労働時間の状況は、タイムカードなどの客観的な方法で把握する
労働安全衛生法第66条の8の3は、事業者が医師による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法で労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと定めています。
労働安全衛生規則第52条の7の3第1項は、その方法を「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」としています。
園は、職員の始業・終業時刻を、客観的な記録で残す仕組みを用意します。
| 項目 | 条文の内容 |
|---|---|
| 把握する義務 | 事業者は、面接指導を実施するため、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない |
| 把握の方法 | タイムカード、パソコン等の使用時間の記録などの客観的な方法その他の適切な方法 |
| 記録の保存 | 把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じる |
この記事は、労働基準法が適用される民間の保育園などの職員が対象です。公立保育所の職員への適用関係は、所属の自治体に確認します。第66条の8の3の対象から外れる職員(高度プロフェッショナル制度の対象者)は、保育園では通常想定されないため、この記事では扱いません。
面接指導の対象は、月ごとの時間外労働の算定を目安に確かめる
労働安全衛生規則第52条の2は、面接指導の対象を、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働した時間が1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる職員と定めています。
直近1か月以内に面接指導を受けた職員などで、医師が面接指導の必要がないと認めた場合は除かれます。
超えた時間の算定は、毎月1回以上、一定の期日を定めて行います。
80時間を超えた職員には、速やかに、その超えた時間の情報を通知します。
| 項目 | 条文の内容 |
|---|---|
| 対象の要件 | 週40時間を超えた時間が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる職員 |
| 算定の頻度 | 毎月1回以上、一定の期日を定めて行う |
| 職員への通知 | 80時間を超えた職員に、速やかに、超えた時間に関する情報を通知する |
面接指導を職員が受ける手続きや、医師の意見の聴き方は、この記事では扱いません。産業医の選任や衛生委員会の設置は、職員の人数によって決まるため、保育園の職員の安全衛生体制(人数別)で整理しています。
園児の午睡中の事務や着替えも、指揮命令下なら労働時間に数える
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間と定めています。
使用者の明示または黙示の指示で業務に従事する時間は、労働時間に当たります。
労働時間かどうかは、就業規則や契約の書き方ではなく、実際に指揮命令下にあったかで決まります。
| 区分 | ガイドラインの記載 |
|---|---|
| 準備行為と後始末 | 使用者の指示で、業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた服装への着替え等)や、業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内で行った時間 |
| 待機の時間 | 使用者の指示があれば即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(手待時間) |
| 研修と学習 | 参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示による業務に必要な学習の時間 |
ガイドラインは、この3つ以外でも、指揮命令下にあると評価される時間は労働時間として扱うと定めています。
保育園で、園児の午睡中に連絡帳や指導計画を書く時間、制服や園指定のエプロンに着替える時間、園児の降園後の清掃の時間が、園の指示や義務づけのもとで行われているなら、このガイドラインの考え方に当たるかを確認します。
休憩として扱っている時間でも、園児の見守りで職員が持ち場を離れられないなら、労働から離れることが保障されているかを見直します。
自己申告制を使うなら、ガイドラインの追加の措置が必要になる
ガイドラインは、始業・終業時刻の確認と記録の原則的な方法を2つ示しています。
1つは使用者が自ら現認して適正に記録する方法、もう1つはタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎に確認して記録する方法です。
これらの方法によらず自己申告制を採らざるを得ない場合は、使用者が追加の措置を講じます。
| 措置 | ガイドラインの記載 |
|---|---|
| 説明 | 対象の職員に、ガイドラインに従い講ずべき措置を十分に説明する。労働時間を管理する者にも、自己申告制の適正な運用を含め説明する |
| 実態調査 | 自己申告の時間と実際の労働時間が合っているかを、必要に応じて調査し、所要の補正をする。入退場記録やパソコンの使用時間と著しい乖離があるときは、実態調査をして補正する |
