解説

処遇改善等加算の加算率はどこで決まるか

処遇改善等加算(区分1及び区分2)は金額の一覧表ではなく計算式です。加算率(a)(b)(c)が何を表し、どこで確認できるかがわかります。

処遇改善等加算は、金額の一覧表ではなく計算式

基本分単価は地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量から1つの金額を引けば済みますが、処遇改善等加算はそうはいきません。

告示の別表第2にも処遇改善等加算(区分1及び区分2)の欄はありますが、載っているのは金額そのものではなく、係数と加算率を掛け合わせる計算式です。

計算式の形は「係数 ×(加算率(a) + 加算率(b) + 加算率(c))」です。

係数は、地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の組み合わせごとに告示が定めています。一方、加算率のうち(a)と(b)は、告示を見ても数値が出てきません。

処遇改善等加算を受けているかどうかは、施設長未配置や土曜閉所などの減算4項目に該当するかどうかとは別の基準で判定されます。ただし土曜閉所の減算額は、処遇改善等加算を含めた合計額をもとに算定されるため、金額の計算自体は無関係ではありません。

区分1の認定には、キャリアパス要件を満たす必要がある

通知は、区分1の対象になる条件として、加算率(a)の算定方法とは別に「キャリアパス要件」を定めています。

条件は、次の2つの両方を満たすこと、または区分3の適用を受けていることです。

1つ目は、職位・職責・職務内容等に応じた勤務条件と賃金体系の両方を書面で整備し、全職員に周知していることです。

2つ目は、資質向上の目標と研修等の計画を策定し、実施・周知していることです。

令和7年4月11日に出された当初の通知には、この要件に「令和7年度に限り、キャリアパス要件に適合しない場合は、区分2の割合からキャリアパス要件分の割合を減じる」というただし書きがありました。

令和8年4月8日の最終改正後の通知では、このただし書きが無くなっています。

令和8年度は、経過措置なしでキャリアパス要件を満たすこと(または区分3の適用を受けること)が区分1の要件です。令和7年度に要件を満たさないまま申請していた施設は、令和8年度の申請前に就業規則・賃金体系・研修計画の整備と周知が済んでいるかを見直してください。

この記事はキャリアパス要件の枠組みだけを扱います。自園の就業規則・研修計画が要件を満たしているかどうかの判定は、この記事や試算では行いません。

令和7年度と令和8年度で、加算率と区分1〜3の何が変わったか

令和7年度に旧・加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが区分1〜3へ一本化されたあと、令和8年度の通知(最終改正 令和8年4月8日)を比べると、確認できた範囲の違いは、令和7年度限りのキャリアパス要件のただし書きが無くなっている点です。

加算率(a)(b)の幅は、こども家庭庁の説明資料で確認できる令和7年度の制度と、令和8年度の通知の区分表で同じです。下の表は、確認できた項目だけを並べています。

処遇改善等加算の年度差(令和7年度と令和8年度)
項目令和7年度令和8年度読むときの注意
区分1の加算率(a)平均経験年数により2%〜12%平均経験年数により2%〜12%(区分表は本記事の12区分)幅は同じです。令和7年度の区分表の各行は、原本の通知を取得できていないため、この記事では比べていません
区分2の加算率(b)平均経験年数により6%又は7%11年以上が7%、それ以外が6%幅は同じです
キャリアパス要件要件化されたが、令和7年度に限り、満たさない場合は区分2の割合からキャリアパス要件分を減じる扱い令和7年度限りのただし書きは通知に無く、区分1の要件(または区分3の適用を受けていること)として示されるただし書きが無いことからの読み取りです。令和7年4月11日の当初通知との改正経緯は照合していません
加算率(c)・係数この記事では年度間の比較をしていません告示の別表が定める割合告示の別表を年度ごとに照合していないため、差の有無は書きません

令和7年4月11日の当初の通知は、こども家庭庁の公式ページに現在は掲載されておらず、原本との照合はしていません。令和7年度の欄は、令和7年度の制度を説明するこども家庭庁の資料(確認日 2026-10-13)に基づきます。自園の加算率は、年度ごとの認定通知で確認します。

認定主体と提出先を分けて確認する

告示の注記は、加算率(a)(b)(c)をそれぞれ次のように定義しています。

(a)は基礎分における職員ひとりあたりの平均経験年数の区分に応じた割合、(b)は賃金改善分における職員ひとりあたりの平均経験年数に応じた割合です。

試算に入れる加算率(a)(b)は、職員構成から推測せず、認定結果の通知にある値を確認します。

指定都市・中核市・特定市町村が管轄する施設は、その市の長が認定します。一般市町村が管轄する施設は、市町村が取りまとめたうえで都道府県知事が認定します。

申請書類は、指定都市等が管轄する施設はその指定都市等へ、一般市町村が管轄する施設は所在地の一般市町村へ提出します。加算率(a)(b)の認定結果が手元にない場合は、まず所在地の市町村の担当課へ確認してください。他園の通知値を自園の入力値に置き換えません。

