解説

保育所の重大事故の報告先と期限:市町村から国までの流れと置き去り事故

認可保育所で重大事故(死亡・意識不明・治療30日以上)や自動車への置き去り事故が起きたときの報告の流れと期限を、令和8年3月30日付の国の通知(令和8年4月1日運用開始)の原文で整理します。

認可保育所の報告は、施設から市町村、都道府県、国の順に進む

国の通知「教育・保育施設等における事故の報告等について」(令和8年3月30日付、令和8年4月1日から運用)は、特定教育・保育施設(公定価格の対象の認可保育所を含む)の重大事故を、施設または事業者から市町村へ報告し、市町村は都道府県へ、都道府県は国へ報告すると定めています。

施設が報告する相手は市町村です。国への報告は、都道府県を経由して自治体が行います。

通知は、事故が発生した場合に、指導監督の権限を持つ自治体とこどもの家族等へ速やかに連絡することも、特定教育・保育施設の運営基準に基づくものとして示しています。

認可保育所の報告の流れ(令和8年3月30日付通知 項目1・6、令和8年度、確認日 2026-10-17)
段階報告する人報告先
事故の発生直後施設指導監督権限を持つ自治体(市町村)と、こどもの家族等へ速やかに連絡
重大事故・置き去り事故施設・事業者市町村へ報告
市町村から先市町村都道府県へ報告
都道府県から先都道府県国(こども家庭庁)へ報告

認可外保育施設は、施設から都道府県(指定都市・中核市・児童相談所設置市の区域では当該市)へ報告する別の流れです。企業主導型保育施設は、あわせて公益財団法人児童育成協会にも通知されます。この記事は認可保育所の流れを扱います。

報告の対象は、重大事故と自動車への置き去り事故

通知が国への報告の対象とするのは、重大事故と自動車への置き去り事故です。

重大事故以外の事故を、国へ報告する対象とは書かれていません。

通知の別紙は、重大事故以外の事故の範囲は、各自治体の実情を踏まえて適切に運用されるべきとしています。軽い事故の報告の扱いは、所在地の市町村の定めを確認します。

報告の対象となる事故(令和8年3月30日付通知 項目3、確認日 2026-10-17)
区分対象になる事故
重大事故死亡事故
重大事故意識不明事故(どんな刺激にも反応しない状態に陥ったもの)
重大事故治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故
自動車への置き去り事故安全装置の装備が義務付けられている自動車:点呼等による所在確認の不実施による事故と、安全装置の不適切な運用や故障等による事故の双方に該当する場合
自動車への置き去り事故安全装置の装備が義務付けられていない自動車:点呼等による所在確認の不実施による事故に該当する場合

置き去り事故は、令和8年4月1日から報告の対象に加わった

通知は、今回の改正で自動車への置き去り事故を報告対象に加え、令和7年3月21日付の旧通知を廃止するとしています。旧通知の記載で園内の手順を作っていると、置き去り事故の報告が抜けます。

園内の事故対応の手順書が、令和8年3月30日付の通知に沿った内容かを確認します。送迎用自動車の所在確認は、別の記事で整理しています。

国への第1報は原則当日、第2報は原則1か月以内程度

通知の報告期限は、国への第1報が原則として事故発生当日(遅くとも事故発生翌日)、第2報が原則として1か月以内程度です。

この期限は、自治体が国へ報告する期限です。施設から市町村への報告の日数は、通知に数字で書かれていません。

施設から市町村への連絡が遅れると、国への第1報の時期に影響すると考えられます。実務上の備えとして、事故が起きたら速やかに市町村へ連絡できるよう準備しておきます。

国への報告の時期(令和8年3月30日付通知 項目5、確認日 2026-10-17)
報告時期内容
第1報原則、事故発生当日(遅くとも事故発生翌日)報告様式による最初の報告
第2報原則、1か月以内程度状況の変化を反映した報告
追加の報告状況の変化や必要に応じて追加の報告
要因分析・検証の結果作成され次第事故発生の要因分析や検証等の結果

報告様式は2種類で、自治体は個人情報を消してから国へ送る

報告様式は、別添1「教育・保育施設等事故報告書(重大事故)ver.6」と、別添2「教育・保育施設等事故報告書(自動車への置き去り事故)」の2種類です。

施設から報告を受けた自治体は、自治体コメントを記載し、日付、個人名、病院名等の個人情報を削除または黒塗りにしてから報告します。

施設側の報告書に事故の経過をどこまで書くかは、所在地の市町村の指示に沿って確認します。

報告後は、自治体が公表と情報提供を行い、消費者庁にも通知する

通知は、報告を受けた市町村または都道府県が、国への報告とあわせて、消費者庁消費者安全課にも報告書を送る(消費者安全法に基づく通知)としています。

事故の公表は、都道府県と市町村が、保護者の意向や個人情報の保護に配慮して、事案に応じて行います。

都道府県と市町村は、事故が発生した要因や再発防止策等を、管内の施設・事業者へ情報提供するとされています。こども家庭庁は、報告された情報を集約し、再発防止に資する情報を公表します。

