「経済的基礎」は、児童福祉法が定める審査基準の1つ
認可保育所を設置するには、都道府県知事(指定都市・中核市では市長)の認可が必要です(児童福祉法第35条第4項)。申請者が社会福祉法人または学校法人以外のとき(株式会社・NPO法人・個人など)は、設置基準への適合に加えて、「当該保育所を経営するために必要な経済的基礎があること」など4つの基準で審査されます(同条第5項)。社会福祉法人・学校法人は、このうち欠格事由の基準だけが審査対象です。
経済的基礎の中身は、国の通知「保育所の設置認可等について」で、物件・資金・財務の3つの要件として示されています。
認可と、施設型給付費を受け取るための「確認」は別の処分です。違いは『保育所の「認可」と「確認」の違い』で説明しています。この記事は、認可の審査のうち経済的基礎だけを扱います。
通知が示す3つの要件
国の通知は、「必要な経済的基礎がある」とは次の(ア)(イ)のいずれも満たすことをいうと定めています。申請者が保育所以外の事業も行っている場合は、さらに(ウ)も満たす必要があります。
| 区分 | 要件の内容 | 必要になる場面 |
|---|---|---|
| (ア)物件 | 保育所の経営に直接必要なすべての物件について、所有権があるか、国または地方公共団体から貸与・使用許可を受けていること(原則) | すべての申請者 |
| (イ)資金 | 保育所の年間事業費の12分の1以上に相当する資金を、普通預金・当座預金等で有していること | すべての申請者 |
| (ウ)財務 | 直近の会計年度において、保育所以外の事業を含む申請者全体の財務内容について、3年以上連続して損失を計上していないこと | 保育所以外の事業も行っている場合 |
物件と資金の2つは全員に求められ、3年連続損失なしの確認は他事業を行う申請者だけに加わります。
物件の要件は、民間の賃貸物件では原則どおりに満たせない
(ア)の原則は「所有権」か「国・地方公共団体からの貸与・使用許可」です。民間の家主から借りる物件はこの原則にあてはまりません。ただし通知は、「不動産の貸与を受けて保育所を設置する場合の要件緩和について」(平成16年雇児発第0524002号・社援発第0524008号)に定められた要件を満たしている場合は、「必要な経済的基礎がある」と取り扱って差し支えないとしています。
要件緩和の通知の条件(登記・賃借料・資金保有)は『認可保育所を民間の賃貸物件で設置できる条件』で説明しています。申請先の都道府県・指定都市・中核市が求める確認書類は、窓口で確かめてください。
賃貸物件が認められるかどうかは、要件緩和の通知の条件を満たすかで決まります。
資金と財務の要件は、数字で確認される
(イ)年間事業費の12分の1以上の資金
年間事業費のおおむね1か月分にあたる資金を、普通預金・当座預金等で持っていることが要件です。年間事業費の見込みは、保育所の運営費の試算(公定価格の収入見込みと人件費・事業費の支出見込み)が土台になります。
(ウ)3年以上連続して損失を計上していない
保育所以外の事業を行う会社は、保育所の事業だけでなく会社全体の財務内容が見られます。直近の会計年度で、3年以上連続の損失がないことが要件です。
通知は、経営者が社会的信望を有すること、実務を担当する幹部職員が社会福祉事業の知識・経験を有することなども、経済的基礎とは別の審査基準として挙げています。これらは別の基準なので、この記事では中身を扱いません。
経済的基礎の審査は、物件・資金・財務の3点を書類で示す手続きです。
自治体ごとに確かめること
| 項目 | 全国共通(国の通知) | 自治体ごとに確認 |
|---|---|---|
| 経済的基礎の3要件 | 物件・年間事業費の12分の1以上の資金・3年連続損失なし | 資金や財務を示す書類の種類・様式 |
| 審査の窓口 | 都道府県知事の認可(児童福祉法第35条第4項) | 指定都市・中核市の窓口、事前相談の時期 |
| 募集の有無 | 需給状況による不認可がありうる(同条第8項) | 整備計画の公募の有無・時期・条件 |
通知は国から都道府県・指定都市・中核市へ宛てたもので、実際の審査基準や提出書類は自治体の要綱・手引きで定められます。申請を考える時点で、所在地の自治体の保育主管課へ事前に確認してください。
全国共通の3要件を土台に、書類・時期・公募の条件は自治体ごとに確かめます。
所在地・定員・年齢別の人数から基本分単価を試算し、年間事業費の12分の1にあたる資金を考える出発点にできます。試算は目安であり、認可の可否を判断するものではありません。
年間の収入見込みを公定価格で試算する法人が保育所を設置・運営する別の形として、公私連携型保育所の指定と協定で決まることもあります。
よくある質問
- 社会福祉法人でも「経済的基礎」の審査を受けますか。
社会福祉法人・学校法人は欠格事由の基準だけが審査対象です(児童福祉法第35条第5項。欠格事由の内容は認可の欠格事由の一覧)。経済的基礎の3要件は、社会福祉法人・学校法人以外の者に対する国の通知の基準です。
- 年間事業費の12分の1の資金は、現金で用意するのですか。
通知は、普通預金・当座預金等により保有していることを要件としています。どの預金・残高証明を示せばよいかは自治体の手引きで異なるため、申請先の窓口で確認してください。
- この記事の内容で、認可を受けられるかどうかを判断できますか。
できません。この記事は国の通知の要件を整理したもので、個別の申請の可否は申請先の自治体が審査します。需給状況や整備計画によっては、要件を満たしても認可されない場合があります(児童福祉法第35条第8項)。
この記事が参照した一次資料
- 児童福祉法
昭和22年法律第164号/複数年度対象外/確認日 2026-09-23
- 保育所の設置認可等について(平成26年12月12日雇児発1212第5号による一部改正後の本文)
児発第295号(平成12年3月30日)、最終改正 雇児発1212第5号(平成26年12月12日)/複数年度(累次改正を反映する現行の通知)対象外/確認日 2026-10-12