解説

病児保育事業の広域連携の仕組みと費用の分け方(こども家庭庁の事務連絡・山梨県・山口県・大分県の例)

こども家庭庁が令和5年12月12日に都道府県・指定都市・中核市へ送った事務連絡「『病児保育事業』における広域連携の推進について」をもとに、広域連携の型、他市区町村の児童を受け入れたときの市町村間の費用の分け方、利用料の扱いを、山梨県と山口県の事例で整理します。補助の金額は扱いません。

広域連携は、こども家庭庁が自治体と病児保育施設に周知を求めた取組

こども家庭庁成育局保育政策課は、令和5年12月12日付けの事務連絡「『病児保育事業』における広域連携の推進について」を、都道府県・指定都市・中核市の保育主管部(局)へ送っています。

事務連絡は、病児保育事業の効率的・効果的な運営と利用者のニーズへの対応のために、広域による連携が有用だと書いています。

例として、都道府県主導で実施する方法と、複数の市区町村が連携して実施する方法が挙げられています。

別添の事例集は、広域連携に取り組む自治体の取組内容を取りまとめたものです。

事務連絡は、自治体や病児保育施設で積極的に周知・活用してほしいと求めています。

病児保育事業が公定価格とは別の制度であることは、病児保育事業の補助と公定価格の関係(第59条の事業・3加算の要件・弾力運用)で整理しています。

この記事は、事務連絡と別添の事例集が書いている内容を扱います。この記事は補助の金額を扱いません。自分の市町村が広域連携に参加しているかは、所在地の市町村に確認してください。

広域連携の実施状況と、事務連絡が挙げる利点

別添は、令和2年度の子ども・子育て支援推進調査研究事業の結果を引いています。

「都道府県が主導のうえ、病児保育の広域連携を実施している」とする回答は13.3%、「他市区町村からの利用者を受け入れている」とする回答は59.4%でした。

別添は、広域的に取り組んでいる自治体も見られるが、限られた地域の実施にとどまっていると書いています。

別添が挙げる利点は、利用者側と、自治体・病児保育施設側の2つに分かれます。

利用者側は、利用できる施設が増えて便利になることです。

自治体・病児保育施設側は、施設の利用者数が安定して経営が安定すること、自治体間の地域差の解消につながることです。

事例集は、連携の型を3つに分けて載せている

事例集の見出しは、「県主導で県内全域」「県主導で地域ごとの連携」「市主導で地域ごとの連携」の3つに分かれています。

山梨県・山口県・大分県は、「県主導で県内全域」の事例です。

この3県の事例は、いずれも市区町村の間で協定を結んで、広域連携を実施しています。

県主導・県内全域の事例(別添の記載)
県県内全域での開始時期連携する市町村広域連携の施設数
山梨県平成30年4月(先行して平成29年4月に甲府圏域の6市町)県内全27市町村23施設
山口県平成31年4月1日県内全19市町30施設(令和5年4月1日時点)
大分県令和3年10月県内全18市町村病児・病後児保育施設30施設(16市町村)

費用の分け方:他市町の児童の利用分は、市町村の間で精算される

山梨県の事例では、各市区町村の間で協定を結び、精算の対象になる費用を、子ども・子育て支援交付金の病児保育事業の「基本分」「加算分」「低所得者減免分加算」としています。

