解説

条例が国の省令と異なる実例:秋田県・埼玉県・千葉県の保育所基準6項目

保育所の設備運営基準は、国の省令と同じとは限りません。秋田県の条例、埼玉県の条例、千葉県の公表資料で確認できた、医務室・乳児室の面積・調乳室と沐浴室・非常災害の訓練・事故対応・開所時間の6項目を、国の省令と並べて整理します。

この記事が答えること:条例は、国の省令とどこが違うことがあるか

保育所の人員や設備の基準は、都道府県などの条例で定められます。

条例の内容は国の省令(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準)と同じとは限らず、秋田県・埼玉県・千葉県では、設備や運営の一部に国より厳しい定めが確認できます。

条例を定める主体が誰かは保育所の設備運営基準の条例を定める自治体で整理しています。この記事は、その条例を実際に読んだときに、どの項目で違いが出やすいかの実例です。

国の省令と条例の違い(確認できた6項目)
項目国の省令条例などの定め確認できた自治体
医務室(満2歳以上の幼児を入所させる保育所)乳児・満2歳未満の幼児を入所させる保育所についてのみ設置満2歳以上の幼児を入所させる保育所にも設置秋田県・埼玉県
乳児室の面積乳児室は1人につき1.65平方メートル以上乳児室の面積を3.3平方メートル以上とする埼玉県・千葉県
調乳室・沐浴室設備の列挙に含まれない調乳室(乳児を入所させる保育所に限る)と沐浴室を設ける埼玉県
非常災害の訓練訓練をするように努める(努力義務)定期的に避難訓練、消火訓練などを行う(義務)秋田県
事故発生時の対応省令に、事故の後の連絡・記録・賠償を定める条はない。秋田県の資料は、国の通知の指導内容を明文化した県独自基準として掲載事故の連絡・記録・損害賠償を県の条例で定める秋田県
開所時間定めなし(保育時間は1日8時間が原則)原則11時間千葉県

この記事は、条例が国の省令と異なる箇所の実例を、確認できた自治体と項目に限って並べたものです。他の自治体の条例が同じかどうか、個別の園が基準を満たすかどうかの判断は、所在地の自治体が行います。

医務室:満2歳以上の園にも置く(秋田県・埼玉県)

国の省令第32条第1号が医務室を設けると定めているのは、乳児または満2歳に満たない幼児を入所させる保育所です。

満2歳以上の幼児を入所させる保育所の列挙は、保育室または遊戯室、屋外遊戯場、調理室、便所です。

秋田県と埼玉県の条例は、満2歳以上の幼児を入所させる保育所にも医務室を設けると定めています。

秋田県の条例(令和6年秋田県条例第56号、令和6年7月12日施行)は、国の省令を県の基準として取り込んだうえで、一部を読み替えています。

県の保育所向けハンドブックは、医務室について、満2歳以上の幼児の保育にも必要な設備であることから、県独自基準として満2歳以上の幼児を入所させる保育所にも設けるとしている、と説明しています。

埼玉県の児童福祉法施行条例の第190条第2項は、満2歳以上の幼児を入所させる保育所の設備に、保育室または遊戯室、屋外遊戯場、医務室、調理室、便所を挙げています。

秋田県の条例は秋田市を除く県内が対象です(県のハンドブックの概説)。秋田市の園は、秋田市の条例を読みます。

埼玉県には、既存の園への経過措置がある

埼玉県の条例の附則第7条第2項は、一部施行日に現に存していた保育所について、増築・改築などで建物の構造を変更するまでの間、満2歳以上の医務室・調乳室・沐浴室の定めを適用せず、乳児室の面積を1.65平方メートルとしています。

既存の園が経過措置の対象かどうかは、埼玉県に確認する。

2歳以上児だけの園でも、医務室が必要になる場合がある

国の省令だけを読んで、満2歳以上の幼児だけを預かる保育所に医務室は要らないと判断すると、条例の定めと食い違うことがあります。

園の年齢構成にかかわらず、所在地の条例の設備の基準の条を読み、医務室の記載があるかを確かめる。

乳児室の面積:国は1.65平方メートル、埼玉県・千葉県は3.3平方メートル

国の省令第32条は、乳児室の面積を乳児または満2歳に満たない幼児1人につき1.65平方メートル以上、ほふく室の面積を同じく3.3平方メートル以上と定めています。

埼玉県の条例は、乳児室またはほふく室の面積を、乳児または満2歳に満たない幼児1人につき3.3平方メートル以上としています。

千葉県は、県が公表している「義務付け・枠付けの見直しによる独自基準一覧」で、乳児室の面積基準を国は1.65平方メートル、千葉県は独自に3.3平方メートルとしています。

埼玉県は「乳児室またはほふく室」を一つの基準にしており、ほふく室の3.3平方メートルは国の省令と同じです。違いが出るのは乳児室の面積です。千葉県は、この違いを県の独自基準として公表しています。

