区分2・3は「基準年度より賃金水準を下げていないか」を比べる
処遇改善等加算通知の第2の2(4)は、区分2と区分3に共通する要件として、次の2つの額を比べるよう定めています。
「①加算当年度の加算による改善額等の影響を除いた賃金見込総額」が、「②基準年度における加算額等の影響を除いた支払賃金総額」を下回っていないことです。
通知には、翌年度に下回った場合の支払いや、特別な事情に係る届出をした場合の扱いも続いています。この記事は、比べる前の調整に絞っています。
通知は、②の元になる「基準年度における職員の支払賃金の総額」を、加算当年度に在籍している全ての職員の、基準年度の支払賃金(実績)と定めています。
このとき、加算当年度に在籍していて基準年度にいなかった職員は、加算当年度と同水準の賃金が基準年度に支払われていたものと仮定して計算します。
| FAQ | 場面 | 基準年度の賃金の扱い |
|---|---|---|
| No.53 | 加算当年度にいない職員(基準年度だけ在籍) | 職員別表に記載せず、比較の対象にしない |
| No.54 | 年度の一部だけ賃金が支払われない職員(年度途中の採用・退職、育児・介護・病気の休暇など) | 別添2の調整で、加算年度と同じ条件にそろえて比べる |
| No.55 | 時給・日給で、勤務時間や日数が基準年度より減った職員 | 基準年度の時間や日数を加算当年度と同じにして計上してよい |
| No.56 | 勤務時間や日数が基準年度より増えた職員 | 基準年度の時間や日数を加算当年度に合わせて調整する |
| No.57 | 定年後に再雇用された職員 | 「基準年度にいなかった職員」と同じ取扱いにする |
基準年度にだけいた職員は職員別表に載せない(FAQ No.53)
No.53の問いは、通知が「加算当年度に在籍し、基準年度に在籍していない職員」の扱いを定めている一方で、逆に基準年度に在籍し、加算当年度に在籍していない職員はどう扱うのかというものです。
答えは次のとおりです。
加算当年度に在籍していない職員は、別紙様式4別添1と別紙様式6別添1の「賃金改善明細(職員別表)」に記載しません。
記載しないことで、①が②を下回っていないかを確認するときの対象としない取扱いです。
基準年度の賃金の総額は、通知の定義どおり「加算当年度に在籍している全ての職員」の分だけを集めます。
基準年度にいて、すでに辞めた職員は、比較の対象としません。
年度の一部だけ賃金がない職員は別添2で調整する(FAQ No.54)
No.54の問いは、年度の一部だけ賃金が支払われていない職員です。
例として、FAQは年度途中の採用や退職、育児休暇、介護休暇、病気休暇の取得などを挙げています。
FAQは、まず次の2つが年度を通じて在籍していない職員の話だと整理しています。
1つは、通知の「基準年度に在籍していない職員は、加算当年度と同水準で仮定する」取扱いです。
もう1つは、No.53の取扱いです。
そのうえで、年度の一部だけ賃金が支払われないケースは、別添2のような調整を行い、加算年度と同じ条件で基準年度の金額を算出して比較するよう求めています。
調整が必要な理由もFAQに書かれています。区分2・3は職員の賃金を改善させることが目的で、賃金水準を引き下げていないかを確かめるのが比較の趣旨です。そのため、育児休業などで支払賃金が減ったり増えたりした分は、その影響を除いて比べる必要があります。
施設・事業所の給与体系などの都合で別添2の調整が難しい場合は、この趣旨を踏まえて、適宜の方法で調整するとFAQは答えています。別添2の様式そのものは、こども家庭庁の通知とFAQの原本で確認してください。
時給・日給の職員は、時間や日数を加算当年度にそろえる(FAQ No.55・56)
時給や日給で働く職員は、時給を上げても、勤務時間や日数が基準年度より減ると、年間の支払賃金が下がることがあります。
No.55は、こうして①が②を下回り、要件を満たせなくなりそうな場合にどう扱うかを問うています。
答えは次のとおりです。
勤務時間や日数で支払賃金が変わる職員は、基準年度の賃金について、勤務時間や日数を加算年度と同じものとして計算し、計上して差し支えありません。
なお、こうした調整をしなくても①が②を下回らないなら、調整はしなくてもかまいません。
| 場面 | 加算当年度(実際の額) | 基準年度(実際の額) | 基準年度(調整後) |
|---|---|---|---|
| No.55:勤務時間が減った | 167.4万円(時給1,550円×1,080時間) | 216.0万円(時給1,500円×1,440時間) | 162.0万円(時給1,500円×1,080時間) |
