解説

公私連携型保育所の指定と協定で決まること(児童福祉法第56条の8)

公私連携型保育所は、市町村が法人を公私連携保育法人に指定し、協定を結んで設備の貸付などの協力を行う仕組みです。指定の要件、協定の6項目、届出での設置、勧告・指定取消しと利用児童への配慮を、児童福祉法第56条の8の条文で整理します。

公私連携型保育所とは、市町村と法人が協定を結んで運営する保育所

公私連携型保育所とは、市町村長から公私連携保育法人の指定を受けた法人が、市町村と協定を結び、市町村から設備の貸付け、譲渡その他の協力を得て、市町村との連携の下に保育と子育て支援事業を行う保育所です(児童福祉法第56条の8)。協定で定める事項は6項目あり、次の節以降で条文の順に整理します。

この記事が答えること:公私連携型保育所は、通常の認可保育所と何が違うか

公私連携型保育所は、児童福祉法第56条の8に定められた保育所です。

市町村長が法人を「公私連携保育法人」に指定し、協定を結び、市町村と連携して保育と子育て支援事業を行います。

通常の私立保育所のように都道府県知事の認可を受けるのではなく、市町村長を経由した届出で設置する点が、条文上の大きな違いです。

この記事は条文の整理です。実際に指定を受けられるか、協定にどんな内容を定めるかは、市町村が個別に決めます。運営費の受け取り方や金額は扱いません。

指定を受けられるのは、運営能力が認められる法人に限られる

第1項は、市町村長が指定できる相手を限っています。

市町村の保育の実施に対する需要の状況などに照らして適当と認めるときに、公私連携型保育所の運営を継続的かつ安定的に行える能力があると認められる法人を、その申請により指定します。

指定を受けられるのは法人だけです。個人は対象になりません。

第1項の指定の条件
条件条文の内容
申請法人からの申請によって指定する
相手法人に限る
能力公私連携型保育所の運営を継続的かつ安定的に行うことができると認められる
市町村側の事情保育の実施に対する需要の状況などに照らして適当と認める

指定の前に、市町村と6項目の協定を結ぶ

第2項は、指定をしようとするときは、あらかじめ法人と協定を締結しなければならないと定めています。

協定に入れる事項は、条文が6つ挙げています。

第2項の協定の記載事項
号内容
第1号協定の目的となる公私連携型保育所の名称と所在地
第2号公私連携型保育所における保育等に関する基本的事項
第3号市町村による必要な設備の貸付け、譲渡その他の協力に関する基本的事項
第4号協定の有効期間
第5号協定に違反した場合の措置
第6号その他、設置と運営に関し必要な事項

第5号の違反時の措置は、後の節の勧告と指定取消しに関係します。

協定の文面は市町村ごとに異なるため、案が示された段階で、この6項目がそれぞれどう書かれているかを確かめます。

設置は認可ではなく、市町村長を経由した届出で行う

第3項は、公私連携保育法人は、児童福祉法第35条第4項(国、都道府県、市町村以外の者は都道府県知事の認可を得て児童福祉施設を設置する)の規定にかかわらず、市町村長を経由して都道府県知事に届け出ることで、公私連携型保育所を設置できると定めています。

認可の審査ではなく届出なので、第35条第5項以下に置かれた認可審査の手続とは別の流れになります。

設置の手続の比較(条文の定め)
比べる点通常の私立保育所公私連携型保育所
根拠児童福祉法第35条第4項児童福祉法第56条の8第3項
手続都道府県知事の認可市町村長を経由して都道府県知事に届出
前提認可の審査基準(条例の基準、経済的基礎など)に適合市町村長による指定と協定の締結

届出で設置できても、保育所の設備や運営は条例の基準を守る必要があります。

基準を定める自治体の考え方は保育所の設備運営基準の条例を定める自治体に整理しています。通常の認可で見られる経済的基礎の考え方は株式会社が認可保育所を設置するときの「経済的基礎」を参照してください。

設備の整備が必要な場合、市町村は無償または時価より低い対価で貸し付け、譲渡する

第4項は、届出の際に、協定に基づき保育を行うために設備の整備が必要な場合、市町村長は協定に定めるところにより、その設備を無償または時価よりも低い対価で貸し付け、または譲渡するものとすると定めています。

設備を市町村から借りる、または譲り受ける前提が、条文に組み込まれています。

第5項は、この規定が地方自治法の財産の処分や貸付に関する規定(第96条、第237条〜第238条の5)の適用を妨げないとしています。

貸付を受けた設備は、協定の期間と条件に縛られる

無償や低い対価で受けた設備は、協定の期間が終わったとき、指定が取り消されたときの扱いが問題になります。第56条の8は、期間満了時や取消時の設備の扱いを明記していません。

協定案の第3号(設備の協力)と第4号(有効期間)、第5号(違反時の措置)を並べて読み、期間満了時と取消時に設備がどうなるかを市町村に確認する。

補助金で整備した施設を転用や譲渡する場合の承認手続は、別の仕組みです。補助金で整備した保育所の財産処分承認と国庫納付で整理しています。

市町村は報告や立入検査ができ、従わないときは勧告・指定取消しに進む

第7項は、市町村長が運営を適切にさせるため必要と認めるときに、公私連携保育法人や保育所の長に報告を求め、職員に質問や立入検査をさせられると定めています。

第10項は、正当な理由なく協定に従って保育を行っていないと認めるとき、協定に従うよう勧告できるとしています。

勧告に従わないときは、第11項により指定を取り消せます。

市町村長の関与の段階(第7項〜第11項)
段階条文内容
報告・検査第7項必要な報告を求め、質問や立入検査をさせる
都道府県への通知第9項第46条第3項または第4項の処分が必要と認めるときは、理由を付して都道府県知事に通知する
勧告第10項正当な理由なく協定に従わない場合に、従うよう勧告する
指定の取消し第11項勧告に従わないとき、指定を取り消すことができる

