労働時間は、勤め先が違っても通算する
労働基準法第38条第1項は、労働時間は事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算すると定めています。
厚生労働省の資料は、この「事業場を異にする場合」に、事業主を異にする場合も含まれるとしています(昭和23年基発第769号)。
職員が別の園や事業所でも雇用されて働くなら、園は自園の時間だけでなく、通算した時間で法定労働時間を見ます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通算の規定 | 労働時間は、事業場を異にする場合も、労働時間に関する規定の適用については通算する(第38条第1項) |
| 法定労働時間 | 休憩時間を除き、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならない(第32条) |
| ガイドラインの考え方 | 労働者が雇用される形で副業・兼業をする場合は、原則として、自社と副業・兼業先の労働時間を通算して管理する |
この記事は、労働基準法が適用される民間の保育園などの職員が対象です。公立保育所の職員への適用関係は、所属の自治体に確認します。自分で事業を営む形や、請負・委託の形の副業が通算の対象になるかは、契約の実態によるため、この記事では判断しません。
副業の内容は、届出で把握する
ガイドラインは、副業・兼業の有無と内容を確認するため、労働者からの届出に基づく仕組みを設けておくことが望ましいとしています。
厚生労働省のモデル就業規則の解説は、副業先でも雇用されている場合に、労働時間通算の対象かを確認し、対象なら各使用者と労働者の間で合意しておく事項の例を挙げています。
届出を受けたら、通算の対象かどうかを、先に確かめます。
| 確認する事項 | 具体例 |
|---|---|
| 副業先の事業 | 事業内容、労働者が従事する業務内容 |
| 契約 | 他の使用者との労働契約の締結日、期間 |
| 所定の勤務 | 所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻 |
| 所定外の勤務 | 所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数 |
| 実労働時間の報告 | 副業先の実労働時間等の報告の手続、確認を行う頻度 |
ガイドラインは、届出がなされずに副業が行われたことを把握した場合は、まず労働者に届出を求めるよう示しています。また、副業・兼業の相談や自己申告をしたことを理由に不利益な取扱いはできないとしています。
通算には、原則の方法と簡便な管理モデルがある
ガイドラインのわかりやすい解説は、労働時間の通算の方法を、原則的な方法と簡便な方法(管理モデル)の2つに分けています。
原則的な方法は、副業を始める前に所定労働時間を通算し、副業が始まった後に所定外労働時間を通算します。
管理モデルは、副業先の実際の労働時間を把握しなくても済むように、あらかじめ上限を決める方法です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 上限の決め方 | 先に契約した使用者Aの法定外労働時間(1週40時間・1日8時間を超える時間)と、後に契約した使用者Bの労働時間を合計し、単月100時間未満、複数月平均80時間以内となるよう、それぞれの上限を決める |
| 使用者Bの扱い | 自らの事業場の労働時間全体を法定外労働時間として扱い、割増賃金を支払う |
| 導入の提案 | 使用者Aが副業先の使用者Bに導入を提案することを想定している。労働者を通じて提案してもよい |
| 上限を超えた場合 | 上限を超えて労働させたことで、時間外労働の上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)を超えるなどの違反が起きたときは、設定した上限を超えて労働させた方の使用者が、通算に関する法違反の責任を問われる |
管理モデルの上限は、それぞれの事業場の36協定の範囲内で決めます。
副業先が管理モデルに応じない場合でも、使用者と労働者が十分に話し合い、双方が納得する形で進めることが重要だとされています。
通算の順序や割増賃金の支払い義務は、先に契約したか後に契約したかで変わります。
園で確認しておく順序
就業規則、届出、契約の先後、上限の書面化の4段を、この順に確かめます。
就業規則に、副業・兼業の届出の定めがあるかを見る
副業を認めるか、どの場合に制限するか、届出で何を確認するかが、就業規則に書かれているかを確かめます。就業規則の作成と届出は保育園の就業規則の作成と届出で整理しています。
届出を受けたら、副業先で雇用されるかを確かめる
副業先との契約が、雇用か、請負・委託かを、契約書と勤務の実態で見ます。雇用される形なら、労働時間の通算の対象として、次の項目を確認します。
自園が先の契約か後の契約かを確かめ、通算の方法を選ぶ
契約の締結日を比べます。原則的な方法にするか、管理モデルにするかを、副業先の使用者と職員を交えて決めます。
上限と、時間の報告の手続を書面で残す
管理モデルなら、自園の上限の時間と、割増賃金の扱いを書面で残します。原則的な方法なら、副業先の実労働時間の報告の頻度を決めます。割増賃金の計算は保育園の割増賃金の計算で整理しています。
次に知りたいこと:労働時間の把握、36協定、有給休暇
副業の時間を通算するには、自園の労働時間を正しく記録していることが前提になります。
自園の労働時間の記録は保育園の職員の労働時間の把握、時間外労働の上限は保育園の36協定と時間外労働の上限、年次有給休暇は保育園の職員の年次有給休暇で整理しています。
よくある質問
- 副業は、園が一律に禁止できますか。
ガイドラインは、裁判例を踏まえ、労働者が労働時間以外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由であるとし、原則として副業を認める方向で検討することが適当としています。労務提供上の支障がある場合など、裁判例で制限が認められる場合を就業規則に定めることが考えられるとしています。
- 副業先の労働時間を、園が調べる必要はありますか。
副業先でも雇用されている場合は、原則として通算が必要です。ただし、管理モデルで上限を決めて守る方法なら、副業先の実際の労働時間を把握しなくても済むとされています。
- 副業が通算の対象かどうか、迷うときはどうしますか。
契約の実態で決まります。契約書の名前だけで判断せず、労働基準監督署や社会保険労務士に確認します。
- この記事で、自園の副業の扱いが適法か判定できますか。
できません。この記事は、法令とガイドラインの定めを整理したものです。個別の扱いは、労働基準監督署や社会保険労務士に確認します。
公定価格を試算する
所在地、利用定員、年齢別の園児数を入力します。職員の副業・兼業の扱いは、試算結果に含まれません。
利用定員を入れて公定価格を試算するこの記事が参照した一次資料
- 労働基準法第32条・第38条第1項、副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説(厚生労働省)、副業・兼業における労働時間の通算について(管理モデル)
法令ID 322AC0000000049/複数年度(現行条文・資料)対象外/確認日 2026-10-21