この記事が答えること:加算の認定に虚偽があったとき、何が起きるか
加算は、職員の配置や取組の実施といった要件を満たしたうえで市町村長の認定を受けて算定します。
認定の後に、要件を満たしていないのに虚偽や不正の手段で認定を受けていたと分かった場合は、既に支給された加算の全部または一部を返還させる措置を市町村が講じることが、算定基準の留意事項通知に書かれています。
この記事は、条文と通知が定めている範囲の整理です。個別の事案が返還の対象になるか、いくらになるかの判断は、所轄の市町村が行います。加算ごとの要件は、各加算の記事で説明しています。
留意事項通知の第5は、全額または一部の返還措置を定める
留意事項通知(令和8年4月8日に最終改正された版)の「第5 虚偽等の場合の返還措置」は、2つの内容でできています。
1つ目は、市町村長が職員の配置状況や各加算の要件への適合状況を、指導監督などを通じて把握すること。2つ目は、指導監督の結果、虚偽または不正の手段で加算の認定等を受けていると認められた場合に、既に支給された加算等の全部または一部の返還措置を講じることです。
| 項目 | 通知の書き方 |
|---|---|
| 確認する主体 | 市町村長 |
| 確認の方法 | 指導監督等を通じて、職員の配置状況や各加算の要件への適合状況を把握する |
| 返還措置の条件 | 虚偽または不正の手段により加算の認定等を受けていると認められた場合 |
| 返還の対象 | 既に支給された加算等の全部または一部 |
通知の宛先は各都道府県知事などで、管内市町村への周知を求める形式です。通知が書いているのは市町村が講じる措置の方向で、返還額の計算式や返還の期限は、この通知の第5には書かれていません。
子ども・子育て支援法第12条は、返還に加えて加算金を定める
法律のレベルでは、子ども・子育て支援法第12条が「不正利得の徴収」を定めています。
第2項は、特定教育・保育施設や特定地域型保育事業者が偽りその他不正の行為により施設型給付費・地域型保育給付費の支払を受けたとき、市町村が返還させるべき額を徴収するほか、その額に100分の40を乗じた額も徴収できると定めています。
| 項 | 相手 | 徴収できるもの |
|---|---|---|
| 第1項 | 偽りその他不正の手段で子どものための教育・保育給付を受けた者(保護者など) | 給付の額に相当する金額の全部または一部 |
| 第2項 | 偽りその他不正の行為で第27条第5項・第29条第5項(施設型給付費・地域型保育給付費の支払)による支払を受けた特定教育・保育施設・特定地域型保育事業者 | 返還させるべき額に加えて、その額の100分の40に当たる額 |
| 第3項 | 第1項・第2項の徴収金 | 地方自治法第231条の3第3項に規定する法律で定める歳入として扱う |
「できる」と書かれている点に注意してください。第12条は市町村に徴収の権限を与える規定で、すべての事案で必ず加算金が徴収されると定めているわけではありません。
私立保育所の委託費に、第12条の文言はそのまま当たるか
第12条第2項が挙げているのは、第27条第5項(施設型給付費の支払)と第29条第5項(地域型保育給付費の支払)です。
私立保育所の公定価格は、これらの条文ではなく、子ども・子育て支援法附則第6条第1項に基づく委託費として支払われるため、第2項の文言がそのまま私立保育所に当たるとは、この記事では言えません。
条文の対象と自園の支払い方式を取り違えない
加算金の100分の40は、第27条第5項・第29条第5項による支払を受けた施設等を対象にした規定です。私立保育所への委託費を定める附則第6条第1項は、この場合に第27条の規定を適用しないと定めています。私立保育所の委託費に同じ徴収の規定が及ぶかどうかは、この記事では確認していません。
私立保育所の場合は、留意事項通知の第5(全額または一部の返還措置)が根拠になることを前提に、加算金を含む徴収の扱いは所轄の市町村に確認する。
委託費と施設型給付費で根拠条文が分かれる理由は私立保育所の公定価格「委託費」の法的根拠と施設型給付費との違いで説明しています。
不正を伴わない認定の誤りや実績の下振れは、別の話になる
通知の第5も法第12条も、条件は「虚偽または不正」「偽りその他不正」です。
職員数の数え間違いのような不正を伴わない誤りや、見込みより実績が下振れした場合の扱いを、通知の第5や第12条は定めていません。
「誤りだから返還はない」と決めつけない
第5と第12条が定めていないことは、返還や精算が一切ないという意味ではありません。通知の定めが見当たらない範囲は、この記事では扱いません。
認定内容の誤りに気づいた時点で、認定した市町村に事実を伝え、訂正や精算の扱いを確認する。
届出の前に自園で確認しておくこと
返還措置の対象になりうる場面を減らす手段は、要件を満たす根拠を残し、申請書類を原本と照合することです。
次の4つを、認定の申請や変更の届出の前に行います。
要件を満たす職員・取組の根拠を残す
勤務実績や研修の修了など、加算の要件を満たしていることを示す記録を、認定の申請書類と合わせて保存します。
申請書類の記載を原本と照合する
職員数、勤務時間、資格などの記載が、台帳や名簿と一致しているかを提出前に確認します。申請書類の記載事項は保育所の加算認定の申請に通知が挙げる記載事項で説明しています。
要件を満たさなくなったら市町村に伝える
年度の途中で職員が退職するなどして要件を満たさなくなりそうなときは、早めに市町村へ伝えます。配置改善加算の例は記事「配置改善加算の要件を、年度途中に満たせなくなったらどうなるか」で説明しています。
指導監督の確認事項と照らす
市町村の指導監査で見られる項目は保育所の指導監査で確認される事項で説明しています。
よくある質問
- 返還の対象になるのは、虚偽があった加算だけですか。
通知の第5は「既に支給された加算等の全部または一部」と書いています。どの範囲が対象になるかは、事案ごとに市町村が判断します。この記事から範囲を断定することはできません。
- 100分の40の加算金は、保育所でも必ず徴収されますか。
第12条第2項は徴収「できる」と定める規定で、対象は第27条第5項・第29条第5項による支払を受けた施設等です。私立保育所の委託費への当てはまりは、市町村に確認してください。
- 返還の請求は、何年前の分まで遡りますか。
通知の第5にも第12条にも、遡及の期間は書かれていません。この記事では期間を示せません。気になる場合は、所轄の市町村に確認してください。
試算ツールで加算を見積もるときの位置づけ
試算ツールは、入力された条件で加算の算定額をモデル計算します。認定や要件の確認そのものは行いません。
公定価格の試算結果を見る試算結果は、加算の認定や支給を保証するものではありません。要件を満たしているかどうかは、市町村の認定と指導監督で確認されます。次に知りたいこと:処遇改善等加算は翌年度の実績報告と差額精算が必要、保育士が配置基準を割り込んだときの行政上の扱い、加算の認定が間に合わないとき、加算分は暫定で支給されるか(公定価格FAQ No.164)。
ほかの記事の確認事項・よくある質問の一覧
この記事が参照した一次資料
- 特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について
こ成保38、5文科初第483号(令和5年5月19日。最終改正: こ成保306、8文科初第172号、令和8年4月8日)/令和8年度当初/確認日 2026-09-03
- 子ども・子育て支援法
平成24年法律第65号/複数年度対象外/確認日 2026-10-08