通知の「特定教育・保育施設」や「特定地域型保育事業」に、自園の施設類型がどう当たるかは、通知の本文だけでは分かりません。自園が市町村と都道府県のどちらの検証の対象になるかは、所在地の自治体に確認してください。

検証は外部の委員による検証委員会が行い、死亡事故では速やかに開く

通知は、検証を外部の委員で構成する検証委員会を設置して行うとしています。

委員は、再発防止に知見のある有識者で、学識経験者、医師、弁護士、教育・保育関係者、栄養士(誤嚥等の場合)などが例に挙がっています。必要に応じて、関係者の参加を求めることもあります。

検証委員会の開き方と取扱い(通知の第1)
項目通知の内容
開催の時期死亡事故は、事故発生後速やかに検証委員会を開催する。死亡事故以外の重大事故は、年間に複数例発生している地域など随時の開催が難しい場合、複数例を合わせて開催することも考えられる
情報の収集関係者から事例に関する情報の提供を求めてヒアリング等を行い、その情報をもとに、関係機関ごとのヒアリングや現地調査などを実施する
公開・非公開プライバシー保護の観点から、委員会は非公開とすることも考えられる。範囲は、保護者の意向に十分配慮し、個別事例ごとに協議する。ヒアリングのみ非公開の「一部非公開」も考えられる
守秘義務調査や検証を行う立場の人には、業務終了後も含め、知り得たことの守秘義務を課すことに留意する
配慮保護者やこどもの心情に十分配慮して行う

事前に集める情報は9項目。体制の資料も作られる

通知の第2は、検証の対象事例について、事務局が事故報告などを通じて次の9項目の情報を集めるとしています。

必要に応じて、施設や事業者等からのヒアリングも行われます。市町村が実施する場合は、都道府県の協力を得ます。

通知の第2が示す、事前に収集する情報
番号項目
1こどもの事故当日の健康状態など、体調に関すること
2死亡事故等の重大事故に至った経緯
3都道府県または市町村の指導監査の状況等
4事故予防指針の整備、研修の実施、職員配置等(ソフト面)
5設備、遊具の状況など(ハード面)
6教育・保育等が行われていた状況(環境面)
7担当の保育士等の状況(人的面)
8事故発生後の対応(各施設・事業者等と行政の対応)
9事故が発生した場所の見取り図、写真、ビデオ等

あわせて事務局は、施設・事業所等の体制に関する資料も作ります。

組織図、職種別の職員数、利用こども数、クラス編成などの教育・保育体制が、その内容に挙がっています。

通知の項目4(指針・研修・職員配置)や体制の資料に対応するため、指針や研修の整備状況、職員配置の資料が検証で使われうると読めます。

報告書は原則として公表され、提言を受けた措置が点検・評価される

検証委員会は、検証結果と再発防止の提言をまとめた報告書を、都道府県または市町村に提出します。

自治体は、プライバシー保護と保護者の意向に十分配慮したうえで、原則として報告書を公表し、国にも提出します。公表では、個人が特定される情報を削除するなど、プライバシーの保護に十分配慮することも書かれています。

報告書に盛り込む内容の例(通知の第2)
番号内容
1検証の目的
2検証の方法
3事例の概要
4明らかとなった問題点や課題
5問題点や課題に対する提案(提言)
6今後の課題
7会議開催経過
8検証組織の委員名簿
9参考資料

提言のあと、自治体は速やかに具体的な措置を講じ、各施設・事業者等にも措置を求めます。

自治体は、自ら講じた措置と、施設・事業者等が講じた措置の実施状況を、適時適切に点検・評価します。

必要に応じて、関係機関や関係者への指導も行われます。早急な改善が必要なものは、検証の終結を待たずに措置を講じることも考えるとされています。

事故後の指導監査では、再発防止策がとられているかも確認される

通知の第3は、死亡事故等の重大事故が起きた場合に、必要に応じて事前通告なく指導監査を実施するとしています。

事故後の指導監査では、同様の事故の再発防止策がとられているかなど、検証結果を踏まえた措置も確認されます。

事故前に受けた指導監査の状況や、事故後の指導監査の結果は、検証の情報収集にも使われます。

通知の第3の表にある、指導監査の指針(施設・事業ごと)
施設・事業監査指針等
保育所児童福祉行政指導監査の実施について(平成12年4月25日、児発第471号)。都道府県・指定都市・中核市が実施
地域型保育事業児童福祉法に基づく家庭的保育事業等の指導監査について(平成27年12月24日、雇児発1224第2号)。市町村が実施
特定乳児等通園支援事業児童福祉法に基づく乳児等通園支援事業の指導監査について(令和7年11月28日、こ成保第633号)。市町村が実施
認可外保育施設認可外保育施設に対する指導監督の実施について(令和6年3月29日、こ成保第206号)。都道府県・指定都市・中核市が実施

通知の表の注によると、保育所と幼保連携型認定こども園は、都道府県と市町村の双方が指導監査等を実施し、互いに連携します。保育所については、市町村が子ども・子育て支援法に基づく指導監査(平成27年12月7日、府子本第390号ほか)も行います。指導監査の見方や運用は自治体で異なる場合があるため、所在地の自治体に確認してください。

よくある質問

事後的な検証は、事故を起こした園や職員を処罰するためのものですか。

通知は、関係者の処罰を目的とするものではないことを明確にするとしています。事実関係を把握し、再発防止策を検討するために行うものです。

検証の結果は公表されますか。

通知は、プライバシー保護と保護者の意向に十分配慮したうえで、原則として報告書を公表するとしています。個人が特定される情報は削除されます。公表の範囲は、個別の事例で自治体が判断します。

この通知は、公定価格の試算に関係しますか。

この通知は、事故後の検証の進め方を示すもので、公定価格の算定は扱っていません。この試算ツールは公定価格(委託費)の算定のみを行い、事故の検証や指導監査の結果は試算に含めていません。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事は、令和8年3月30日の通知の本文に書かれた範囲だけを扱います。その後の改正の有無は確認していません。個別の事故への対応や、検証の対象かどうかは、所轄の自治体に確認してください。

次に知りたいこと:保育所の事故防止と事故発生時の対応(運営基準第32条・第18条)、保育所の重大事故の報告先と期限、保育所の重大事故が起きやすい場面別の注意事項

この記事が参照した一次資料

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