| No.56:勤務時間が増えた | 223.2万円(時給1,550円×1,440時間) | 162.0万円(時給1,500円×1,080時間) | 216.0万円(時給1,500円×1,440時間) |
No.56は、勤務時間や日数が基準年度より増える場合にも、同じ調整が必要かを問うています。
答えは「お見込みのとおり」です。
勤務時間や日数の増加は賃金水準の比較に大きな影響を与えることがあるため、基準年度の勤務時間や日数を、加算当年度に合わせて調整するよう求めています。
FAQが示している考え方は、増えた場合も減った場合も、勤務時間や日数を加算当年度に合わせて比べることです。
定年後の再雇用は「基準年度にいなかった職員」と同じ扱い(FAQ No.57)
No.57の問いは、定年後に同じ施設で再雇用された職員です。
同じ職員が引き続き在籍していても、賃金は定年前より下がることが想定されます。
この場合も調整が必要か、再雇用で退職の手続きをとる場合ととらない場合で扱いが変わるかを問うています。
答えは次のとおりです。
区分2・3の要件を確かめるときは、定年後の再雇用によって賃金水準が下がる影響を除外する必要があります。
退職の手続きをとる場合でもとらない場合でも、通知の「加算当年度に在籍し、基準年度に在籍していない職員は、加算当年度と同水準の賃金が基準年度に支払われていたものと仮定する」取扱いと同様に扱います。
自園で確認すること
賃金の比較は、職員を3つの型に分けると整理しやすくなります。
年度を通じて在籍していない職員を分ける
加算当年度に在籍していない職員は職員別表に載せません。基準年度にいなかった職員は、加算当年度と同水準の賃金が基準年度に支払われていたと仮定します。
年度の一部だけ賃金がない職員は別添2で調整する
年度途中の採用や退職、休暇の取得などは、加算年度と同じ条件にそろえて基準年度の金額を出します。給与体系の都合で難しいときは、趣旨を踏まえた適宜の方法で調整します。
時給・日給の職員と再雇用の職員を洗い出す
時給・日給の職員は勤務時間や日数を加算当年度にそろえます。再雇用の職員は、退職手続きの有無にかかわらず、基準年度にいなかった職員と同じ扱いです。
この記事は、処遇改善等加算通知とFAQ(第4版)の整理です。個別の職員の取扱いが要件を満たすかどうかを判定するものではなく、調整の計算や書類の作成を代行するものでもありません。
最終的な判断は、加算の認定を行う所轄の自治体に確認してください。
よくある質問
基準年度との賃金比較について、よく聞かれる4点です。
- 基準年度にいて、加算当年度にいない職員は、比較に入れますか。
FAQ No.53は、加算当年度に在籍していない職員を「賃金改善明細(職員別表)」に記載しないとしています。記載しないことで、比較の対象にしない取扱いです。
- 年度途中に入職した職員がいる場合、基準年度の賃金はどう出しますか。
年度を通じて基準年度にいなかった職員は、加算当年度と同水準の賃金が支払われていたと仮定します。年度の一部だけ賃金がない場合は、FAQ No.54のとおり別添2のような調整で、加算年度と同じ条件にそろえて比べます。
- 時給を上げたのに勤務時間が減った職員がいると、要件を満たせませんか。
FAQ No.55は、基準年度の勤務時間や日数を加算年度と同じものとして計算してよいとしています。FAQの例では、時給1,500円で1,080時間として162.0万円を基準年度の額にできます。調整をしなくても①が②を下回らないなら、調整は不要です。
- 定年後に再雇用した職員は、賃金が下がった分を調整しますか。
FAQ No.57は、再雇用で賃金水準が下がる影響を除外する必要があるとしています。退職の手続きをとる場合ととらない場合のどちらも、基準年度にいなかった職員と同様に扱います。
次に読む記事
賃金水準の比較に関わる別の論点も、記事で整理しています。超過勤務手当の調整は超過勤務手当を調整するかどうか、休業中の保育士の扱いは産休・育休中の保育士の処遇改善等加算の扱い、区分2の確認は処遇改善等加算(区分2)の確認を読んでください。
自園の条件で試算する
この記事が参照した一次資料
- 施設型給付費等に係る処遇改善等加算について
こ成保296、7文科初第250号(令和7年4月11日。最終改正: こ成保319、8文科初第171号、令和8年4月8日)/令和8年度当初/確認日 2026-09-17
- 処遇改善等加算に関するFAQ(よくある質問)(第4版)
該当なし/令和8年度当初/確認日 2026-10-08