解説

保育所が利用の申込みを断れない場合(運営基準第6条・第7条)

特定教育・保育施設の運営基準の第6条は、利用の申込みを正当な理由なく拒むことを禁じ、保育所には定員を超えるときの選考と、選考方法の明示、他の施設の紹介を求めています。第7条の市町村のあっせん・調整への協力と合わせて、条文の構造を整理します。

第6条の5つの項のうち、保育所に関係するのは第1・3・4・5項

特定教育・保育施設の運営基準の第6条は、利用の申込みを正当な理由なく拒むことを禁じる第1項を柱に、定員を超えるときの選考と、他の施設の紹介までを5つの項で定めています。

項ごとに対象の施設が違い、第2項は認定こども園又は幼稚園に限られています。

保育所の運営を点検するときは、どの項が自園に関係するかを先に見分けます。

第6条の構造(e-Gov で確認、確認日 2026-10-13)
項条文の内容保育所への関係
第1項教育・保育給付認定保護者から利用の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ拒んではならない関係する(特定教育・保育施設すべて)
第2項定員を超える場合に、抽選、申込みを受けた順序、設置者の理念に基づく選考その他公正な方法で選考する関係しない(認定こども園又は幼稚園に限る)
第3項定員を超える場合に、保育の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、保育を受ける必要性が高い子どもが優先的に利用できるよう選考する関係する(認定こども園又は保育所に限る)
第4項選考の方法をあらかじめ保護者に明示した上で選考を行う関係する(第3項の選考に適用)
第5項自ら適切な教育・保育を提供することが困難な場合は、適切な施設又は事業を紹介する等の措置を速やかに講じる関係する(特定教育・保育施設すべて)

第1項は「正当な理由がなければ拒めない」が、正当の中身は書かれていない

第1項は、教育・保育給付認定保護者から利用の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならないと定めています。

主語は特定教育・保育施設で、義務の書き方です。

条文には、何が「正当な理由」にあたるかの例は書かれていません。

定員がいっぱいであることが、どこまで正当な理由になるかは、第3項以降の選考と紹介の定めと合わせて読む必要があります。

個別の申込みを断れるかどうかは、この条文だけでは決まらないため、所管の市町村に確認します。

「空きがないから断る」を、条文の根拠として扱わない

第1項は、正当な理由がなければ拒んではならないという形で書かれています。定員を超える場合の扱いは第3項から第5項に別に定められており、空きがないことだけを理由に受け付けないと決める根拠は、第1項からは読み取れません。

定員を超える場合は、第3項の選考、第4項の明示、第5項の紹介の順に、自園の運営規程と運用を確かめます。

第3項と第4項は、定員を超えたときの選考。必要性の高い子どもが優先される

第3項は、利用の申込みに係る子どもの数と現に利用している子どもの総数が、利用定員の総数を超える場合に、保育の必要の程度と家族等の状況を勘案して、保育を受ける必要性が高い子どもが優先的に利用できるよう選考することを求めています。

条文は「法第二十条第四項の規定による認定に基づき」と書いており、選考の前提は、市町村が行う保育の必要性の認定です。

第4項は、この選考の方法を、あらかじめ保護者に明示した上で行うよう求めています。

保育所の運営規程には、選考の方法を含む利用の開始に関する事項を定める項目があり、掲示や説明の定めとつながります。

選考の方法は、決めるだけでなく、申込みの前に示しておく必要があります。

第2項の「抽選」「申込み順」を、保育所の選考方法にそのまま当てはめない

抽選、申込みを受けた順序、設置者の理念に基づく選考を挙げているのは第2項で、対象は認定こども園又は幼稚園です。保育所に適用されるのは、保育の必要の程度に応じて選考する第3項です。

保育所の選考の方法を決めるときは、第3項の「保育を受ける必要性が高い子どもが優先的に利用できる」という要件を軸に、市町村が定める利用調整の基準を確かめます。

運営規程の項目と、見やすい場所への掲示の定めは『保育所の運営規程に定める11項目と、重要事項の説明・同意、見やすい場所への掲示とインターネット公表』で整理しています。

第5項は、自園で提供できないときに、他の施設・事業を紹介する措置

第5項は、利用申込者に係る子どもに対して自ら適切な教育・保育を提供することが困難である場合は、適切な特定教育・保育施設又は特定地域型保育事業を紹介する等の適切な措置を、速やかに講じなければならないと定めています。