精算は施設ごとに行います。

施設所在の市町村が負担する3分の1の経費を、全延べ利用児童数に占める居住市町村別の延べ利用児童数の割合で按分し、それぞれの市町村が負担します。

山口県の事例では、他市町の住民の利用があったとき、事業費全体のうち他市町の住民に要した費用を人数按分で出します。

そのうち市町の負担部分(全体の1/3)を、市町の間で精算します。

山梨県の事例は、自市町村に住む児童が利用した分、つまり利用実績に応じて市町村が経費を負担する仕組みだと書かれています。

費用の分け方と利用料の扱い(別添の記載)
県費用の分け方利用料の扱い
山梨県施設所在市町村が負担する3分の1を、居住市町村別の延べ利用児童数の割合で按分市外利用者の利用料を統一している(事例では2,500円。市内利用は未統一)
山口県他市町住民の費用を人数按分で出し、市町の負担部分(全体の1/3)を市町間で精算市町村に委ねており、統一していない。利用料や減免制度は利用施設のある市町のルール
大分県施設所在市町村が負担する運営費(交付金の補助対象額)を、施設の延べ利用者数に応じて各市町村が相互に負担。「基本分+加算分」と「低所得者減免加算分」のそれぞれで精算各施設の市町村内・外の利用料金を統一化(事例では広域化前は一律2,000円、広域化後は市内2,000円・市外4,850円)。利用料金と予約方法は市町村の意向を尊重し、利用申請書の様式は県内で統一

広域連携の有無で、利用料も受け入れの手続きも変わる

事例を見ると、利用料を統一する県と、利用施設のある市町のルールに委ねる県があります。利用申請書の様式を統一した県もあります。事例は3県の取組で、全国共通の扱いではありません。

他市区町村の児童を受け入れるときの利用料、申請書の様式、費用の精算の方法は、施設のある市町村と、連携の協定の内容を確認する。

予約システムの導入を県が支援した例

山口県の事例では、「病児保育ICT化推進事業」で、病児保育施設の予約システムの導入にかかる経費の一部を、県が独自に支援しています。

同じシステムを使うことで、広域での利用を促した、と書かれています。

山口県が事例集に挙げた広域連携の利点は、利用機会が増えて事業運営が安定したこと、適正な運営費の負担で公平性が確保されたことです。

大分県の事例も、広域化に合わせて県内全域で統一の予約システムの導入を進めています。

導入に補助を出し、令和5年10月1日現在で、病児・病後児保育施設30施設のうち21施設(7割)が導入済みです。

事例集は、空き状況の見える化や予約のシステム化で、利用者の予約の負担が軽くなったと書いています。

よくある質問

広域連携をしている地域では、他の市町村の児童を受け入れたときの費用を、施設が各市町村に請求しますか。

別添の山梨県・山口県の事例では、精算は市町村の間で行われると書かれています。施設が各市町村へ請求する方法かどうかは、事例集に書かれていません。施設のある市町村に確認してください。

利用料は、どの市町村でも同じですか。

同じではありません。山梨県は市外利用者の利用料を統一している一方、山口県は市町村に委ね、利用施設のある市町のルールに従います。

この費用の分け方は、公定価格の試算に入りますか。

入りません。この試算ツールは公定価格(施設型給付費・委託費)の算定のみを行い、病児保育事業の補助は試算に含めていません。国の補助事業の全体像は、公定価格と別建ての国の補助事業一覧(延長保育・病児保育・一時預かり・保育体制強化・保育補助者雇上強化・宿舎借り上げ)を参照してください。

自園の条件で試算する

所在地・定員・年齢別の園児数を入力すると、公定価格(委託費)を試算します。

結果には計算過程、使った告示・通知、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事は、令和5年12月12日付けの事務連絡と別添の事例集のうち、全体の説明と山梨県・山口県・大分県の事例を扱います(県主導で地域ごとの連携と、市主導の事例は扱いません)。市主導や地域ごとの事例、その後の制度の改正は照合していません。自園での扱いは、所轄の市町村に確認してください。

次に知りたいこと:病児保育事業の当日キャンセル対応加算・感染症対応加算の数え方(国のFAQ令和8年3月27日版・余剰配置と加配の判定)、病児保育事業の補助と公定価格の関係(第59条の事業・3加算の要件・弾力運用)、延長保育事業実施要綱の実施要件と職員配置(延長時間区分・平均対象児童数・基準配置、令和7年3月31日の一次改正)

ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧

  • 試算前の確認事項の一覧

    この記事の「つまずきやすい確認事項」1件を、ほかの記事の確認事項と対処とあわせて見られます。

この記事が参照した一次資料

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