個別の確認事項は、次の順に記事を分けています。賃金改善の対象になる職員、区分3の対象職員の発令と職位、平均経験年数の書類、賃金改善の配分方法、休業中の保育士の扱いです。自園の職員や配分が対象になるかは、記事だけで断定せず、市町村へ確認してください。

加算率(a)(b)は平均経験年数の区分表で引く(12区分)

加算率(a)(b)の元になる区分表は、通知(こ成保296・7文科初第250号、最終改正は令和8年4月8日)の第4の2に載っています。

区分表は全国共通で、使う数字は施設・事業所の職員1人当たりの平均経験年数だけです。

区分1(基礎分)の加算率(a)は平均経験年数に応じて2%から12%までの12区分、区分2(賃金改善分)の(b)は11年以上が7%、それ未満が6%です。

加算率区分表(通知第4の2。区分2は別に加算率(c)を加える)
職員1人当たりの平均経験年数区分1 加算率(a)区分2 加算率(b)
11年以上12%7%
10年以上11年未満12%6%
9年以上10年未満11%6%
8年以上9年未満10%6%
7年以上8年未満9%6%
6年以上7年未満8%6%
5年以上6年未満7%6%
4年以上5年未満6%6%
3年以上4年未満5%6%
2年以上3年未満4%6%
1年以上2年未満3%6%
1年未満2%6%
  1. 対象の職員を決める

    職種に関わらず、その施設・事業所に勤務する常勤職員です。通知は、就業規則の常勤の勤務時間数に達している人(教育・保育に従事する人は月120時間以上)か、それ以外でも1日6時間以上かつ月20日以上勤務する人としています。

  2. 勤続年月数を合算する

    当該施設・事業所のほか、通知が挙げる他の施設・事業所での勤続年月数を通算して合算し、職員の総数で割ります。

  3. 端数を整えて表に当てはめる

    割って出た年数のうち、6月以上の端数は1年とし、6月未満は切り捨てます。この年数を上の表に当てはめます。

ここで引いた値は目安です。実際の加算率は市町村・都道府県の認定通知に書かれた値が正で、試算にもその値を入力します。職歴の確認資料は平均経験年数の書類で扱います。

表は通知の最終改正版(2026-10-08確認)をPDFの本文と画像の両方で照合したものです。表の注記や経過措置は見当たりませんでした。

認定通知の値を、加算率(a)(基礎分)と(b)(賃金改善分)の欄へ百分率で入れます。

加算率(a)(b)の入力欄を開く

加算率(c)と係数は、告示が定める全国共通の値

加算率(c)は、告示の注記で「賃金改善分における別表に規定する割合」と定義されています。

(a)(b)と違い、(c)は告示そのものに数値があり、地域区分・定員区分・年齢区分・保育必要量の組み合わせで1つに決まる全国共通の値です。

計算式のうち係数も告示が定める全国共通の値です。

試算ツールでは、この係数と加算率(c)を年齢区分ごとに自動で足すため、利用者が入力するのは加算率(a)(b)の2つだけです。

仮の加算率で、計算式を一度通してみる

計算式の動きを確かめるため、加算率(a)(b)には説明用の仮の値を入れて計算します。

(a)(b)の値は例として置いたもので、実際の認定値ではありません。係数と加算率(c)は、告示の別表第2にある値をそのまま表示しています。

処遇改善等加算(区分1及び区分2)を、仮に加算率(a)を10.0、(b)を6.0として計算した例
項目値
係数(告示)1,480円
加算率(a)(仮の値)10.0%(比率では0.100)
加算率(b)(仮の値)6.0%(比率では0.060)
加算率(c)(告示)2.6%
加算率の合計 (a)+(b)+(c)18.6%
係数 × 加算率の合計(児童1人・1か月)27,528円

表示条件: 地域区分 20/100、利用定員 20人、4歳以上児(2号認定)、保育標準時間。係数と加算率(c)は令和8年度の検証済み処遇改善等加算データから表示しています。加算率(a)(b)は説明用の仮の値で、実際の認定値ではありません。

通知は、加算額を「地域区分等に応じた単価に、加算率(a)と(b)の合計に100を乗じたものへ加算率(c)を足した値を掛けた額」と定めています。認定通知が(a)(b)を比率(0.100など)で示している場合は、100倍したパーセントの数値(10.0など)にして(c)へ足します。

表の係数と加算率(c)は、告示の表で括弧なしに示された値です。実際の加算額は、自園の認定通知にある加算率(a)(b)と、所在地の地域区分、利用定員、年齢区分、保育必要量に応じた係数・加算率(c)で決まります。

試算での入力方法

  1. 処遇改善等加算(区分1及び区分2)のチェックを入れる

    認定を受けていない場合はチェックを外したままにします。園の配置状況からは自動で判定できません。

  2. 加算率(a)(b)を、認定を受けて届いた通知の値で入力する

    百分率の数値をそのまま入れます。基礎分(a)と賃金改善分(b)は別々の欄です。同じ加算率(a)(b)は『配置改善加算はどの年齢の園児に付くか』の計算にも使います。

