解説

処遇改善等加算の賃金総額の比較で、超過勤務手当の調整は必ず行うのか

処遇改善等加算の区分2・3で、加算当年度の賃金見込総額と基準年度の支払賃金総額を比べるときの超過勤務手当の調整を、通知の留意点とFAQ(第4版)の問27〜29で整理します。調整が要る場合、毎年度の判断、一時金を減らしてはいけない理由まで扱います。

賃金総額の比較で、超過勤務手当の調整が出てくる場面

処遇改善等加算の区分2・区分3には、賃金の水準を下げないための要件があります。加算当年度の賃金見込総額が、基準年度の支払賃金総額を下回っていないことです。

超過勤務手当の調整は、この2つの総額を比べるときに、超過勤務の増減の影響を除いてよいとする通知の留意点です。

賃金総額の比較と超過勤務手当の調整(令和8年4月8日最終改正の処遇改善等加算通知 第2の2(4)。2026-10-17原文確認)
項目通知の定め
比べる2つの総額①加算当年度の加算による改善額等の影響を除いた賃金見込総額と、②基準年度における加算額等の影響を除いた支払賃金総額
要件①が②を下回っていないこと。翌年度に①が②を下回った場合は、その全額を速やかに職員の賃金として支払う
留意点施設・事業所全体の超過勤務手当が基準年度と比べて増加(減少)している場合は、その差額を①から差し引く(加える)調整をしても差し支えない

2つの総額の算定式と、下回ったときの特別な事情に係る届出は、処遇改善等加算は翌年度の実績報告と差額精算が必要で確認できます。この記事は、超過勤務手当の調整だけを扱います。

調整は一律に行うものではなく、総額が下回るときだけで足りる

通知の文言は「調整をしても差し支えない」で、義務ではありません。

FAQ(第4版・令和7年9月2日時点版)の問27は、調整は、超過勤務の影響により①が②を下回るような場合のみ行えば足り、超過勤務手当額に差があるときに一律に行う必要はないと答えています。

調整の具体的なイメージは、問27の答えが別添1を参照するよう示しています。問28は、調整を行うほうが正確な比較になるとしたうえで、施設・事業所の事務負担を考慮し、行うかどうかを施設・事業所の判断にしていると答えています。

調整するかどうかは、年度ごとに決めてよい

超過勤務手当の差額に係る調整は、調整のメリットが年度間の超過勤務の状況で変わることから、その年度ごとに判断してよいとされています。

FAQの問29は、調整を行うかどうかを一度決めたら変えられない、という取扱いはなく、その年度によって判断して差し支えないと答えています。

超過勤務手当の調整に関するFAQの回答(第4版)
問論点FAQの回答
問27調整の取扱い超過勤務の影響により①が②を下回るような場合のみ行えば足り、差があるときに一律に行う必要はない
問28調整の要否調整するほうが正確な比較になるが、行うかどうかは施設・事業所の判断
問29年度ごとの変更その年度によって調整を行うかどうかを判断して差し支えない

超過勤務手当が増えても、一時金等を減らしてはいけない

問28の答えには、調整の前提となる注意があります。

調整は、職員個人の賃金水準について、改善を行う賃金の項目以外の賃金の項目(職員個人の業績評価等に応じて変動するものを除く)の水準を低下させないことを前提に行うもので、超過勤務手当が増えた分だけ一時金等を減らす対応は認められません。

超過勤務手当の増加分を、他の賃金の削減で相殺しない

調整で見ているのは、賃金総額を比べるときの超過勤務手当の差額です。超過勤務手当が増えたことを理由に、一時金などの他の項目を下げると、FAQが認めないとする対応にあたります。

調整をするときも、改善を行う賃金の項目以外の水準(職員個人の業績評価等に応じて変動するものを除く)を、職員個人について下げていないかを確認します。

問28の答えは、この前提の例外として、基準年度と比べて加算額が減少する場合、施設独自の改善を実施しないこととした場合、別紙様式7「特別な事情に係る届出書」を提出した場合を挙げています。また、加算額や施設独自の改善額が減少したからといって、その減少分以上に賃金水準を下げることは認められないとしています。

確認の手順

調整の前に、まず調整なしで①と②を比べ、①が②を下回るかどうかを確かめます。

  1. ①と②を調整なしで比べる

    加算による改善額等の影響を除いた賃金見込総額(①)と、基準年度の支払賃金総額(②)を比べます。①が②を下回っていなければ、問27により調整は求められません。

  2. 下回る場合は、超過勤務手当の増減を確認する

    施設・事業所全体の超過勤務手当が基準年度と比べて増えたか減ったかを確認します。通知は、増えていれば差額を①から差し引き、減っていれば加える調整を認めています。FAQの問28は、増えている場合に差し引く調整は施設・事業所にとって有利にならないという質問に、お見込みのとおりと答えています。

  3. 調整するかどうかを、その年度の判断として決める

    調整は事務負担を考慮した施設・事業所の判断です。年度ごとに変えて差し支えありません。

  4. 他の賃金項目の水準を下げていないか確認する

    職員個人について、改善を行う賃金の項目以外の水準(職員個人の業績評価等に応じて変動するものを除く)を下げていないかを確認します。

よくある質問

個別の賃金の取扱いで判断がつかないときは、認定を行う自治体へ、実際の算定の内容を示して確認します。

超過勤務手当が基準年度より増えていれば、必ず差額を差し引かなければなりませんか。

いいえ。通知は「差し支えない」と定めており、FAQの問27・問28は、調整は、超過勤務の影響により①が②を下回るような場合のみ行えば足り、行うかどうかは施設・事業所の判断と答えています。

去年は調整したのですが、今年は調整しなくてもよいですか。

問29は、調整を行うかどうかをその年度によって判断して差し支えないと答えています。

超過勤務手当が増えたので、その分を賞与から減らしてもよいですか。

認められません。問28は、超過勤務手当が増えたからといって、一時金等をその分減らすような対応は認められないと答えています。

この試算で、賃金総額の比較や調整を確認できますか。

できません。試算は認定済みの加算率や人数を入力して加算額を計算するだけで、施設の賃金総額の比較は行いません。

加算額の試算と、賃金総額の確認は別々に行う

賃金総額の比較は園の賃金台帳で確認する手続きで、試算が出すのは加算額です。

認定済みの加算率(a)(b)を入力すると、処遇改善等加算を含めた試算結果を確認できます。

公定価格の試算を開く

次に知りたいこと:賃金改善の配分方法、賃金改善の対象職員、区分1のキャリアパス要件。

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