千葉県の資料は、独自基準にした理由を、0歳児の相当数が満1歳に達する前にほふくを始めるため、これらの0歳児を1歳児室(ほふく室)へ移すと定員を超えるおそれがある、3.3平方メートルにすれば年度の途中でほふくを始めた0歳児の面積を確保できる、と説明しています。

面積の基準は、定員を決める保育所の面積基準と利用定員を決める順序に直接かかわります。国の数字だけで定員を見積もると、条例の面積で定員が小さくなる場合があります。

千葉県の独自基準一覧は県の公表資料の記載なので、現行の条文との一致は千葉県の例規集で確かめてください。居室の面積は、児童福祉法第45条第2項で国の基準に「従う」とされる項目に当たります。この記事は、条例の数字が国と異なる法的な理由までは確認していません。

設備の追加:調乳室と沐浴室(埼玉県)

国の省令第32条が乳児または満2歳に満たない幼児を入所させる保育所に挙げる設備は、乳児室またはほふく室、医務室、調理室、便所です。

埼玉県の条例第190条第1項は、これに加えて、調乳室(乳児を入所させる保育所に限る)と沐浴室を設けると定めています。

調乳室は乳児を入所させる保育所に限る定めで、満1歳の幼児だけを入所させる保育所には、この条文の調乳室の定めは及びません。

運営の上乗せ:非常災害の訓練・事故対応・開所時間

設備だけでなく、運営の面にも違いがあります。

秋田県の条例は、非常災害の訓練を努力義務から義務へ読み替え、事故発生時の対応を条例で定めています。千葉県は、開所時間を原則11時間としています。

運営面の違いの内訳
自治体項目内容
秋田県非常災害(第6条)国の省令は「訓練をするように努める」。県の条例は、定期的に避難訓練、消火訓練その他必要な訓練を行わなければならない。避難と消火の訓練は少なくとも毎月1回という定めは国の省令と同じ
秋田県事故発生時の対応(第4条)保育所は、入所児童の処遇により事故が発生した場合、直ちに必要な措置を講じ、県・市町村・児童の家族等へ連絡する。事故の状況と措置を記録する。賠償すべき事故は、速やかに損害を賠償する
千葉県開所時間国の省令に定めはなく、千葉県は原則11時間とする。理由は、保護者の就労時間・通勤時間の実情を考慮できるため、と県の資料に記載

毎月の訓練の実務は保育所の非常災害対策と毎月の訓練で説明しています。

開所時間は、保育所が開いている時間の定めです。公定価格の算定で使う保育の時間(保育標準時間・保育短時間)とは別の概念として読んでください。

自園の所在地の条例で違いを確かめる手順

確認の基本は、国の省令の条文と、所在地の条例の条文を、同じ条の番号で並べて読むことです。

条例の形は自治体で異なります。秋田県のように国の省令を取り込んで独自の部分だけを条例に書く形もあれば、埼玉県のように条ごとに国の省令の基準の例によると書いたうえで、独自の部分を書き足す形もあります。

  1. 読む条例を決める

    指定都市・中核市では市の条例を読みます。判断の仕方は保育所の設備運営基準の条例を定める自治体にあります。

  2. 設備の基準の条を読む

    保育所の設備の基準の条で、医務室・調乳室・沐浴室・面積の記載を、国の省令第32条と比べます。

  3. 運営の条を読む

    非常災害、事故発生時、開所時間などの条を探し、国の省令にない定めや、「努める」が「しなければならない」に変わっていないかを見ます。

  4. 自治体の独自基準の資料を探す

    自治体が独自基準の一覧や手引き(ハンドブック)を公表している場合は、条文と合わせて読むと、独自の部分が見分けやすくなります。

よくある質問

秋田県・埼玉県・千葉県以外の自治体の条例も、国の省令と違いがありますか。

この記事で確認できたのは3県の例だけです。他の自治体が国の省令と同じか違うかは、この記事からは分かりません。所在地の条例の条文で確かめてください。

条例が国の省令より厳しい場合、国の省令だけを守っていればよいですか。

児童福祉法第45条第5項は、設置者に、条例で定めた基準を守ることを求めています。条例が国の省令より厳しい部分では、条例の基準を守る必要があります。

公定価格の試算は、条例の違いに影響を受けますか。

試算ツールは、入力された定員や職員数からモデル計算をします。条例の面積基準などで定員が変わる場合は、確認した定員を入力してください。条例の基準を満たしているかの判定はしません。

試算ツールで公定価格を見積もる前に

条例の面積基準などで確認した利用定員と年齢別の人数を入力して、公定価格をモデル計算します。条例の基準への適合は判定しません。

公定価格の試算結果を見る

試算結果は、基準への適合や給付の支給を保証するものではありません。次に知りたいこと:第32条が求める部屋と被服室の扱い、保育所の面積基準と利用定員を決める順序、保育室等を2階以上に設ける場合の要件、屋外遊戯場に代わる場所と公園、保育所の設備基準で、指定都市の条例が国の省令と異なる実例(横浜市・福岡市・大阪市)、保育所の一般原則と地域に関する設備の定め、「保育所の公定価格試算で、対象外の手続を別に確認する」、保育所の指導監査で確認される事項。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」2件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

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