  3. 加算率(c)と係数は試算が自動で足す

    年齢区分ごとに告示の値を参照するため、入力は不要です。

加算率の「だいたいの相場」を探そうとすると詰まる

加算率(a)(b)は園ごとの職員構成(平均経験年数の区分)で個別に算定するため、園の条件を問わない「相場」はありません。平均経験年数が分かれば、上の区分表で目安は引けます。

市町村から届いている処遇改善等加算の認定通知を確認する。手元にない場合は市町村の担当課へ問い合わせる。

よくある質問

処遇改善等加算を受けていない園はどうなりますか。

チェックを外したまま試算すれば、この加算を含まない額が計算されます。

受給の有無は認定によるため、試算側では自動判定しません。

区分3も試算に含まれますか。

含まれます。区分3は、認定資料で確認した人数A・Bを別の入力欄へ入れて試算します。加算率(a)(b)を使う区分1・2とは確認する資料と入力欄が異なるため、処遇改善等加算(区分3)の確認手順で分けて確認してください。

加算率(a)(b)の通知がまだ届いていません。どうすればよいですか。

まず施設が所在する市町村(保育の運営費・給付を扱う課)へ確認してください。認定を行う主体は指定都市・中核市等ではその市、それ以外の一般市町村では都道府県ですが、申請の窓口はいずれも市町村です。届く前の見込み値で試算すると、実際の額とずれます。

以前の「処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」と、今の「区分1・2・3」はどう対応していますか。

令和7年度に、事務手続きの簡素化を目的として、旧・処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲが「処遇改善等加算」1本にまとめられ、区分1〜3に再編されました。

区分1(基礎分)は旧・加算Ⅰの基礎分(施設の平均経験年数に応じた加算率)、区分2(賃金改善分)は旧・加算Ⅰの賃金改善要件分と旧・加算Ⅲを統合したもの、区分3(質の向上分)は旧・加算Ⅱにあたります。申請様式・実績報告様式も、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ別々だったものが「処遇改善等加算」という1つの様式にまとめられています(区分3に関する一部の様式にのみ区分名が残ります)。

他の加算も、指定都市等ではその市、それ以外は都道府県が認定しますか。

いいえ、この認定主体の区分は処遇改善等加算に特有のものです。3歳児配置改善加算・休日保育加算・減価償却費加算・賃借料加算・チーム保育推進加算・療育支援加算など、確認できた他の加算・調整はいずれも「施設が所在する市町村長」が単純に認定する扱いで、都道府県知事が絡む区分はありません。

派遣職員は処遇改善等加算の対象になりますか。

派遣職員も対象にできます。ただし、派遣元の事業所を通じて賃金改善が確実に行われることを確認する必要があります。

区分1〜3の認定に必要な「職員ひとりあたりの平均経験年数」を算定する際も、派遣労働者の経験年数は算定対象に含めます。

業務委託契約(請負)で配置されている職員が対象になるかどうかは、公表されているFAQ・通知に記載が無く、確認できていません。

区分2・区分3にも、区分1のような固有の要件がありますか。

区分2には、区分1のキャリアパス要件に相当する区分2だけの固有要件はありません。区分2に適用されるのは区分3と共通の要件で、賃金改善の見込額・実績額が加算額を下回らないこと、改善額の1/2以上を基本給や毎月支払われる手当で改善すること、賃金改善の内容を職員に周知することなどを満たせば足ります。

一方、区分3にはこの共通要件に加えて固有の要件があります。副主任保育士等(概ね7年以上の経験年数と別に定める研修修了が条件)または職務分野別リーダー等(概ね3年以上の経験年数と研修修了が条件)にあたる職員を、施設・事業所に少なくとも合計1人以上配置し、実際に賃金改善を行う必要があります。改善額にも上限があり、副主任保育士等(区分3-①)は月額4万円を超えない範囲、職務分野別リーダー等(区分3-②)は原則月額5千円(副主任保育士等の改善額のうち最も低い額を上回らない範囲で5千円以上4万円未満まで設定可)です。

自園の条件で試算する

加算率(a)(b)を入力すると、加算率(c)と係数は試算が年齢区分ごとに自動で足して計算します。

結果には計算過程、使った告示、確認日、そしてこの試算に含まれていない項目を必ず表示します。

公定価格の試算を開く

この記事も試算も、告示本文を確認した範囲だけを扱います。加算率(a)(b)の認定内容そのものは、所在地の市町村へ確認してください。認定後に必要な実績報告や、実績が見込みを下回った場合の扱いは『処遇改善等加算は翌年度の実績報告と差額精算が必要』で説明しています。

次に知りたいこと:区分1のキャリアパス要件、区分2の要件と提出書類、区分3の発令要件、賃金改善の配分方法。

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