| 超過分の理由の確認 | 申告した時間を超えて園内にいた理由を報告させる場合は、報告が適正かを確認する。休憩や自主的な研修と報告されても、使用者の指揮命令下なら労働時間として扱う |
| 申告を妨げない | 申告できる時間外労働の時間数に上限を設けて、超える申告を認めないといった、適正な申告を阻害する措置を講じない |
ガイドラインは、時間外労働の削減のための社内通達や、時間外労働手当の定額払いが、適正な申告を妨げる要因になっていないかの確認も求めています。割増賃金の計算は保育園の割増賃金の計算、時間外労働の上限は保育園の36協定と時間外労働の上限で整理しています。
賃金台帳には労働時間数を記入し、記録は3年間保存する
労働基準法施行規則第54条は、賃金台帳に、労働日数、労働時間数、時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数などを、労働者ごとに記入するよう定めています(労働基準法第41条に当たる職員は、労働時間数などの記入が不要とされています)。
労働基準法第109条は、労働者名簿、賃金台帳などの重要な書類を5年間保存するよう定めていますが、附則第143条により、当分の間は3年間とされています。
ガイドラインも、出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録に関する書類を、3年間保存するよう求めています。
労働時間の記録は、賃金台帳と同じ3年間、取り出せる形で保存します。
| 書類 | 定めの内容 |
|---|---|
| 賃金台帳 | 労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数を労働者ごとに記入する(労働基準法施行規則第54条) |
| 労働者名簿・賃金台帳など | 5年間保存。附則第143条により当分の間は3年間(労働基準法第109条) |
| 労働時間の状況の記録 | 作成して3年間保存するための必要な措置を講じる(労働安全衛生規則第52条の7の3第2項) |
| 出勤簿・タイムカードなど | 3年間保存する(ガイドライン) |
園で確認しておく順序
始業・終業時刻を、どの方法で記録しているかを確かめる
タイムカード、ICカード、勤怠システムの打刻、紙の出勤簿、自己申告のどれかを職員の区分ごとに確認します。自己申告だけの職員がいないかを先に見ます。
着替え、午睡中の事務、清掃が労働時間に入っているかを見る
園の指示で行う準備と後始末、持ち場を離れられない待機、義務づけた研修が、打刻や記録に含まれているかを確かめます。含まれていなければ、記録の取り方を直します。
月ごとに時間外労働の時間を算定し、80時間の超過がないかを見る
毎月、決めた期日に算定します。80時間を超えた職員がいれば、超えた時間の情報を速やかに通知します。
賃金台帳と記録の保存場所と年数を決める
賃金台帳の労働時間数と、タイムカードなどの記録が一致するかを確かめます。保存の年数と場所を決め、労働基準監督署の調査などで取り出せるようにします。
次に知りたいこと:割増賃金、36協定、賃金の支払
労働時間を正しく記録できたら、その時間をもとに割増賃金を計算し、時間外労働の上限を確かめます。
割増賃金は保育園の割増賃金の計算、36協定は保育園の36協定と時間外労働の上限、賃金の支払と賃金台帳は保育園の職員の賃金の支払で整理しています。
よくある質問
- タイムカードがなく、職員の自己申告だけでも問題ありませんか。
ガイドラインは、現認またはタイムカード等の客観的な記録を原則とし、自己申告制は、それによらざるを得ない場合に限っています。自己申告制を使うなら、職員への説明、実態調査と補正、申告を妨げない運用などの措置が必要です。
- パートの職員も、労働時間の記録の対象ですか。
ガイドラインの対象は、労働基準法第41条に定める職員とみなし労働時間制の職員を除く全ての職員です。勤務の時間の長さにかかわらず、始業・終業時刻を記録します。
- 管理職の園長は、労働時間を記録しなくてよいですか。
記録しなくてよいとは言えません。労働安全衛生法第66条の8の3は、高度プロフェッショナル制度の対象者を除く労働者の労働時間の状況の把握を求めており、条文上、労働基準法第41条の管理監督者は除かれていません。ガイドラインも、対象外の職員について、健康の確保のために適正な労働時間管理を行う責務があるとしています。
管理監督者に当たるかどうかは肩書ではなく実態で決まるため、労働基準監督署などに確認します。
- この記事で、自園の労働時間の管理が適法か判定できますか。
できません。この記事は、法令とガイドラインの定めを整理したものです。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認します。
公定価格を試算する
所在地、利用定員、年齢別の園児数を入力します。職員の労働時間の記録や管理の扱いは、試算結果に含まれません。
利用定員を入れて公定価格を試算するこの記事が参照した一次資料
- 労働安全衛生法第66条の8・第66条の8の3、労働安全衛生規則第52条の2・第52条の7の3、労働基準法第109条・附則第143条、労働基準法施行規則第54条、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
法令ID 347AC0000000057、347M50002000032、322AC0000000049、322M40000100023/複数年度(現行条文)対象外/確認日 2026-10-21