解説

不適切な保育とは:国のガイドラインは「虐待」の4類型に整理し直した

「不適切な保育」は、こども家庭庁のガイドライン(令和7年8月改訂・令和8年4月一部改訂)では使われなくなり、虐待の4類型を軸にした整理に変わりました。旧版との違い、4類型、虐待に当たらない行為の扱い、市町村への相談を原文で整理します。

現行のガイドラインは、「不適切な保育」の概念を用いず「虐待」を軸にしている

こども家庭庁と文部科学省の「保育所や幼稚園等における虐待防止及び発生時の対応等に関するガイドライン」は、令和7年8月に改訂され、令和8年4月に一部改訂されています。

現行版は、「不適切な保育」や「こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」という概念を用いず、「虐待」の概念を軸に対応を再整理しています。

ただし、各自治体の運用の中で従前の「不適切な保育」の概念を用いることは差し支えない、とも書かれています。

ガイドラインでの「不適切な保育」の扱い(確認日 2026-10-17)
区分「不適切な保育」の扱い
従前のガイドライン「不適切な保育」を「虐待等が疑われる事案」と捉え、その外側に「こどもの人権擁護の観点から望ましくないと考えられるかかわり」を置いていた
現行のガイドライン(令和7年8月改訂・令和8年4月一部改訂)この2つの概念は用いず、「虐待」を軸に講じる対応を再整理した
自治体の運用従前の「不適切な保育」などの概念を用いることは差し支えない

再整理の背景として、ガイドラインは令和7年法律第29号による児童福祉法の改正を挙げています。改正で、身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の4つが「虐待」と定義され、虐待が疑われる場合の通報義務が設けられました(令和7年10月1日施行)。通報の仕組みは保育所等の職員による虐待の通報義務で整理しています。

虐待は、職員がこどもに行う4つの行為

ガイドラインは、保育所等における虐待を、職員がこどもに行う次の4つの行為としています(改正児童福祉法第33条の10第1項)。

保育所等の職員は、この4つを含め、児童の心身に有害な影響を与える行為をしてはならないとされています(同法第33条の11)。

虐待の4類型(保育所や幼稚園等における虐待防止及び発生時の対応等に関するガイドライン Ⅰ3(1)、確認日 2026-10-17)
類型ガイドラインの定義具体例として挙がる行為の一部
身体的虐待こどもの身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること殴る、蹴る、叩く、激しく揺さぶる、食事を与えない、戸外に閉め出す
性的虐待こどもにわいせつな行為をすること、またはこどもにわいせつな行為をさせること必要のない場面で裸や下着の状態にする、性器を見せる
ネグレクト心身の正常な発達を妨げるような著しい減食や長時間の放置、他のこどもによる前記の行為の放置、そのほか職員としての業務を著しく怠ること泣き続けるこどもに長時間関わらず放置する、おむつや汚れた服を替えず長時間不潔なままにする
心理的虐待こどもに対する著しい暴言や著しく拒絶的な対応など、著しい心理的外傷を与える言動を行うこと言葉や態度での脅し、こどもを無視する、食べこぼしを嘲笑する、感情のままに大声で叱責する

具体例はガイドラインの表から一部を抜いたもので、ガイドラインは、これらはあくまで例だと書いています。禁止行為の条文は、児童福祉施設の基準の第9条の2と運営基準の第25条にもあります。2つの省令の対応は保育所の職員の虐待等の禁止と秘密保持で整理しています。

虐待に当たらない行為も、振り返りで改善する対象になる

ガイドラインは、日々の保育で行われる行為が1つ1つは虐待に当たらなくても、振り返りで改善されなければ、繰り返しによって虐待になり得ると書いています。

ガイドラインの言い方では、日々の行為の延長に虐待があります。

再整理は、虐待に該当しないものについて、未然防止や改善の取組が要らないという意味ではない、とも明記されています。

  1. 「こどもにとってどうなのか」から振り返る

    ガイドラインは、自分のかかわりや園の保育が、こどもの人権への配慮と一人一人の人格の尊重になっているかを、全国保育士会のチェックリストなどを使って振り返ることを挙げています。