断る場合の最低限の対応を、義務として定めた規定です。

条文に書かれているのは、紹介の相手が「適切な」施設又は事業であることと、措置が「速やかに」行われることです。

紹介の方法や記録の形式は書かれていません。

どこまでを紹介の措置とするかは、市町村の運用に合わせて確認します。

第7条は、市町村のあっせん・調整・要請に「できる限り協力」する

第7条第1項は、施設の利用について市町村が行うあっせん及び要請に、できる限り協力するよう定めています。

条文は、あっせんを子ども・子育て支援法第42条第1項の規定によるものとして示しています。

保育所と認定こども園には、第2項が加わります。

第2項は、保育認定を受けた子どもの利用について、児童福祉法第24条第3項の規定により市町村が行う調整及び要請に、できる限り協力するよう求めています。

児童福祉法第24条第3項は、保育所などが不足し、又は不足するおそれがある場合に、市町村が利用の調整を行うことを定める規定です。

第7条の協力は「できる限り」の書き方です。協力の具体的な内容や方法は条文に書かれていないため、市町村の利用調整の手続と、自園の運用を突き合わせます。選考の方法を市町村の基準とどう整合させるかは、所在地の市町村に確認してください。

自園の申込みの受け方を第6条・第7条で点検する順序

点検は、断る場合の根拠、定員を超えたときの選考、紹介の措置、市町村への協力の順に進めると抜けが減ります。

  1. 申込みを断った事例を書き出す

    断った、または受け付けなかった事例と、その理由を並べます。理由が第1項の「正当な理由」にあたるかは、条文からは決まらないため、市町村に確かめる事例をここで選びます。

  2. 定員を超えたときの選考の方法を確認する

    運営規程の利用の開始に関する事項に、選考の方法が書かれているかを見ます。第3項の「保育を受ける必要性が高い子どもが優先される」という要件に沿っているかも確かめます。

  3. 選考の方法が事前に明示されているかを確認する

    第4項に基づき、申込みの前に保護者へ示している資料(掲示、案内、重要事項説明書)を確認します。

  4. 紹介の措置の実績と手順を確認する

    第5項に基づき、提供が困難なときにどの施設や事業を紹介しているか、誰がどの時点で行うかを書き出します。

  5. 市町村の利用調整とあっせん・要請への協力の状況を確認する

    第7条に基づく協力の窓口と、過去の対応を整理し、不明な点は所在地の市町村に確認します。

よくある質問

保育所は、定員がいっぱいのときは、利用の申込みを断ってよいですか。

条文からは決まりません。第1項は、正当な理由がなければ申込みを拒んではならないと定め、定員を超える場合は第3項の選考と第5項の紹介の措置を求めています。個別の取扱いは、所在地の市町村に確認してください。

保育所の選考で、抽選や申込みの順番を使ってもよいですか。

第2項は抽選や申込み順を挙げていますが、対象は認定こども園又は幼稚園です。保育所に適用される第3項は、保育を受ける必要性が高い子どもが優先的に利用できるよう選考することを求めています。選考の方法は市町村の利用調整の基準とあわせて確認してください。

第7条の「できる限り協力」は、市町村の要請を断れないという意味ですか。

条文は「できる限り協力しなければならない」と書いており、具体的な範囲は書かれていません。要請の内容ごとに、所在地の市町村に確認してください。

この記事で、自園の対応が基準に適合しているか分かりますか。

分かりません。この記事は条文の構造の説明で、適合の判定や指導監査の結果の見込みを示すものではありません。所管の市町村に確認してください。

確認したうえで、公定価格を試算する

確認した利用定員と、所在地、年齢別の園児数を入力します。申込みの受け方が基準に適合しているかは、試算結果に含まれません。

利用定員を入れて公定価格を試算する

次に知りたいこと:公定価格の定員区分は認可定員か利用定員か(2・3号は合計、認定こども園は1号と分ける)(公定価格FAQ No.76〜78)、保育所の利用率の全国平均96.6%と、公定価格の試算での在籍数の置き方、保育所の地域住民への情報提供義務と相談・助言の努力義務(児童福祉法第48条の4)。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」2件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由:

  • 保育所の相談・援助(運営基準第17条)と、小学校等との連携(第11条)

    確認を受けた保育所は、子どもの心身の状況や置かれている環境の把握に努め、子どもや保護者の相談に応じて助言その他の援助を行います。保育の終了に際しては、小学校などとの連携にも努めます。特定教育・保育施設の運営基準の第17条と第11条を、条文に沿って整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 保育所の支給認定の確認と申請の援助(運営基準第8・9条)、提供の記録

    確認を受けた保育所は、利用を求められたときに支給認定証で認定の内容を確かめ、認定を受けていない保護者の申請を援助し、提供した保育を記録します。特定教育・保育施設の運営基準の第8〜10条・第12条について、園が負う事務の中身、変更申請の30日前の目安、記録の5年保存、条例での位置づけを整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 小規模保育事業C型の食事の提供方法・管理者・土曜日閉所の調整(別紙7の3項目)

    小規模保育事業C型の公定価格にある「食事の提供方法」「管理者を配置していない場合」「土曜日に閉所する場合」の3つの調整を、留意事項通知の別紙7から整理します。適用の要件、認定の主体、調整額の対象になる単価と、A型・B型との違いを確認できます。

    関連する理由: 共通する試算入力

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