解説

保育所の運営の一般原則(第5条):人権配慮・地域連携・自己評価・設備・採光換気

保育所の運営の一般原則について、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第5条が定める5つを、義務(「なければならない」)と努力義務(「努めなければならない」)に分けて整理します。人格の尊重、地域社会との交流と運営内容の説明、自己評価と公表、必要な設備、採光・換気・危害防止の考慮を確認できます。

第5条は5つの項でできていて、義務と努力義務が混ざっている

設備運営基準の第5条は、児童福祉施設の一般原則として5つの項を置き、第1項・第4項・第5項は義務、第2項・第3項は努力義務として書いています。

項ごとに書き方が違うので、「一般原則」とひとまとめに読むと、守るべき水準を取り違えます。

第5条の構造(e-Gov で確認、確認日 2026-10-13)
項条文の内容書き方
第1項入所している者の人権に十分配慮するとともに、一人一人の人格を尊重して運営を行う義務(行わなければならない)
第2項地域社会との交流及び連携を図り、児童の保護者及び地域社会に対し、運営の内容を適切に説明する努力義務(努めなければならない)
第3項運営の内容について、自ら評価を行い、その結果を公表する努力義務(努めなければならない)
第4項法に定めるそれぞれの施設の目的を達成するために必要な設備を設ける義務(設けなければならない)
第5項構造設備は、採光、換気等入所している者の保健衛生及びこれらの者に対する危害防止に十分な考慮を払って設ける義務(設けられなければならない)

第1項は、人権への配慮と人格の尊重を、運営全体の前提に置く

第1項は、入所している者の人権に十分配慮し、一人一人の人格を尊重して、運営を行わなければならないと定めています。

具体的な行為の基準を示す条文ではなく、運営全体にかかる原則です。

この原則を具体化する条文は、同じ基準の中に個別に置かれています。

第9条は入所した者を平等に取り扱う原則を、第9条の2は虐待等の禁止を定めています。

第1項だけで個別の行為の可否が決まるわけではないため、行為ごとに該当する条文と条例を確かめます。

個別の条文は『保育所の差別的取扱いの禁止(国籍・信条・社会的身分・費用負担の有無)』『保育所の職員がしてはならない行為(虐待等の禁止)と秘密保持・他機関への情報提供に必要な保護者の同意』で整理しています。

第2項と第3項は努力義務。地域との連携、説明、自己評価と公表を求める

第2項は、地域社会との交流と連携を図り、保護者と地域社会に運営の内容を適切に説明するよう努めることを、第3項は、運営の内容を自ら評価して結果を公表するよう努めることを求めています。

どちらも文末は「努めなければならない」で、第1項や第4項のような義務の書き方ではありません。

保育所については、同じ基準の第36条の2が、業務の質の評価を別に定めています。

第1項は自己評価と改善を義務として、第2項は外部評価と結果の公表を努力義務として書いています。

第5条第3項の努力義務だけを読んで、保育所の自己評価も努力義務だと読まないようにします。

第36条の2は『保育所の業務の質の評価(自己評価の義務と外部評価・結果の公表の努力義務)』で整理しています。

第4項と第5項は義務。必要な設備と、採光・換気・危害防止への考慮

第4項は、法に定める施設の目的を達成するために必要な設備を設けなければならないと、第5項は、構造設備は採光、換気等の保健衛生と危害防止に十分な考慮を払って設けなければならないと定めています。

第4項は設備の有無を、第5項は設備のつくり方を対象にしています。

ただし、第4項と第5項は、どの設備をどれだけ備えるかを数値で示していません。

保育所の乳児室、ほふく室、保育室などの面積は第32条に別に定められています。

第5項の「十分な考慮」にあたるかどうかは、条文に基準が書かれていないため、所管の自治体の案内で確かめます。

第32条の面積を満たしたことを、第5項の考慮を払った根拠にしない

第32条の面積の基準と、第5項の採光・換気・危害防止への考慮は、別の規定です。面積を満たしていても、第5項の考慮が足りているとは条文からは言えません。

面積の確認とは別に、採光、換気、危害を防ぐ構造について、設計や改修の時点で所管の自治体に確かめます。二階以上に保育室を置く場合の危害防止の定めは第32条第8号にあり、別の記事で整理しています。

二階以上の設備は『保育室等を2階・3階以上に設ける保育所の建物要件(耐火建築物・避難用階段・歩行距離30メートル)』で整理しています。面積の基準は『保育所の面積基準(乳児室・ほふく室・保育室)と利用定員を決める順序』で整理しています。

第5条は、国の省令では参酌すべき基準にあたると読める

設備運営基準の第1条は、条例を定めるときに従うべき基準を第1号から第3号で列挙し、それ以外を第4号の参酌すべき基準としています。

第1号から第3号の列挙には、第5条が出てきません。

そのため、第5条は第4号の参酌すべき基準にあたると読めます。

参酌すべき基準は、自治体が地域の事情を踏まえて条例の内容を定める余地のある部分です。

一般原則の条例での書き方は、国の省令と同じとは限りません。

所在地の条例と、所管の自治体の案内で確認します。

自園の運営を第5条で点検する順序

点検は、義務の項と努力義務の項を分け、個別の条文と条例に結びつける順に進めると抜けが減ります。

  1. 義務の項と努力義務の項を分ける

    第1項・第4項・第5項は義務、第2項・第3項は努力義務です。点検表の上でも分けて書きます。

  2. 各項を具体化する個別の条文を結びつける

    第1項は差別的取扱いの禁止や虐待等の禁止、第3項は業務の質の評価、第4項・第5項は面積などの設備の基準と結びつけて確かめます。

  3. 努力義務の取組の現状を記録する

    地域との交流、運営内容の説明、自己評価と公表について、現在行っていることを書き出します。何を行えば足りるかは条文に書かれていないため、所管の案内で確かめます。

  4. 条例の文言と所管の案内を並べる

    国の省令と条例の文言を並べ、一般原則の項や書き方に違いがないかを確認します。

よくある質問

保育所は、運営内容の自己評価と公表をしなければなりませんか。

第5条第3項は、自己評価を行い、結果を公表するよう努めなければならないと、努力義務の書き方をしています。保育所については第36条の2第1項が、自己評価と改善を義務として定め、第2項が、外部評価と結果の公表を努力義務としています。実際の取扱いは、所在地の条例と所管の自治体の案内で確認してください。

第5条の「地域社会との交流及び連携」は、何をすれば足りますか。

条文には、行うべき具体的な取組は書かれていません。現在行っている取組を整理して、所管の自治体に確認してください。

採光や換気が十分かどうかは、どう判断しますか。

第5項は、採光、換気等に十分な考慮を払うことを求めていますが、条文に数値の基準はありません。設計や改修の段階で、所管の自治体に確認してください。

この記事で、自園が基準に適合しているか分かりますか。

分かりません。この記事は条文の構造の説明で、適合の判定や指導監査の結果の見込みを示すものではありません。所管の自治体に確認してください。

確認したうえで、公定価格を試算する

確認した利用定員と、所在地、年齢別の園児数を入力します。第5条の一般原則を満たしているかは、試算結果に含まれません。

利用定員を入れて公定価格を試算する

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