  2. 職員の間で対話の場を持つ

    施設長や園長には、振り返りの場を定期的に持つことや、組織内で相談しやすい職場環境をつくることが求められる、と書かれています。

  3. 人権・人格の尊重についての研修を行う

    施設内の研修のほか、保育内容等の自己評価も重要だとしています。自己評価の制度は保育所の業務の質の評価(自己評価と外部評価)で整理しています。

虐待と疑われる場合は速やかに相談する。当たらなくても対応が要る場合がある

虐待を受けたと思われるこどもを発見した者は、速やかに都道府県または市町村に通報しなければなりません(改正児童福祉法第33条の12第1項)。

ガイドラインは、園が状況を正確に把握し、市町村や都道府県の相談窓口に速やかに情報提供・相談して、今後の対応を協議するとしています。

その際に基本となるのは、「隠さない」「嘘をつかない」という誠実な対応だと書かれています。

場合ごとの動き(ガイドライン Ⅱ1・Ⅱ2、確認日 2026-10-17)
場合ガイドラインが示す動き
日々の振り返りで、望ましくないかかわりに改善が見られない、または事態が悪化している園の会議の場などで共有し、園として、虐待と疑われる事案かどうかを確認する
虐待と疑われる事案を発見した市町村や都道府県の相談窓口に、把握した状況を速やかに情報提供・相談する
虐待と疑われる事案には当たらないが、対応が必要日々の振り返りの対応を進め、巡回支援など自治体へ相談する機会を使って相談する

個別の行為が虐待に当たるかは、記事では判断できない

ガイドラインは、明らかに虐待と判断できるものばかりでなく、判断しづらい場合もあるとしています。その場合は、こどもの状況や職員の状況から総合的に判断し、そのときも、当該こどもの立場に立って判断すべきことに留意する、と書かれています。

迷う事案は、園内で抱え込まず、所轄の市町村や都道府県の担当窓口に相談します。この記事は個別の判定をしません。

確認の順序

園の資料や研修で使っている「不適切な保育」という言葉が、何を指しているかを先に確かめます。

  1. 園の規程や研修資料の「不適切な保育」の使い方を確かめる

    旧版の整理(虐待等が疑われる事案)のまま書かれていないかを見ます。自治体の資料で使われている場合は、その自治体での意味を確かめます。

  2. 職員が、虐待の4類型と、心身に有害な影響を与える行為の禁止を知る機会があるか確かめる

    研修や園内の資料で、4つの類型の定義と具体例を共有しているかを見ます。

  3. 日々の振り返りと対話の場が、定期的に持たれているか確かめる

    チェックリストを使う場、職員同士で率直に話せる場が、実際に持たれているかを見ます。

  4. 虐待と疑われる事案を見つけたときの相談先を、職員が知っているか確かめる

    所轄の市町村や都道府県の窓口と、園内の相談の経路が、職員に伝わっているかを見ます。

この記事・試算で扱わないこと

この記事は、国のガイドラインの整理の説明で、個別の事案が虐待に当たるかどうかや、園の取組が基準を満たしているかの判定は行いません。

ガイドラインの最新版と、自治体ごとの運用は、所轄の市町村に確認してください。

試算ツールも、虐待防止の取組の判定は対象外です。

よくある質問

不適切な保育とは、何のことですか。

従前のガイドラインでは、虐待等が疑われる事案を指す言葉として整理されていました。現行のガイドライン(令和7年8月改訂・令和8年4月一部改訂)は、この概念を用いず、「虐待」を軸に対応を整理しています。自治体が従前の概念を運用で使うことは差し支えないとされています。

不適切な保育と虐待は、同じですか。

従前のガイドラインでは、不適切な保育の中に虐待等が含まれ得ると整理されていました。現行版は、不適切な保育という概念自体を用いていません。

虐待の4類型とは何ですか。

身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4つです。改正児童福祉法第33条の10第1項に基づく定義が、ガイドラインに書かれています。

虐待に当たらない行為なら、何もしなくてよいですか。

いいえ。ガイドラインは、虐待に当たらない行為でも、日々の振り返りで改善されなければ繰り返しによって虐待になり得るとして、未然防止や改善の取組が要ると書いています。

この試算ツールで、虐待防止の取組を確認できますか。

できません。この試算は公定価格(委託費)の算定に特化しており、虐待防止の取組の確認は対象外です。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていないことも表示されます。

公定価格の試算を開く

次に知りたいこと:苦情の窓口と記録の保存は保育所の苦情対応、監査での確認項目は指導監査の確認表で整理しています。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

「定員・在籍・利用開始の時期が変わるとき」の解説一覧へ