解説

在園児の保護者への子育て支援の手引き(こども家庭庁)の基本編と実践編

こども家庭庁が掲載している「保育所等における在園児の保護者への子育て支援」の手引きは、相談等を通じた個別的な対応を中心に、基本編と実践編に分かれています。概要版に書かれた基本姿勢、組織としての体制、相談支援の方法、関係機関への情報提供の考え方を、概要版の原文に沿って整理します。

手引きは、相談等を通じた個別的な対応を中心に、基本編と実践編で書かれている

こども家庭庁の保育のページには、「保育所等における子育て支援の在り方に関する研究会報告書」に関する案内があり、令和4年度の報告書の項に手引きと手引き概要版が並んでいます。

手引きの正式な題名は「保育所等における在園児の保護者への子育て支援」で、副題は「相談等を通じた個別的な対応を中心に」です。

概要版は、基本編(意義と役割、基本)と実践編(日常のコミュニケーション、気づき、相談支援の方法、園内外の体制)で構成されています。

概要版は「〜しましょう」の形で書かれており、義務の根拠は記されていません。この記事は概要版の記載だけを扱い、手引き本体の詳細は転記していません。

基本編:支援の基本姿勢と、組織としての体制

基本編は、支援に際しての基本姿勢と、組織としての体制構築を挙げています。

基本姿勢は、保護者の話をまず保育士等の価値観からではなくそのまま受けとめること、子どもの最善の利益を第一に考慮すること、職務上知りえた個人情報・プライバシー情報をもらさないことです。

組織としては、全職員で共有している園の方針に従って一貫した姿勢で対応し、保育士等が一人で抱え込まないよう職員間の情報共有・役割分担・協力関係を整えることが示されています。

管理職の役割も挙げられています。

概要版は、互いに何でも伝え合える職場環境づくり、保護者対応を含めた業務の負担の調整、問題が生じたときの速やかな状況把握と適切な対応を、管理職の重要な役割としています。

実践編:気づきから相談支援、関係機関へのつなぎまで

実践編は、5つの項目で進め方を示しています。

日常的なコミュニケーションによる基盤づくり、個別的な支援が必要な家庭への気づきと状況把握、相談支援の方法、園内の体制、園外の体制の5つです。

実践編の5つの項目と、概要版に書かれた内容の例
項目概要版に書かれた内容の例
1. 日常的なコミュニケーション園の保育方針や園児の活動の様子を、掲示物、お便り、ICTなどで積極的に発信する。悩みや不安を話してくれたら、すぐ解決方法を提案せず、まず思いを丁寧に聴く
2. 気づき、状況把握普段と異なる様子が見られたら、一人で抱え込まず園内で共有する。「いつ、誰が、どのように」を意識して記録をとる
3. 相談支援の方法保護者との面談は、必ず管理職と相談し、園としての方針を確認・共有してから行う。家庭での養育に心配な様子がうかがわれる場合は、すぐに管理職に報告する。関係機関との連携が急に必要になることに備え、あらかじめ地域の関係機関の機能や連絡先を整理しておく
4. 園内の体制小さな変化や気がかりも職員間で共有する。保護者への対応で一人の保育士等に負担が偏らないよう、園全体で支え合う
5. 園外の体制自分たちだけで支援が難しい場合は関係機関と連携する。自治体・関係機関・地域の子育て資源の機能や役割を把握しておく

関係機関への情報提供:原則は保護者への事前説明と了承

概要版は、関係機関に保護者の個人情報を伝える場面を取り上げています。

関係機関に保護者の個人情報を伝えるときは、原則として保護者に事前説明を行い、了承を得ることとされています。

一方で、虐待やネグレクトなど子どもの生命に危機が及ぶと予想される場合は、保護者の同意がなくても、すぐに通告することとされています。

手引きの記述は、園ごとの個別の事案への判断を代わりに示すものではない

概要版は、情報共有や通告の考え方を示していますが、どの事案がどの水準に当たるかは、個別の事情によって異なります。

個別の事案は、管理職と相談し、市区町村や児童相談所などの関係機関と連携して対応する。保育所等の職員による虐待の通報義務は、手引きの通告とは別の定めで、保育所等の職員による虐待の通報義務(令和7年10月施行):誰が・どこへ通報するかで扱っています。

よくある質問

手引きに沿った保護者支援は、園に義務づけられていますか。

概要版には、義務づけを定める記載は見当たりません。手引きは、相談等を通じた個別的な対応のポイントを示す国の資料です。園に求められる取扱いは、保育所保育指針や所在地の市区町村の指導を含めて確認してください。

保護者との面談は、担当の保育士が一人で行ってよいですか。

概要版は、保護者との面談は必ず管理職と相談し、園としての方針を確認・共有してから行うよう書いています。担当者が一人で行うかどうかには、概要版は直接触れていません。

保護者支援の体制は、公定価格の試算に関係しますか。

手引きは公定価格には触れていません。この試算ツールは公定価格(委託費)の算定のみを行い、保護者支援の体制は試算に含めていません。保護者との連絡に関する基準は、保育所の保育の内容(第35条)と保護者との連絡(第36条)の違いで整理しています。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事は、手引き概要版(4ページ)に書かれた範囲だけを扱い、手引き本体は照合していません。手引きのその後の改訂の有無は確認していません。個別の事案は、管理職と相談し、関係機関に相談してください。

次に知りたいこと:保育所の保育の内容(第35条)と保護者との連絡(第36条)の違い、保育所等の職員による虐待の通報義務(令和7年10月施行):誰が・どこへ通報するか、保育所の地域住民への情報提供義務と相談・助言の努力義務(児童福祉法第48条の4)

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

ほかの解説

  • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由:

  • 重大事故の事後的な検証の進め方(令和8年3月30日の通知:検証委員会・報告書の公表・指導監査)

    保育所などで死亡事故や意識不明事故が起きたあと、市町村や都道府県が行う「事後的な検証」を、令和8年3月30日の通知に沿って整理します。検証の対象と実施主体、検証委員会、集める情報9項目、報告書の公表、事故後の指導監査との関係を確認します。

    関連する理由: 共通する試算入力

  • 保育所の災害共済給付(スポーツ振興センター)の加入と請求

    保育所等で子どもがけがをしたときの災害共済給付は、設置者が保護者の同意を得て日本スポーツ振興センターと契約し、掛金を保護者と設置者で負担して成り立ちます。加入の主体、給付の対象になる負傷・疾病、請求の期限と流れを、センターの案内に沿って整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力

  • 保育所の指導監査で確認される事項と関連記事の対応表

    こども家庭庁の標準監査調書(保育所)は、運営管理・保育内容・会計の3つの大分類で監査項目を整理しています。職員配置・安全計画・会計を中心に、監査調書の項目と本サイトの関連記事を対応させ、自己点検票の公定価格確認項目(保育所35項目)も載せました。

    関連する理由: 共通する試算入力

「減算・報告・申請の期限を確認したいとき」の解説一覧へ