解説

株式会社が認可保育所を設置するときの「経済的基礎」の3要件

株式会社などが認可保育所の設置を申請するとき審査される「経済的基礎」の中身を、国の通知「保育所の設置認可等について」で整理します。要件は、物件の所有・貸与、年間事業費の12分の1以上の資金、他事業を行う場合の3年連続損失なしの3つです。自治体ごとの審査基準は別に確認します。

「経済的基礎」は、児童福祉法が定める審査基準の1つ

認可保育所を設置するには、都道府県知事(指定都市・中核市では市長)の認可が必要です(児童福祉法第35条第4項)。申請者が社会福祉法人または学校法人以外のとき(株式会社・NPO法人・個人など)は、設置基準への適合に加えて、「当該保育所を経営するために必要な経済的基礎があること」など4つの基準で審査されます(同条第5項)。社会福祉法人・学校法人は、このうち欠格事由の基準だけが審査対象です。

経済的基礎の中身は、国の通知「保育所の設置認可等について」で、物件・資金・財務の3つの要件として示されています。

認可と、施設型給付費を受け取るための「確認」は別の処分です。違いは『保育所の「認可」と「確認」の違い』で説明しています。この記事は、認可の審査のうち経済的基礎だけを扱います。

通知が示す3つの要件

国の通知は、「必要な経済的基礎がある」とは次の(ア)(イ)のいずれも満たすことをいうと定めています。申請者が保育所以外の事業も行っている場合は、さらに(ウ)も満たす必要があります。

経済的基礎の3要件(通知「保育所の設置認可等について」)
区分要件の内容必要になる場面
(ア)物件保育所の経営に直接必要なすべての物件について、所有権があるか、国または地方公共団体から貸与・使用許可を受けていること(原則)すべての申請者
(イ)資金保育所の年間事業費の12分の1以上に相当する資金を、普通預金・当座預金等で有していることすべての申請者
(ウ)財務直近の会計年度において、保育所以外の事業を含む申請者全体の財務内容について、3年以上連続して損失を計上していないこと保育所以外の事業も行っている場合

物件と資金の2つは全員に求められ、3年連続損失なしの確認は他事業を行う申請者だけに加わります。

物件の要件は、民間の賃貸物件では原則どおりに満たせない

(ア)の原則は「所有権」か「国・地方公共団体からの貸与・使用許可」です。民間の家主から借りる物件はこの原則にあてはまりません。ただし通知は、「不動産の貸与を受けて保育所を設置する場合の要件緩和について」(平成16年雇児発第0524002号・社援発第0524008号)に定められた要件を満たしている場合は、「必要な経済的基礎がある」と取り扱って差し支えないとしています。

要件緩和の通知の条件(登記・賃借料・資金保有)は『認可保育所を民間の賃貸物件で設置できる条件』で説明しています。申請先の都道府県・指定都市・中核市が求める確認書類は、窓口で確かめてください。

賃貸物件が認められるかどうかは、要件緩和の通知の条件を満たすかで決まります。

資金と財務の要件は、数字で確認される

  1. (イ)年間事業費の12分の1以上の資金

    年間事業費のおおむね1か月分にあたる資金を、普通預金・当座預金等で持っていることが要件です。年間事業費の見込みは、保育所の運営費の試算(公定価格の収入見込みと人件費・事業費の支出見込み)が土台になります。

  2. (ウ)3年以上連続して損失を計上していない

    保育所以外の事業を行う会社は、保育所の事業だけでなく会社全体の財務内容が見られます。直近の会計年度で、3年以上連続の損失がないことが要件です。

通知は、経営者が社会的信望を有すること、実務を担当する幹部職員が社会福祉事業の知識・経験を有することなども、経済的基礎とは別の審査基準として挙げています。これらは別の基準なので、この記事では中身を扱いません。

経済的基礎の審査は、物件・資金・財務の3点を書類で示す手続きです。

自治体ごとに確かめること

全国共通の部分と、自治体へ確認する部分
項目全国共通(国の通知)自治体ごとに確認
経済的基礎の3要件物件・年間事業費の12分の1以上の資金・3年連続損失なし資金や財務を示す書類の種類・様式
審査の窓口都道府県知事の認可(児童福祉法第35条第4項)指定都市・中核市の窓口、事前相談の時期
募集の有無需給状況による不認可がありうる(同条第8項)整備計画の公募の有無・時期・条件

通知は国から都道府県・指定都市・中核市へ宛てたもので、実際の審査基準や提出書類は自治体の要綱・手引きで定められます。申請を考える時点で、所在地の自治体の保育主管課へ事前に確認してください。

全国共通の3要件を土台に、書類・時期・公募の条件は自治体ごとに確かめます。

所在地・定員・年齢別の人数から基本分単価を試算し、年間事業費の12分の1にあたる資金を考える出発点にできます。試算は目安であり、認可の可否を判断するものではありません。

年間の収入見込みを公定価格で試算する

法人が保育所を設置・運営する別の形として、公私連携型保育所の指定と協定で決まることもあります。

よくある質問

社会福祉法人でも「経済的基礎」の審査を受けますか。

社会福祉法人・学校法人は欠格事由の基準だけが審査対象です(児童福祉法第35条第5項。欠格事由の内容は認可の欠格事由の一覧)。経済的基礎の3要件は、社会福祉法人・学校法人以外の者に対する国の通知の基準です。

年間事業費の12分の1の資金は、現金で用意するのですか。

通知は、普通預金・当座預金等により保有していることを要件としています。どの預金・残高証明を示せばよいかは自治体の手引きで異なるため、申請先の窓口で確認してください。

この記事の内容で、認可を受けられるかどうかを判断できますか。

できません。この記事は国の通知の要件を整理したもので、個別の申請の可否は申請先の自治体が審査します。需給状況や整備計画によっては、要件を満たしても認可されない場合があります(児童福祉法第35条第8項)。

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