指定を取り消されたときと廃止を申請するときは、利用児童への配慮が義務になる

第12項は、指定の取消しを受けた公私連携保育法人は、その保育所について第35条第12項の廃止の承認を都道府県知事に申請しなければならないと定めています。

第13項は、廃止の承認の申請の日前1か月以内に保育を受けていた子どもで、廃止後も引き続き保育を希望する人に、必要な保育が継続して提供されるよう、他の保育所や認定こども園などとの連絡調整その他の便宜の提供を行うよう求めています。

運営をやめる場合でも、利用中の子どもへの保育の継続に向けた調整が法人の義務として残ります。

第6項は、公私連携保育法人が第35条第12項の廃止または休止の承認を申請するときは、市町村長を経由して行い、市町村長は意見を付すことができるとしています。通常の私立保育所の廃止・休止の考え方は私立の認可保育所の廃止・休止の承認にまとめています。

協定案を受け取ったときに確かめる順番

協定案は、条文の6項目に対応して書かれているかを、次の順に確かめます。

  1. 指定の申請の相手と条件を確かめる

    市町村が公私連携型保育所を募集しているか、募集要項に法人の要件や運営実績の求めがあるかを、市町村の公式サイトで確かめます。

  2. 協定の6項目を1つずつ読む

    名称と所在地、保育等の基本的事項、設備の協力、有効期間、違反時の措置、その他の事項が、条文の第1号〜第6号に対応して書かれているかを確かめます。

  3. 設備の扱いを期間満了時まで読む

    貸付や譲渡の条件と、協定の終了や指定取消しのときの設備の扱いを、市町村に確認します。

  4. 届出の手順と条例の基準を確かめる

    市町村長を経由した届出の書類と、守る条例の基準を、市町村と都道府県の窓口で確認します。

よくある質問

個人でも公私連携保育法人の指定を受けられますか。

児童福祉法第56条の8第1項は、指定の対象を「法人に限る」としています。個人は指定の対象ではありません。

公私連携型保育所は、都道府県知事の認可が要りませんか。

第3項により、公私連携保育法人は、第35条第4項の認可の規定にかかわらず、市町村長を経由した都道府県知事への届出で設置できます。ただし市町村長の指定と協定の締結が前提です。

公私連携型保育所の運営費は、通常の私立保育所と同じ公定価格の考え方で計算できますか。

第56条の8は設置・運営の枠組みを定める条文で、運営費の算定方法は定めていません。この記事では運営費の扱いを確認していないため、公定価格の対象になるかや受け取り方は、市町村に確認してください。試算ツールの結果は、入力した条件でのモデル計算です。

試算ツールで公定価格を見積もる前に

試算ツールは、入力された条件で公定価格をモデル計算します。公私連携型保育所としての指定や協定の内容は反映しません。

公定価格の試算結果を見る

試算結果は、指定の可否や給付の支給を保証するものではありません。次に知りたいこと:認可と確認の違い、私立の認可保育所の廃止・休止の承認、保育所の指導監査で確認される事項。

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

  • 児童福祉法

    昭和22年法律第164号/複数年度対象外/確認日 2026-09-23

ほかの解説

  • 公定価格とは・決まり方:保育所の計算方法と基本分単価の内訳

    保育園の公定価格の決まり方を解説。公定価格とは、特定教育・保育等に要する費用の額で、保護者の保育料とは別の施設側の総額です。基本分単価の内訳は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の4つで決まります。計算は基本分単価・加算・減算・園児数の4手順で、試算画面の入力欄も確認できます(子ども・子育て支援法第27条第3項)。

    関連する理由:

  • 保育所の認可で必要利用定員総数を超えると認可されない場合

    保育所の設置認可は、条例の基準を満たしても、区域の利用定員の総数が都道府県の計画の必要利用定員総数に達しているか超えるときは、認可しないことができます。児童福祉法第35条第8項と子ども・子育て支援法第62条から、確認する数字と順番を整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 保育所の「認可定員」と「利用定員」の違い(載る書類・変更の届出先・公定価格)

    保育所の定員は、運営規程(認可の申請事項に含まれます)と確認の申請書類に載ります。法令で定義された語は「利用定員」で、公定価格の定員区分が見るのも利用定員です。児童福祉法・子ども・子育て支援法・同施行規則・設備運営基準から、どの書類のどの数字か、変更の届出先はどこかを整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

  • 保育所が利用定員を超えて受け入れてよい場合(運営基準第22条)

    確認を受けた保育所は、市町村の確認で定めた利用定員を超えて保育を提供してはならないとされます。例外となる5つの場合(年度中の需要の増大・便宜の提供・児童福祉法の措置2つ・災害や虐待などのやむを得ない事情)を、条文の所在つきで整理します。

    関連する理由: 共通する試算入力/共通する一次資料

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