事故に備えて園内で決めておく順序

  1. 連絡先を最新にしておく

    所在地の市町村の担当課と、夜間・休日の連絡先を、園内の事故対応の手順に載せます。通知は、事故が起きたら速やかに自治体と家族等へ連絡することを前提にしています。

  2. 対象の事故の定義を、手順書に書き写す

    死亡、意識不明(どんな刺激にも反応しない状態)、治療30日以上の負傷や疾病、自動車への置き去りの条件を、通知の表現のまま手順書に載せます。

  3. 対象に当たるか迷う事故は、市町村に連絡して扱いを聞く

    治療に要する期間は、事故の直後にはわからないことがあります。当たるかどうかの判断は、園の自己判断にせず、市町村に連絡して確認します。

  4. 事故の経過を時刻つきで記録する

    第2報の追加の報告や、要因分析の結果の報告に使えるよう、発生時刻、対応、連絡した相手と時刻を記録します。

次に知りたいこと:事故防止、給付、送迎バス

報告の流れを押さえたら、事故を防ぐ指針、事故後の給付、送迎バスの点呼の順に確認します。

事故の発生防止の指針や委員会、事故後の家族等への連絡は、保育所の事故防止と事故発生時の対応(運営基準第32条・第18条)で整理しています。事故のあとのけがの給付は、保育所の災害共済給付(日本スポーツ振興センター):加入の仕組み・対象になるけが・請求の流れで整理しています。

送迎バスの置き去りを防ぐ点呼と安全装置は、保育所の送迎用自動車の所在確認(乗降時の点呼)と車内の見落とし防止装置(第6条の4)で整理しています。

よくある質問

保育所から国へ、直接報告しますか。

しません。通知は、認可保育所を含む特定教育・保育施設の報告を、施設から市町村へ、市町村から都道府県へ、都道府県から国へと定めています。

通院が必要なけがは、すべて国への報告の対象ですか。

通知の重大事故は、治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故です。それ以外の事故の報告の扱いは、通知の別紙が各自治体の実情を踏まえた運用としているため、所在地の市町村に確認します。

治療に何日かかるか、事故の日にはわかりません。

通知は、第1報を原則、事故発生当日(遅くとも翌日)とし、第2報を原則1か月以内程度としています。通知には、30日以上かどうかが事故の日に不明な場合の扱いは書かれていません。報告するかどうかの扱いは、市町村に速やかに連絡して確認します。

この記事で、自園の事故が報告の対象かを判定できますか。

できません。この記事は、国の通知の定めを整理したものです。自園の事故の扱いは、所在地の市町村に確認します。

公定価格を試算する

所在地、利用定員、年齢別の園児数を入力します。事故の報告の体制は、試算結果に含まれません。

利用定員を入れて公定価格を試算する

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由:

  • 保育所の重大事故が起きやすい場面別の注意事項(睡眠中・プール・食事中)

    こども家庭庁が掲載する「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」が、重大事故が起きやすい場面として挙げる睡眠中、プール活動・水遊び、食事中と玩具の誤嚥の注意事項を、原文に沿って整理します。ガイドラインは技術的な助言で、条文ではない点も区別します。

    関連する理由: 共通する試算入力

  • 保育所の相談・援助(運営基準第17条)と、小学校等との連携(第11条)

    確認を受けた保育所は、子どもの心身の状況や置かれている環境の把握に努め、子どもや保護者の相談に応じて助言その他の援助を行います。保育の終了に際しては、小学校などとの連携にも努めます。特定教育・保育施設の運営基準の第17条と第11条を、条文に沿って整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力

  • 満三歳以上限定小規模保育事業の創設(令和8年4月1日施行)と市町村の条例・計画の経過措置

    児童福祉法等の一部を改正する法律(令和7年法律第29号)により、満三歳以上の子どもに限定した満三歳以上限定小規模保育事業が令和8年4月1日に創設されました。令和7年9月29日の事務連絡の原文に沿って、創設の根拠、施行日前の認可・確認の申請、市町村の条例で定める基準の経過措置、市町村の事業計画の変更と代用計画を整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力

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